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「乙女のドリー夢 52-4」(2007/11/19 (月) 21:43:38) の最新版変更点
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刃牙の懸命な説得も、梢江には半信半疑で受け止められたまま放課後。梢江は生徒会
の会議があるからと(刃牙を疑惑の目で見つつ)残り、刃牙は一人で帰路についた。
とりあえず留美に尾行されてはいないようだが、今朝のこともあるから油断はできない。
『はぁ……どうすりゃいいんだか』
夕闇迫る街をとぼとぼ歩いて、人気のない路地に差し掛かった時。刃牙の前に、
大柄な人影が立ちはだかった。と思ったら背後からも。あっという間に刃牙は、
前を三人後ろを四人、七人の男たちに挟まれてしまった。左右は壁の狭い路地、
逃げ場はない。
といっても、実は刃牙は彼らの尾行には気付いていた。殺気があったのでわざと
人気のないところへ誘い、さっさと片付けるつもりだったのだ。
そうしたら案の定というか、姿を現した相手は思いっきり不審者丸出しであった。揃いも
揃って紅葉ほどではないがかなりの筋肉巨漢で、それを誇示するタンクトップ姿、そして
目の部分だけ穴を空けた買い物袋をすっぽり被って。何とも言い難いものがある。
刃牙の正面に立つリーダー格の男が一歩進み出て、胸を張って言った。
「範馬刃牙よ。貴様のような、何の流儀もない小僧が地下闘技場のチャンピオンとして
君臨するなど、あってはならぬこと。よって我々は、貴様に制裁を下すことにした」
「だったら、正々堂々と闘技場でやれば?」
「たわけ。貴様、自分の立場が解っているのか? チャンピオンだぞ。ならば、いつまで
経っても我らに挑戦権など得られるはずがなかろう。また、そういう事情だからこそ、
こうして人数をかき集め、準備万端整えたのだ。一対一の素手では勝負にならんからな」
と言って男たちは、釘つき角材やら金属バットやらスタンガンやらを取り出した。
「どうだ。まだ何か言いたいことはあるか?」
「いや、何もないよ。というかあんたら、ある意味男らしいというか潔いというか。
もちろん、情けないことに変わりはないんだけどさ」
「ふっ。褒めても何も出んぞ」
「……頭痛がしてきた」
「ではそのまま脳溢血にでもなってもらおうか。おい、あれを出せ」
リーダーが顎をしゃくると、その隣に居た男が、担いでいたズタ袋を地面に下ろした。
袋の口を結んでいた紐を解き、袋の底を掴んで引っ張り上げる。すると中に入っていた
ものが、勢いよく転がり出た。
「!」
それは、後ろ手に縛られて猿轡を噛まされた制服姿の三つ編み眼鏡の女の子。留美だ。
「どうだ驚いたか。我々の調査によると、この子はお前に随分とご執心らしいではないか。
お前の方がどう想っているかは知らんが」
「んぐ、んぐぐぐぐっ!」(範馬君は、あたしのことなんて何とも想ってないっ!)
喋れない口で、せめて首だけでもと強く振って、必死に訴える留美。
「ふん。どうやらこの子は、自分はお前とは何の関係もないと主張しているようだな」
「んぐぐ! ぐぐぐぐっ!」(当然でしょ! 範馬君は女の子なんかに興味ないのっ!)
留美の一生懸命さに、リーダーは満足そうな高笑いをして刃牙に向き直って言った。
「はっはっはっはっ、何と健気な! 範馬刃牙よ、この健気な少女の命が惜しかったら……」
刃牙はリーダーの目の前、鼻が触れる距離にいた。そして他の六人は地に伏していた。
え? とリーダーが声を漏らすより早く、刃牙の膝がリーダーの股間に突き上げられて、
ごくめりっっ!
「はぉうっっ!」
目ぇ剥いてリーダーは卒倒。襲撃者たちはあっけなく全滅した。
そのあっけなさっぷりに留美が目を白黒させている間に、刃牙が手早く猿轡と縄を解く。
そして留美を助け起こし、立たせた。
「怪我はない?」
「う、うん」
「ごめん、変なことに巻き込んでしまって。けど、これで解っただろ? オレに関わってると、
またこういう……」
と刃牙は言いかけたのだが。留美が混乱から帰還して状況を脳内整理すると、
刃牙の手を取って飛び上がらんばかりに喜色満面、興奮して大声を上げた。
「凄い! 凄いよ範馬君! あたしなんかが考えるよりも遥かに強いんだろうなとは
思ってたけど、まさかここまでだなんて凄すぎる! 範馬君ってきっと、ううん、絶対に
プロレスやボクシングの世界チャンピオンよりずっとず~っと強いよ!」
「う、まあ、それは……その……」
「いや、チャンピオンどころか地球上のどんな生物より強い! 地上最強だよっ!」
と……
「それを言われちゃ、黙ってられねェなァ」
地獄から響いてきたような声と共に、夕日がその男の影を伸ばしに伸ばして、
刃牙と留美の下に届かせた。
いつからいたのか、いつの間にいたのか。その男は、そこに立っていた。
「久しぶりに日本に来たんでな。まだまだ俺が喰うにゃ早過ぎるだろうから、ちょいと
顔だけ見ていくかと思ったんだが……随分と可愛い子に褒め称えられて、
いい御身分じゃねえか、ええ刃牙?」
地上最強の生物、範馬勇次郎がそこにいた。
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