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「七人の超将軍!51-1」(2007/09/14 (金) 10:16:10) の最新版変更点
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「大将軍だとぉお!」
歓喜の声を上げたのは、覇道武者魔殺駆(はどうむしゃまざく)だ。
十五年前の大戦においては当時の闇の化身・闇帝王のもと、新生闇軍団を指揮し、
天宮を壊滅寸前にまで追い込んだテロリストであり、その鎧姿から真紅の闇将軍と呼ばれた男である。
彼が今までこうして乱を起こしてきたのは、闇帝王の命令・ぷろぐらむがあったからでもあるが、
なによりも彼は闘うことを至上の喜びとして生きてきた事が大きい。
嘗ての大戦ではとうとう新生大将軍と干戈を交えることなく地下に潜伏したため、
その思いは尚更強くなっていた。
そう、闇魔神復活の触媒として用意された超呪導武者クラヤミを乗っ取り、
機動武者大鋼と対を成すほど巨大な武者へと身を変えることが出来るほどに!
その大鋼も、先ほどの闇の結界の影響からか、
登場したときと同じ形態へと変化したままじっと亀の用に魔殺駆の攻撃に耐えるばかりだ。
なるほど、確かに伝説のからくり師・火炎の駄舞留精太の逸品だ。
闇の力を得て遥かにパワーアップした魔殺駆の全力の一撃をもってしても、
倒れこそすれ、傷らしい傷を負っていない。
故に、魔殺駆の鬱屈は晴らされていない。
そこに大将軍の誕生である。
魔殺駆は、歓喜に震えた。
「超将軍も、大鋼もワシの相手には力量不足!
飛駆鳥大将軍!貴様こそワシの求めた宿敵よ!」
叫びながら飛駆鳥に踊りかかる魔殺駆だが、無論これが闇魔神の窮地を救う結果になることは理解していた。
しかし、魔殺駆の闘争本能はそういった理性を吹き飛ばしていた。
天宮最強の武者・大将軍と戦い、これを打倒す事。
只それだけが魔殺駆を塗りつぶしていた。
「魔殺駆!今は貴様と戦っている時じゃない!
分からないのか!天の島が落下しているんだぞ!」
魔殺駆の袈裟懸けの一撃を、飛駆鳥大将軍は、避け際に蹴り飛ばすというおまけ付きで、
まるで木の葉が舞うようにしてかわした。
魔殺駆は歓喜した。
なんと言う身のこなしだ、これが先ほどの小童か?
これが先ほどまで自分の無力に泣いていた小童か?
流石は大将軍!流石は最強の武者!
力強い武者と合間見えることこそ、魔殺駆の本懐なのだ。
「天の島など知ったことか!小僧!
ワシはただ最強の武者と戦うだけよ!」
若い飛駆鳥は、激怒した。
「…ッ!貴様ぁあああああああああ!
そんな事のためだけに!」
激情と共に魔殺駆を殴り飛ばす。
魔殺駆の反応速度を遥かに凌駕する、閃光そのもののような連続攻撃である。
もとより飛駆鳥は機動性に富んだ戦法を得意とする烈空頑駄無の弟子だ、
光の翼、真魔破閃光翼(しんまっはびーむうぃんぐ)をはためかせながらの連続攻撃を、
魔殺駆は成すがままに受けるしかなかった。
「そんな事のために、影舞乱夢に!赤流火穏に!」
彼は大将軍の息子として、影舞乱夢や赤流火穏の者をしっている。
炎の獅子王・阿修羅王や、後に影舞乱夢中興の祖といわれる白龍大帝とも面識がある。
十六年前、光と闇との地上最強の戦いで父と共に闘った同志であり、
国主としての責務に追われながらも、時間を作って天宮まで尋ねてくる彼らを飛駆鳥は好いていたし、
尊敬の念を抱いていた。
「天の島を落とし!民を苦しめたのか!この外道が!」
その彼らの国が焼かれ、そして今天宮もまた闇の軍勢の災禍に苛まれている。
父も、祖父も、自分も、弟も、皆天宮を愛している。
愛する天宮を弄ぶ理由が、只闘いたいからだという。
飛駆鳥の黄金の魂が怒りに燃えて煌いた。
「それこそがワシの存在意義だからだ!
戦い!殺し!争い!屠る!戦闘こそが!戦争こそが!戦場こそが!
それが!魔道に身を落としてまでも追求したこのワシの存在意義なのだよ!小僧!」
抜き打ち一閃!
飛駆鳥大将軍奥義、金剛飛燕竜巻返しが魔殺駆の巨体を飲み込んでいた。
「知ッ・るッ・かぁああああああああああ!
こぉのッ!分からず屋が!」
光の大将軍の最高の一撃は、容易く魔殺駆を屠っていた。
それが余りにもあっけなさ過ぎて、飛駆鳥は虚しくなった。
「こんなものがお前が生涯をかけて追求したものだったのか…」
呟きに答えが返ってきて、飛駆鳥ははっとした。
まだ息があったのかと、魔殺駆をみるが、その命は風前の灯火であると知る。
「そうとも…。
ああ、満足だァ…。くくく、大将軍よ、お前は…強い。
だが、もう天宮もお終いだ。
天の島は、もう、止められん…」
満足気に笑みを浮かべながら魔殺駆は死んだ。
だが、魔殺駆が今わの際に見た幻影を現実のものとするわけにはいかないのだ!
「兄上!闇魔神が!」
弟、舞威丸の声に飛駆鳥は天を仰ぎ見た。
もはや肉眼ではっきりと見える天の島に向かって、闇魔神が昇って行くではないか!
確実に天の島を落とす為、天の島と一体化するつもりなのだ!
「解った!行くぞ舞威丸!」
大輝煌鳳凰(まきしまむふぇにっくす)形態へと変型した飛駆鳥大将軍は、
再び機動武者形態となった大鋼を伴い天へと駆け上がっていく。
「はい!兄上!」
大鋼の巨体をほぼ牽引する形とはいえ、亜光速の最大速度を誇る飛駆鳥大将軍である。
先行する闇魔神に追いつくことなど容易い。
だが、闇魔神が天の島と一体化することのほうが僅かに速かったのだ!
その本質がエネルギー生命体である闇魔神だ。物質との融合など容易い。
遥かな太古、サイド3・ジオン公国が用いた悪夢の一撃を模したのは、
ヤミが持つ膨大な戦争記録の中で最もインパクトのある手段であったからだ。
ラグランジュポイントにあったそれは、闇魔神の力によって静止軌道を離れ、
魔殺駆に与えられた特殊プログラムによって十五年のときを経て、
影舞乱夢に、赤流火穏に、天宮に向かって突き進んだのだった。
「ぬぅはははははははははは!
止めようとしても!無駄だ!重力の手に掴まれたぞ!」
天の島。それは、かつてスペースコロニーと呼ばれた建造物である。
地球連邦政府樹立と共に提唱された宇宙移民計画の旗頭であり、
ジオン独立戦争、俗に一年戦争と呼ばれた人類史上未曾有の大戦以降、何度とも無く戦乱の温床となった。
宇宙空間に飛び出した人類は、戦争を忘れることが出来なかったのだ。
そして、幾星霜。
人類が母なる星を離れ、その地上に新たな種が繁栄を築き上げる頃、
巨大な墓標としてラグランジュポイントに浮かぶそれは、
ジオンの大悪行コロニー落としになぞらえて、
天宮を打ち滅ぼす攻城槌として用いられたのである。
「大将軍よ!かつてこの天の島には億という民が居た!」
千力を叩きのめした闇色の砲撃が無数に襲い掛かるが、
今の飛駆鳥には礫を払うようにして切り払う事ができた。
「これ一つだけではないぞ!無数に天の島はあったのだ!
だが!愚かにも戦を起こして消え去った!
それが本質なのだ!」
故に!という叫びと共に闇色の弾丸が飛駆鳥に向かって打ち出される。
「ワシは全てを零に戻すのよ!
光も!闇も!何も無い原始の混沌へと帰すのだ!」
しかし、しかし、飛駆鳥はその声にも、雲霞のごとき攻撃の群れにも怯まず、屈せず、突き進む。
天の島そのものと化した闇魔神を倒すには、天の島ごと消滅させるより他に無い。
「何を愚かというのだ!
生きることは戦いなんだ!
肉体を持つことすら出来ないお前なんかに!命の本質そのものを愚弄されて━━」
光の鳳凰へと変化した飛駆鳥は、光の翼をはためかせると、天の島に向かって突撃を敢行する。
直系三キロの巨大建造物だが、その巨大さゆえに機動性など皆無に等しく、
何より経年劣化した外壁に、亜光速の突撃を防ぐだけの耐久性などなかった。
「たぁまぁるぅううううかぁあああああああああ!」
荒唐無稽というのは、このような光景を言うのだろう。
ユニバーサルセンチュリーに生きていた者がこの光景を見ることが出来たら、
ただ呆然とするより他にないだろう。
スペースコロニーが唐竹割りにされる光景など、ありえるはずが無いのだから。
「あまいぞ小童!
たとえ半減したとて、この質量だ!
天宮を滅ぼすには十二分よ!」
二つに分かれた天の島のうち、ひとつは軌道を外れて飛んでいく。
だが、もう一つは未だ大気圏突入体勢を保ったままだ。
「甘いのはそっちだ!闇魔神!ここにいるのは俺一人じゃない!
舞威丸ッ!」
舞威丸はあらかじめこの事態を予見していたのだろう、神童と呼ばれるだけのことはある。
「はい!兄上!
大鋼!天宮を!天宮に生きる皆を救ってくれぇええええええええええええええ!」
大鋼の肩部装甲が展開され、光る宝玉が現れる。
太陽鋼砲。
大鋼の前身となった発掘兵器である。
その名の通り、太陽の力を弾丸と化す超エネルギー兵器であり、大鋼そのものの動力源でもある。
先ほどまでの魔殺駆との死闘によってだいぶエネルギーは減っていたが、
それでも半減した天の島を消し飛ばすくらいはある。
舞威丸の絶叫と共に打ち出されたエネルギーの奔流は、天の島の片割れを見事にけし飛ばしたのだった。
「はははははは!この闇魔神の裏を書くとはやってくれたな!小童ども!
その褒美に、貴様らの愛する天宮が滅びる様を特等席で見ているがいい!」
敵もさる者というべきか、見事してやられたというべきか、
軌道を外れたはずの片割れが再び軌道に戻ったのだ。
天の島そのものとなった闇魔神である、たとえ質量が半減したとて、闇魔神であることにかわりは無いのだ!
既に大気圏に突入し、赤熱している天の島である。
飛駆鳥の亜光速をもって突撃すれば、彼自身が燃え尽きてしまいかねない入射角になっていた。
「…舞威丸。天宮を頼んだぞ。
父上に母上に、そして七人の超将軍たちには笑って死んでいったと伝えてくれ」
しかし、若い魂はその程度のことに臆したりはしない。
「兄上!駄目です!
兄上は大将軍なんですよ!こんな所で死んではいけません!」
「黙れ!舞威丸!
大将軍だからこそ、やらねばならぬのだ!」
飛駆鳥の前に立ち塞がった大鋼を見て、飛駆鳥はそれが舞威丸の操作だと信じて疑わなかった。
しかし飛駆鳥は、それが大鋼自身の行動だと即座に理解した。
彼ら兄弟の魂の鼓動を感じ取った機動武者大鋼は、己の不甲斐無さに激怒していた。
何のためのこの巨躯か、何のための四肢か、何の為の機動武者かと…。
その怒りが、エネルギーの尽きかけた巨大武者を突き動かしていたのだ。
「大鋼?何を!」
胸部装甲板が展開され、そこから射出された舞威丸は飛駆鳥に抱きとめられる。
次に彼ら兄弟が見たのは、信じられないほどの加速で燃え盛る天の島へと突撃する大鋼の姿だった。
あっという間に天の島の先端に取り付くと、大鋼はその勢いのまま押し戻し始めたのだ。
だが、闇魔神と一体化した天の島である、大鋼の出力をもってしても押し戻すことは出来ず、
ただほんの少しばかり突入速度が緩やかに成っただけだった。
「ぬぅ、この木偶めが!」
闇魔神の悪態は、そのまま驚愕の叫び声へと変わった。
天の島を押し戻す形のまま、大鋼は太陽鋼砲発射形態へ移行したのだ。
零距離射撃。
気付いた闇魔神だったが、この状態では何も出来ない。
武器やエネルギーを打ち出しても大気との摩擦熱で消滅してしまうのだ。
赤熱する巨躯とて、無事ではすまない。
だが、若い命をすてでも天宮を護らんとする飛駆鳥と舞威丸の魂の熱が大鋼に宿っていた。
全エネルギーを開放した禁断のリミッターカットモードである。
この一瞬の為に火炎の駄舞留精太は己を巨人へと改造したに違いない、そう確信した大鋼の行動だった。
━━━━━━━━━━━━━━そして━━━━━━━━━━━━━━
太陽鋼砲の煌きが天宮、影舞乱夢を、赤流火穏を照らした。
悪無覇域山にて敵残党をあらかた片付けた超将軍たちもその煌きを見た。
━━「おお!天の島がふっとんだ!」━━「舞威丸は…、飛駆鳥はどうなったんだ!」━━
混乱状態に陥りかけた彼らだったが、天地頑駄無があるものを指差した瞬間、それが安堵の声へと変わった。
「飛駆鳥だ!舞威丸も無事だぞ!」
鳳凰形態の背に舞威丸を乗せた飛駆鳥が悪無覇域山へと戻ってきたのだ。
「ありがとう…、大鋼。
ありがとう…」
兄の背の上で、舞威丸は天に消えた大鋼に礼を言った。
悪無覇域山の地下深く古より頑駄無たちを見守り続けた大鋼。
今、大鋼は天空より天宮を見守る━━
七人の超将軍たち、飛駆鳥大将軍、そして舞威丸は再び新たな戦いに挑むだろう。
新たな時代を築き、守りぬくための戦いが━━
そして、その戦いをも大鋼は見届けるのだ。
頑強なる心を持ちて
悪を駄(の)せし輩を
無に帰せしめし者━━━
━━━━━即ち、頑駄無━━━━
七人の超将軍編、完
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