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「ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意思49-2」(2007/05/24 (木) 14:51:30) の最新版変更点
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4月21日
今日の影時間は終わった。
タルタロスはビデオを巻き戻すように、その姿を月光館学園へと戻していく。
「ほぇー。ホントに元に戻っちまった。
タルタロスになる時もスゴかったけど、戻るときも同じくらいスゲーなぁ」
「よく考えるとさ、私たちって、寮とか以外は、殆どタルタロスのある場所で生活してんだよね…。
なんか複雑だな…」
「そう言われればそうなるな」
元に戻った月光館学園を見て、順平とゆかりがそれぞれ呟き、
ゆかりの呟きを聞いた真田が、今気付いたのか、同じように呟いた。
校門の前まで来た所で、美鶴は改めて、承太郎に頭を下げる。
「先ほどは危ない所をありがとうございました。
お聞きしたいのですが、先生の仰る『スタンド』とは…?」
『スタンド』という単語に、全員の視線が承太郎に集まる。
当然だろう。
彼らの認識では『シャドウはペルソナでしか倒せない』のだ。
「…今は、もう時間が遅い。明日、お前達の寮へ行く。
少々長くなるんでな、そこで説明する」
承太郎がそう返すと、美鶴は無言で頷いた。
『S.E.E.S.』のメンバーが帰りの道を歩き出したところで、承太郎からの声がかかる。
「ああ、あとだな。幾月理事長には『ペルソナ使いの教師が見つかった』と、言っておいてくれ」
その言葉に順平は首を傾げる。
「えぇ?なんでっスか?先生、ペルソナ使いじゃないんっしょ?」
承太郎は諭す様に順平に言う。
「順平…だったな?確かに、俺はペルソナ使いではない。
だが、先程の通り、影時間に対応して、敵も倒せる。
ペルソナ使いと名乗ってもそう困る事はない。
それに、スタンドってのは説明も含め、いろいろと面倒だ。
正直言って、あまり大勢に知られたくはないんでな」
それだけ言って、承太郎は、さっさと校門から離れて行ってしまった。
美鶴は、しばし考え、ゆっくり口を開く。
「仕方ない。助けてもらった恩もある。
ここは空条先生の頼みを聞いておこう。みんな、いいな?」
美鶴の言葉に、4人が同意するように頷いた。
それから時は過ぎ、今の時間は4月21日、午前10時。
高等部の全生徒が、体育館に集まっている。
理由は新たな生徒会役員の決定の報告と、新生徒会長の挨拶、
そして、遅れてきた生物教師こと、空条承太郎の紹介のためだ。
「はー。勉強しなくていいのはいいんだけどさぁ。
こう、椅子に座りッパってのも、それなりにシンドイよな?」
順平は、隣に座る阿虎に、話しかけた。
「そうだな」
阿虎は頷きとともに、一言だけ返した。
方や多弁、方や無口の二人を見て、ゆかりが呟く。
「ホント、対称的だよね、アンタと天道君って」
その呟きに、順平が突っかかる。
「なぁんだよ、ゆかりッチ。どーいう意味よ、ソレ」
「どーもこーも、そのまんまよ。あ、桐条先輩、出てくるみたい」
ゆかりは、さらっと順平の言葉を受け流すと、壇上に上がってきた美鶴を見ていった。
「おおっと、ヤッベヤベ」
順平が慌てて、前を向くと、体育館内にアナウンスが響く。
「続きまして、生徒会から、新しい役員の紹介があります。
生徒会代表、生徒会長、3年D組、桐条美鶴さん」
「はい」
返事をして、壇の中央に向かう美鶴を見て、ゆかりが溜め息と共に呟く。
「やっぱ先輩に決まったんだ。ま…あの人の人気すごいもんね」
その呟きに答えるように順平も小声で言う。
「なんつっても『桐条』だもんな。オーラ出てるっつーか、近寄り難いっつーか。
しかも『桐条グループ』って、このガッコの母体なんだろ?」
「まぁね。あんま日頃は考えないけどね」
そんな二人の呟きを余所に、壇上の美鶴は、就任の挨拶を始める。
「生徒会長という大役を拝命するにあたり、私の所信をお話ししておきます。
学園がより良くあるために、一人一人の積極性は確かに大事です。
しかし、全員が一つの思いを一年間ずっと切らさずおくのは、簡単ではないでしょう。
大事なのは、それが途絶えても確実に回る仕組みをいかに造っておくかです。
そのために、各自の中の明日への思いを確認し、今、この青春の時をどう過ごすのか。
現実から逃げる事無く、如何にして未来を直視するのか。全てはそれに掛かっています。
私一人の視野では見えないものもたくさんあるでしょう。
充実した学園生活を共にするため、皆さんの知恵と力を貸してください。
よろしくお願いします」
挨拶の終了とともに、体育館内に拍手が響き渡る。
そんな中、ポカンとした顔の順平が、天道に訊ねる。
「すげー…なんだあれ。天道、お前、意味分かった?」
「全然さっぱり」
天道はポーカーフェイスを保ったまま、首を横に振った。
天道の答えを聞き、納得と不安がこもった声で順平が呟く。
「だよな…。住んでる場所が同じったって、距離を感じるな…。
ヤッベー…。オレ、感想とか訊かれたら言えねぇ…」
順平が顔を壇上に戻しかけたところで、天道が言葉を付け足す。
「というか」
「アン?というか、ってなんだよ」
「聞いてなかった。何て言ってた?」
天道の大胆不敵な『聞いてなかった』発言に順平は目を丸くする。
「そ、そうか…。フリーダムだな、お前…。
つーか、訊くなよ…。言えねぇってあんなん…」
そうこうしている間に、美鶴は壇上を去り、体育館に再びアナウンスが響く。
「続きまして、事情により、赴任が遅れられた先生をご紹介いたします」
その言葉に、順平はパッと顔色を変える。
「おッ!コレって空条先生じゃね?」
「ってか、ソレしかないでしょ。事情って何だったんだろうね?」
『事情』という言葉に首を傾げるゆかり。
そんなゆかりに対し、順平は、
「寮に来るって言ってたし、そん時聞いてみたらいいじゃん?」
と、提案した。
「うん、そうだね。そうする」
ゆかりは納得して、壇上に目を戻す。
アナウンスが、承太郎の簡単な説明を行う。
「空条先生は、著名な海洋冒険家であり、博士号も取られています。
この度の赴任は、ポートアイランドの周りの海洋調査も兼ねていらっしゃるそうです。
では、空条先生、一言ご挨拶をお願いします」
その言葉の後から、壇上に上ってくる承太郎。
承太郎の姿を見た生徒達がザワザワと声を上げる。
「スゲー背ぇ高くねぇ?2mくらいあんじゃねーの?」
「ちょっとぉ、カッコ良くない?」
「何でコートなんだ?帽子も被ってるし…」
承太郎は壇の中央で、騒ぎが収まる様子がないのを感じると、スッと息を吸った。
「やかましいッ!短く済ませるから静かにしやがれッ!!」
雷の如き一喝である。体育館内は水を打ったような静寂に包まれる。
「やればできるじゃねーか。名前は空条承太郎。
歳は…必要ねーな。一年間、2年と3年の生物を教える。
以上だ」
そう言ってさっさと壇上から降りてしまった。
「お、おっかねぇー」
マジにびびった顔で呟く順平。
「怒らすと拙いタイプだな、あの人は」
冷静に分析しつつも、ちょっと驚いた顔を見せる天道。
「生物の時間は、なるべく静かに受けましょ。順平、アンタ、気をつけなさいよ」
騒ぎがちな順平に釘をさすゆかり。
そんな騒動がありながらも、21日の昼間は平和に過ぎていった。
4月21日放課後、午後5時
『S.E.E.S.』のメンバーと、幾月、つまりはシャドウについて知るメンバーが、
月光館学園、巌戸台分寮に集まって、一人の人物を待っている。
「ところで、誰なんだい?そのペルソナ使いの教師というのは」
美鶴に幾月が問いかける。
「もう少しでいらっしゃる筈ですから、もうしばらくお待ちください」
その問答の数秒後に、玄関の扉が開く。
「よう」
入ってきた人物を認めて、幾月に驚きが走る。
「く、空条先生!?まさか、桐条君、空条先生がペルソナ使い?!」
「はい、その通りです、理事長」
美鶴の肯定の言葉に続き、真田も口を開く。
「それも、かなり強力な、ですよ。幾月さん。
昨日、危ない所を助けてもらいました」
「真田君、それは本当かい!?」
もう、幾月は驚きっぱなしだ。
「と、いう事だ。いろいろと世話になるな」
全然申し訳なさそうに言う承太郎。
そんな事は気にせずに、幾月は喜びの声を上げる。
「いえいえ!戦力が整うのは喜ばしい事です!そうだ!早く召喚器を用意しなくては!
いやー、最近、いろいろ動きがあって、財布が空っぽ。それにすっかり痩せちゃいましたよ。
ほら、よく言うでしょ?『貧乏肥満なし』って」
寒い駄洒落を残し、急いだ様子で幾月は寮を出て行った。
「…なんか、すいません。あれ、理事長の趣味、というかビョーキみたいなもので…」
自分の事ではないが、なんだか申し訳ない気分になったゆかりが謝罪を述べる。
承太郎は、ロビーのソファに座り、静かに首を振った。
「…いや、いい。気にしてねーぜ。さて、約束通り、『スタンド』について話そう」
スタンドという言葉に、いち早く反応したのは順平だった。
「ハイ!ハイハイッ!スタンドとペルソナって何が違うんですか?」
その言葉に、承太郎は口元を手で押さえながら、静かに言う。
「ペルソナってのは、色々覚えたり、力が伸びたりするんだろう?
だが、スタンドってのは発動した瞬間に、能力や力なんかが決定される。
例外はあるが、目立つような成長は殆ど見られない」
その言葉に、真田が質問する。
「なら、スタンドというのは成長するペルソナに比べて劣ると?」
その質問に承太郎は首を振る。
「いや、一概にそうとは言い切れん。確かに、一人で様々な事がこなせる、という点では劣る。
しかし、スタンドは最初から物凄く強力な力を持っていたりするからな。
スタンドは、言うなれば…一芸特化。
磨き上げた才能がスタンドとして発現する事もあれば、その才能を補助するスタンドが生まれたりもする。
その人物の心根が反映されたものもある。ただまぁ、全く関係無さそうな力が現れる事もある。
ああ、あとだな、何種類かに分類できる」
「分類?って事は、スタンド使いって一杯いるんですか?」
承太郎はゆかりの疑問に答える。
「ああ。何人も知り合いにスタンド使いが居る。
話を戻すが、分類を簡単に言うとだ。
まず、近距離、中距離、遠距離の三つ。これはスタンドの得意とする距離だ。
次に格闘タイプ、補助タイプ、特殊タイプ、後は群体タイプ。
こっちは得意な戦闘スタイルってところか。大体はこんな感じだ。
本当はもっと面倒なんだが、戦う機会も無いだろうしな、これ位でいいだろう」
承太郎の言葉に何度か頷いた後で、美鶴が質問をする。
「では、空条先生はどういったタイプなのですか?」
「ん。俺か?俺のスタンドは『近距離格闘タイプ』と言った所だ」
ふと見れば、普段無口な天道が、何か言いたげな様子をしている。
「なんだ?」
承太郎が質問を促すと、少し悩む様子を見せた後で口を開く。
「先生の能力って、どんなのですか?」
その言葉に、承太郎の周りの空気が変わる。
「スタンド使いにとって、能力を知られる事は、イコールで弱みを握られる事だ。
知れば対策が取れるからな。だから、殆どが秘密にしている。
話すなら、お前達にだけ、教えようと思う。お前達は、聞いて絶対に話さないと誓えるか?」
承太郎はとても真剣な表情で、5人を見る。
5人も真剣な顔で、承太郎に応える。
「秘密は守ります、必ず」「約束します、誰にも言いません」
「オレも誰にも言わないっス」「私も言いません」「誓います」
美鶴、真田、順平、ゆかり、天道が次々に言った。
それを見た承太郎は、ゆっくりと口を開く。
「わかった。だが、今ここではやめておこう。
次にタルタロスに行く時、エントランスで教える」
それを聞いた順平が不満の声を上げる。
「えぇー!?なんスか、それぇ?」
それに苦笑いしながら承太郎は、
「まぁ、そう言うな」
となだめた。
その後、暫く、これからの事を簡単に話していると、美鶴が思い出したように言う。
「ところで、空条先生。学校にお勤めになられる1年間は、どちらにお住みになられるのですか?」
「ん?辰巳グランドホテルに滞在するつもりだが?」
それを聞いた真田が、何かを思い出すような顔になる。
「確か、辰巳グランドホテルと言えば…」
順平が、真田の言葉に続く。
「めちゃくちゃ高級ホテルじゃないっスか!?」
さらにそれに続くゆかり。
「そこに一年間も?もしかして空条先生ってスゴイお金持ち?」
「さあな」
口元に小さな笑みを浮かべたまま、承太郎はゆかりの質問をはぐらかした。
美鶴は、申し訳無さそうに承太郎に言う。
「あそこと比べては、かなり見劣りしますが、空条先生もこの分寮に住んでいただけませんか?
影時間は機械が動きません。有事の際に、連絡が取れないと困りますので」
それを聞いた承太郎は頷き『解った』と短く返した。
「有難う御座います。部屋は、この寮の裏にある別館の寮長室を用意しておきます」
「ホテルの方は引き払わねばならんな。済まんが、今日、タルタロスへ行くなら、お前達だけで頼む」
「あの、こちらの都合でホテルを引き払っていただくのですから、
桐条グループで、多少金額の面を保障させて頂きたいのですが…」
おずおずと言う美鶴に承太郎は、小さく笑みを浮かべて言う。
「SPW(スピードワゴン)財団はそんなにケチじゃあねぇぜ。それじゃあな」
そう言って、承太郎は寮を去った。
承太郎の言い残したSPW財団と言う言葉に、ゆかりが口をパクパクさせて言う。
「き、桐条先輩、スピードワゴンって」
それに続くように、真田も言う。
「美鶴、あのスピードワゴンか?」
「ああ。空条先生はSPW財団と深い関わりがある。
何でも、御爺様が現在の代表に就いていらっしゃるらしい」
美鶴が告げると、ゆかりと真田はそろって溜め息をつく。
そして、一人だけ置いていかれた感のある順平。
「え?え?何?SPW財団ってそんなスゴイの?」
「伊織。もう少し新聞を読んだほうがいいな。SPW財団はSPW石油を母体とする財団だ。
主に、医療の発展や自然保護に尽力している団体で、その資産は桐条グループが霞んで見えるくらいだ。
と、言えばその凄さが解るか?」
美鶴の言葉に、順平は少し唸ってから口を開く。
「とりあえず、空条先生のバックにスゲー組織がついてるってのは解ったッス」
やっぱりよく解ってない順平であった。
「あっ!」
っと、忘れていたものを思い出したような声を上げるゆかり。
「どうした、岳羽?」
真田はその声に、怪訝な顔をして訊ねる。
「いやその…。大した事じゃないんですけど。
空条先生の遅れてきた理由、聞きそびれちゃったな、って」
ゆかりの言葉で、順平も思い出したのか、膝の辺りをポンと叩いた。
「すっかり忘れてたぜ。桐条先輩は、なんか聞いてないんッスか?」
「いや…。海外に用事があって、としか聞いてないな。
また会うんだ、そのときに聞いてみればいいだろう」
それから暫くして、今日のタルタロスは昨日の疲れも残っている事から取りやめと言う事になり、
皆が、それぞれの部屋に戻っていった。
夜10時過ぎ、辰巳グランドホテル
承太郎は荷解きを殆どしていなかったお陰か、思っていたよりも早く、荷物を纏める事ができた。
明日からの生活と、戦いを考え、少しばかり苦笑いを浮かべて、就寝する。
その晩、承太郎は夢を見た。
黒と白のタイルの敷かれた廊下。そこを滑るような速さで動いている。
その廊下の先で、眩い光に包まれると、いつの間にか自分が椅子に座っている事に気付く。
軽く、頭を振って顔を持ち上げてみると、前に奇妙な雰囲気を纏った人影が二つ。
「ようこそ、我がベルベットルームへ」
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月光館学園巌戸台分寮、別館。
そこは本館にはない、キッチンや風呂なんかがある、本館の裏にある建物である。
別館についてはキッチリ設定が存在するので、捏造ではない。念の為。
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