「ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意思49-3」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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4月22日 ???
円形のテーブルを挟んだ向かいに座るのは、ぎょろりとした目と、尖った耳、
そしてそれらのインパクトを無視させるほど、特徴的な長い鼻を持った老人。
その横に、プラチナブロンドの髪を持つ女…エレベーターガールのようなポーズを取っている。
承太郎は、その女の、猫のような金色の瞳が、満月の様な妖しい輝きを持っているように感じた。
『ようこそ、我がベルベットルームへ』
目の前の奇妙な老人が言った事から察するに、ここは『ベルベットルーム』と言うのだろう。
だが、『ルーム』と言う印象は受けない。レトロなエレベーターのような造りだ。
承太郎は考える。
(俺は辰巳グランドホテル、21階の2105号室のベッドで寝ていた。
寝ている間に連れ去られるようなヘマはしねぇ…。
こいつは、夢か、でなければ…)
承太郎が考えを巡らせていると、老人が吊り上げた口の端をさらに吊り上げて話し始めた。
「いいえ、これはスタンド能力では、ございません。貴方様の夢の中でございます。
申し遅れました、私の名はイゴール。このベルベットルームの主人でございます。
こちらは助手のエリザベス」
承太郎の思考を読んだように話し出した、イゴールと名乗る老人は、枯れ枝のような手を
エリザベスと呼んだ女に向けた。
「エリザベスでございます」
エリザベスの口調は、全く丸で、エレベーターガールそのものだった。
『で、ございます』の『で』と『ざ』にアクセントを置くやつだ。
「人の夢に勝手に入り込んでくるとは、マナーがなってねぇな。目的は何だ」
現状の確認が出来ず、完璧に相手のペースで状況が進んでいるにも拘らず、
承太郎の態度は崩れない、呼吸も脈拍にも乱れが出ない。
相手のペースに飲まれても、自分を乱さない限り、チャンスがある事を知っているのだ。
「それは申し訳ございません。貴方様にお会いするにはこれしか方法がございませんので。
この様な無礼を、働かせていただきました。私共の目的、それは貴方様にお会いする事でございます」
その言葉に、承太郎は、『ふん』、と不敵に笑う。
「俺に会う事?なら、もう果たされたな。そして残念ながら、俺はこれ以上ここに用はねぇ。
早いとこ、帰してくれると有難いんだが・・・?」
承太郎の言葉に、イゴールが少し慌てた調子で引き止める。
「いやいや、もう少々お待ちください。貴方様に危害を加えるような事はございません。
ですので、もうしばらく、話を聞いていただきたい」
正直に言って、この言葉のどこを信用すればいいのかさっぱりだが、承太郎は、一応従う事にした。
「手早く済ませろ。明日から教壇に立たなくちゃならねぇんでな。
それともう一つ、椅子が小せぇ」
普通の、そう、高校生くらいの平均的な体格なら、今、承太郎の座る椅子でピッタリだっただろう。
しかし、人並み以上に恵まれた体格を持つ承太郎には少々どころか、かなり小さかった。
「そ、それは申し訳ございません。ですが、代わりがありませんもので…」
イゴールはしどろもどろになりながら、弁解する。
隣のエリザベスが、少し吹き出していたのは…たぶん気のせいだろう。
それっきり、承太郎はだんまりを決め込んだ。
だが、口ほどに物を言う目が、『さっさと話せ、でなければ帰らせろ』というプレッシャーを放っている。
イゴールは胸元のポケットからハンカチを取り出し、汗をぬぐってから話し出す。
「今から二十年前、貴方様はタロットに導かれ、旅をなされましたな。
そこで暗黒に包まれ、終わりを迎えるはずの『世界』に、貴方様の『星』は一筋の光を射されました。
そして、貴方様は流星の如く『暗黒の世界』を切り裂き、再び『光ある世界』をもたらされました。
貴方様のご活躍がなければ、この世界はとうに終わりを迎えていたでしょう」
「…あれは俺だけの結果ではねぇ。命がけで仲間が残した遺産、そのお陰で得た結果だ…」
承太郎は軽く目を閉じる。
もう、あの時の旅の仲間は、祖父であるジョセフしか残っていない。
アブドゥル、イギー、花京院、そしてポルナレフ・・・。皆逝ってしまった。
ベルベットルームを、しばし静寂が支配する。
「・・・少々前置きが長くなりすぎましたな。
今回お招きした、本当の理由、それは世界を救って頂いた事に対するささやかなお礼をしたかったので、御座います。
貴方様には、これをお渡ししたい」
イゴールが両手を掲げると、何もない空間から、一枚のカードが落ちてくる。
それは宙を舞い、承太郎の手に落ちた。
「これは…?」
承太郎はカードを持ち上げ、裏と表を見てみた。
裏に当たる部分には模様が入っているが、表には何も描かれていない。
347 名前:ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 [sage] 投稿日:2007/05/27(日) 21:32:46 ID:THonmnxi0
「貴方様は旅の中で決して切れる事のない、絆をお結びになられました。
そのカードは、あるべき時にあるべき場所で貴方様に『絆の力』を貸してくれるで御座いましょう。
それでは、また、お会いいたしましょう…」
イゴールが、言い終わると、ベルベットルームが眩い光に包まれる。
「待てッ!」
承太郎は椅子から立ち上がり―――、手を伸ばした先は天井。
周りを見てみれば、何の変わりもない、辰巳グランドホテルの2105室である。
いや、窓から朝日が差していることが、唯一、就寝前と違うところだ。
承太郎は上半身を起こし、呟く。
「妙な夢を見たな…。奇妙なのは日常だけで充分――ん?」
視線の先に、何かある。
それは一枚のカード、何も描かれていないブランクカードだった。
「夢じゃねぇって事か。やれやれだぜ、全く…」
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