「Dioの奇妙な放浪記50-1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「Dioの奇妙な放浪記50-1」(2007/08/21 (火) 10:33:11) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
198X年 ○月×日
私は目覚めた。
こう書くとおかしいかも知れないが私の場合は別だ。
100年に及ぶ眠りから目覚めたのだ。
人間で言うならば引越しして新しい生活を始めたのと同じと思っていい。
当面の私の目的は世界征服だ。
その為には部下や手下を集めなければいけない。
そう思った矢先、私はエンヤと名乗る老女と出会った。
彼女は私の考えに共感を示し、一組の弓矢を取り出した。
何でもこの弓矢に指された者は「スタンド能力」と呼ばれる特殊能力を得る事が出来るそうだ。
当初、私は相手を疑った。
そんな御伽噺に騙されたくは無いと思っていた。
当然、私は断った。
するとエンヤ婆が突然、私の腕に弓矢を刺した。
矢の威力自体は私の腕にかすり傷をつけるのがやっとだった。
直後、コケオドシだと思った私の目に自分の体から出て来る異様なモノが映った。
これは…腕?
奇妙な光景だった。
私の腕から別の腕が出てくる。
おまけに私が心の中で「引っ込め!」と念じたら腕の中に戻った。
「お前ッ、この私に何をしたッ!?」
私は大声で叫んだ。
「DIO様、それが“スタンド”というモノですじゃ。」
エンヤ婆が物静かに答えた。
私はエンヤ婆からスタンドの説明を聞いた。
「成る程…スタンド毎に能力は違うわけか…私のスタンドの能力とは何なんだろうな?」
「念じればいいのですじゃ。技を使う、と。」
言われて私は念じた。
直後、全ての音が止んだ。
窓の外の鳥も風も全てが止まっている。
(まるで時間が止まっているようだ…否、これはまるでではなく本当に時が止まっているッ!?)
試しに私は机から本を落としてみた。
すると本は空中で静止した。
成る程。
人は皆一度は誰でも時を止める事が出来たならと思う。
それをこんな簡単な形で現実化出来るとは…。
パタン。
本が床に落ちた。
「礼を言おう。エンヤ婆。お陰でこの世界を征服する事が出来た様だ。だが、もっと人数を増やさねばな。私は旅にでるよ。仲間を探す旅にね。」
そう言うと私はエジプトを発つ準備をした。
198X年 ○月■日
私はジョナサン=ジョースターが使った波紋に興味があった。
一体どこで発祥しているのかが気がかりなのだ。
真っ先に殲滅しなくてはならない標的に定めたまでは良かった。
が。
到着のアナウンスが流れた時私は血の気が引いた。
「本機はまもなくナリタ空港に着陸します。」
何と私は中国と日本を間違えてしまったのだ。
一度落胆したが私はその内逆に日本で遊ぼうと考える様になった。
空港から出て数時間後、私は街中を歩いていた。
自分が生きていた時代には存在しなかったネオンや高層ビルを見ると私は不意に自分が年老いた気分になった。
当たり前か。
人間で言うなら私の年齢は120代だ。
当てもなくブラブラと歩いていた頃、私は人だかりを見つけた。
人垣の向こうにあるのは喧嘩。
空手家らしい男とチンピラ。
チンピラが相手を威嚇する様な言葉を吐き、殴りかかった。
空手家らしき男はそれを腕で軽くガードし相手の後頭部を蹴った。
チンピラが膝から前のメリに倒れた。
一撃必殺というヤツだなのか。
私は彼を尾けてみる事にした。
街から離れて十数分歩いた場所で彼は私に気づいた。
「そろそろかな?」
そう言うと彼は持っていた白い寝袋を地面に置いた。
「君の名は何なんだね?先程の戦闘を見るに君の格闘能力は優れているようだ。」
「何の用だ?」
「組まないか。」
単刀直入に言うと彼は身構えた。
どうやら警戒されているらしい。
「巻き込まれるのはゴメンだよ。あっちに行ってくれ。」
「面倒だな。これを見たまえ。」
私は手刀を傍にあった木に当てた。
その結果、木は中心部分から斜めに両断された。
二人の間にズンと木が倒れて彼はファイティングポーズを取った。
「俺の名はリュウ。お前は?」
「私の名はDIO。覚えておいてくれ。」
私の言葉を終わる前に彼は蹴ってきた。
前進も兼ねた右ローキック。
だが私には通じない。
吸血鬼になった時点で私の体は人間に比べて遥かに頑丈なのだ。
反撃しようとイギリスの貧民街育ちのジャブを放とうとしたら顔面にゴウと音を立てて何かが迫ってきた。
回避の為に一歩後ろへ下がるとそれが見えた。
右足だ。
この男は吸血鬼の動体視力を持ってすらも見えにくい程の速さで右ローから右ハイのコンボを繋げて見せたのだ。
「もう俺の事を追い回すな。さもないと君もあのチンピラの様に地面に這う事になるぞ。」
「君が欲しい物は何だ?」
彼はきょとんとした。会話が噛みあっていないと思ったのだろうか。
「俺がなりたいものは真の格闘家だ。そしてそれはお前からは得られない。そして人から与えられるモノでは無い!」
「ほおう…真の格闘家か。それは通り名では無いのか?」
私が言うとリュウは呆れた顔をした。
「これ以上君と話しても無駄な様だ。さようなら。組む相手なら別を当たってくれ。」
彼は私に背を向けて前方へと歩き出した。
当然、私は彼を追いかけた。
吸血鬼のダッシュをしてまるでテレポートしたかの様に彼の前に移動した。
「真の格闘家を目指す割には臆病だね。」
「なんだと。」
リュウは感情的になって私に向かってきた。
先程の技巧が毛頭無い程の力任せのパンチとキック。
その攻撃を私はある時は避け、ある時は手だけで防いだ。
「フェイント無しがこの程度だとしたら君は不意打ちでしか相手を倒せないんじゃないか?真の格闘家というのは不意打ち専門なのかな?」
私の言葉にリュウは溜息を付いた。
「今のはあえてやってみた。あの程度が俺の全てだと思われては困る。」
「全力でやっていると思っていたがね。」
リュウの次の攻撃が来た。
今度は力よりも手数を優先した攻撃。
フェイントでは無く様々な攻撃が織り交ざっていた。
それ等は全て私の顔面を狙って来る。
私はそれらを全て腕で防いだ。
まるで相手のジャブとストレートがほぼ同時にくるぐらいの数だった。
それらにまるで力が入っておらず囮である事がミエミエだった。
私は彼の本命を心待ちにしていた。
正直先程は彼の本命を小技のカウンターで切って落とす作戦を考えていた。
が、彼の攻撃を見るに考え直した。
技巧を持つ相手に小技で返す事は失礼では無いのか。
こちらも本命で返した方がいいのでは無いのか。
私は決断した。スタンドを一切使わずに相手を倒す。
それが私の勝利条件。
破ればその場で私は敗北となる。
突然、リュウのコンボが止んだ。
対峙している者同士にしかわからない程の僅かな時間。私が彼の本命に供えるのに充分な時間だった。
彼の拳が私の顎に向かってくるのが見え、私がその手首を握り潰そうとした次の瞬間、僅かな匂いが私の鼻を付いた。
それは100年程前に嗅いだ匂い。
私の脳と意識に刻み付けられた匂い、ジョナサンが発した波紋、そして自分の敗北の匂い。
その時、初めて私は彼を、リュウを“敵”と見なした。
生きる為に私は即座に判断した。
----時よとまれ
私は全力で念じた。そして全ては静止した。
安堵と共に私は失望していた。
スタンドを使わないというルールを自分で破ってしまった事に。そしてスタンドを使わなければ波紋使いから逃げられない自分に。
それにしても意外だった。
波紋の使い手がこんな所にもいるとは。ましてやそれが格闘家だとは。
殺しておくべきか?否、騒がれると不味い。
不本意だが今は目立つのを避けなくてはならない。
去り際に私は彼を見た。
エネルギーを手に集めている。青白い光が手から漏れている。
さようなら。リュウ。いつの日か会おう。
そう心の中で呟くと私はその場から走り去った。
_
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: