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「涼宮ハルヒの正義、SOS団はいつもハルヒのちキョン48-1」(2007/05/04 (金) 16:04:16) の最新版変更点
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この感覚は前に一度体験した事がある。
ハルヒがやたらと不機嫌だったあの日。
ベットの上で寝ていたはずなのに、何故か俺とハルヒしかいない世界へ連れて行かれたあの日。
まるで意識だけがそのまま何処かへ移動したかのような・・・、感覚。
決して俺は夢を見ていたわけではない。
でも・・・、もしかしたら夢かもしれない。
そんな事を一日中考えさせられた・・・、あの体験。
今度は見紛う事無く目の前の現実で起きている。
―――長門の言葉と同時にブラックアウトした意識。
あのときの感覚。あのときの体験が今再び。
「こ、ここは・・・。」
俺は取り戻した意識を確認しながら月並みな言葉を呟く。
全く見知らぬ風景―――いや、見知らぬ室内。
どうやら俺達は、ハルヒが創り出した閉鎖空間内に来ている様だ。
「あれは・・・、確か・・・。」
「銀色の鷹のエンブレムですね。そういえば、あれを見ると何か思い出すものが・・・・。」
しかも、その場所には見覚えがあった。
だからといって、そこが決して俺達の世界ではない事も分かっている。
そう、ここは最悪にして最強の秘密結社が住まう―――
「あのう~、ここってどこでしょうか?」
「現在位置の情報を収集中。周辺の状況、目の前のエンブレムから・・・・。」
「まあまあ皆さん落ち着いて。何、ちょっとショッカー基地にやってきただけですよ。グウたちは。」
―――ショッカー基地なのだから。
「しょ、ショッカー基地!?
確かにあのエンブレムは『見た事があるな~。』なんて思ったけど・・・。」
「グウちゃんの言っている事は嘘ではない。」
「長門・・・。って、グウちゃんって!」
「本人からそういう様に言われている。コミュニケーション上の問題は見受けられない。」
いやいや、お前の『~ちゃん』付けは結構レアだと思うぞ。俺は・・・。
「まだ何か?」
「あ~、もういい。」
とりあえず長門が否定しないところを見ると、ここがショッカー基地だという事実は確かなようだ。
ということは、『本物の怪人』もわんさか居るに違いない。
「あれ~、この椅子って結構安物なんですね。」
「苦労しているんですね~。」
そうなると長居は無用だ。さっさとこの場所から移動しなくては。
「みんな!ここは危険だ。早く何処かへ逃げよう。」
観光客のように騒いでいる皆に向かって、俺は一声かける。
当のハルヒが出てこないのも心配だが、今は安全な場所に隠れなければ。
「で、どこに隠れるのだ?」
「えっと・・・、それは安全な場所だよ。」
俺の言葉を聞いて真っ先に反応したのは、今日始めてあったばかりのグウという少女。
コイツのせいで状況が悪化したのは、まさしくブルータス並だ。
「ふむ。それならば、ここから移動した方がよっぽど危険だろう。
幸いこの場所にはグウ達以外は誰も居ない。
寧ろ誰か来るまで移動しない方が得策だと言えんか?」
「む、むう・・・。」
グウの言葉に俺は押し黙る。
確かにコイツの言う事は正しい。
しかし、ここはショッカー基地という、血も涙も無い怪人の巣窟なのだ。
もしも凶悪な怪人がこの部屋に来たら・・・。
「キョン吉よ、そう心配する事も無い。何といってもこの場には長門っちやグウも居る。
余程の事が無い限り大丈夫なはずだ。」
「あっ!そういえばそうだな。反則キャラが二人も・・・。」
本当に俺は何の心配をしていたんだか。
この二人の力を持ってすれば、ショッカー基地すらないことに出きるはず。
とりあえず俺達の身は安全なはずだ。
うむ、これで安全面については確保したと。
そうなると次は・・・。
(う~ん、今度はこの世界をどうにかしなくてはならないのだが・・・。)
俺はそう考えながら、この場にいる面々を見回す。
やはりこういったことは彼女が適任だろう。
前に閉鎖空間が俺達のいた世界を飲み込もうとした時も、彼女が色々と助言をくれたんだしな。
「なあ長門。お前ならここから元の場所に帰れる方法を知っているよな?」
「分からない。」
「はっ?いや、お前とか・・・・、朝倉涼子もこういった場所を作れるんだろ?」
長門の言葉はいつも簡潔で語数も少ない。
だから聴いた瞬間は一瞬だが『理解』が遅れる。
ようは簡単すぎて理解が出来ない・・・、違うな。
今回の場合は理解したくないんだ。
都合が悪すぎる言葉に・・・。
「この閉鎖空間は確かに涼宮ハルヒの願望によって造られたもの。
閉鎖空間の発生理由として、今回は怪人キョン吉――――つまりアナタに気絶させられた時に
発生した『生理的嫌悪感』から生まれたモノだと彼女の性格から推測できる。
しかし、それが理由だと貴方からこの空間が生まれた説明がつかない。
これが『分からない』点。」
・・・何だ、長門の奴。
『分からない』と言った割には、空間の発生源までわかっているじゃないか。
創られた理由が分かっていれば、長門の言う『分からない』は解消しなくてもいいじゃないか?
例えば・・・そう、ハルヒを満足させればどうにかなるんだろ?
それなのに妙な箇所を『分からない』だなんて。
「では長門さん。涼宮さんは怪人を倒したという満足感を得られれば良いんですね?」
「分からない。」
物凄く的を得ているような古泉の言葉にも、長門は『分からない』の一言で斬って捨てる。
うーむ、一体何が違うんだ?
・・・いや、長門は『分からない』と言っている。
確かに俺や古泉の考察は、この状況とハルヒの能力―――思ったとおりの世界や事象を具現化する力――――
を考えれば普通に出てくることだ。
しかし、これに対する答えが全て『分からない』。
これは俺達の考察が間違っているのでもなく、『正解なのかが分からない』という事では。
それでは、こんな質問はどうだろうか。
「なあ、長門。」
「何。」
「ああ・・・、例えば古泉が言ったとおりハルヒが心底満足したら、俺らは元の世界に帰れるのか?」
ほんの僅かだが、長門の顔付きが変化する。
まるで『二度も三度も同じ答えの質問をするな!』と言わんばかりの顔付きだ。
やっぱりこの問いに対する答えも『分からない』のか?
「帰れない。」
「へっ?」
「全く~、キョン吉もダメですな~。」
「な、何がだよ。って、お前!そんな某戦闘員みたいな覆面はどこから。」
「そこのタンスにあったぞ。ほら、キョン吉もグウと一緒に戦闘員・・・、あっ!もう怪人か~!
スマンスマン。グウったらうっかり者!てへっ!」
グウはそう言って自分の頭を軽く小突く。
いわゆる『うっかりちゃんポーズ』である。
はあ~・・・、ここらではっきりと言っておくか。
「・・・・ここではっきりと言っておくが、お前がいくら可愛い仕草をしたって全く似合ってないからな。
後、この姿はお前のせいだろ!いい加減さっさと俺の姿を元の人間に戻して欲しいものだがな。」
俺は心底嫌味を込めながらグウに物を言う。
しかし・・・。ここはやはりと言うべきか。
グウの奴は俺の言葉を聞くどころか、古泉達の方を向いて・・・、
「さあさあ、皆さんもグウとご一緒に!『キキィ!キキィ!』」
はあ・・・。まったくコイツの思考回路は良く分からん。
話も噛み合わん。大体コイツは何者なんだ?
俺をツッコミ死させるために天が使わした死神か?
「じゃあ僕たちは帰れないんですか?長門さん。」
そうそう。また話しが脇道にそれてしまった。
早く長門から、『ハルヒを満足させても帰れない理由』を聞かねば。
「な、なあ長門。ハルヒを満足させれば帰れないって理由は・・・・、何でだ?」
「もしも仮に涼宮ハルヒの欲求を昇華させても、彼女がここに居たいという考えが増大すると予想される。
そのため彼女の欲求を迂闊に昇華させると私達のいた世界は消滅。
つまりここが新たな世界になる可能性がある。」
「あれ・・・?そういうことは確か前にも・・・。」
「そう、前と同じ。」
そうだ。そうだった。
前にハルヒが創りだした世界は、退屈を解消したいが為に生み出されたモノだった。
そして、神人という彼女の精神状態の異常から生み出される物体が、実際に彼女自身の目の前に現れ、
如何にも現実離れをしたその様が、彼女を―――ハルヒをその創りだした世界にいたいと思わせた。
その結果、俺らがいた世界は崩壊しかけたんだったな。
ハルヒが心底満足していた、あの時の様子が頭に過(よ)ぎる。
うむ・・・、確かに長門が言うことは最もだ。
この世界でハルヒが満足してしまえば、俺達のいた世界は彼女にとって不必要なワケだしな。
んっ・・、まてよ・・・?
じゃあ、一体どうしたら元の世界に・・・。
「しかし、帰れない可能性が無いわけでもない。」
「お、おい。それはどうやって・・・。」
「ああ、前みたいに・・・ですね。」
俺の言葉を掻き消すように、耳元に古泉のしたり声が響く。
だから俺の顔に自分の顔を近づけるなって・・・。
・・・はい?
『前みたいに』って・・・。
まさか、前にハルヒを元の世界に帰りたいと思わせた・・・・、
『俺はポニーテール萌なんだ。だからあの時の髪型は反則的に似合っていたぞ!』
『あ、あんた何を言って・・・、んぐ!!』
あれ・・・ですか?
「前みたいにって・・・・、お、俺はもうやらんぞ!!あんな事!!」
「何を動揺しているのですか?
でも、いざと言う時はあれくらいのことをして貰わないと・・・。」
「だから『あれ』はもう無理だって!」
俺は必死に両手を振りながら古泉の意見を拒否する。
いくら俺達のいた世界が消滅しようと、出来ない事は出来ないのだ。
―――朝比奈さんが居る前では尚更・・・。
「あのう~、一体何の話ですか?キョンくんもやたら顔が赤いし・・・。」
「えっ・・!あ、朝比奈さん?」
あ~、俺達の会話にパニックを起こさなかったのはいいが、まさかここで口を開くとは。
いやいや待て待て。
今はそんなことを考えている場合じゃないぞ。
兎も角!今は俺がハルヒにナニした・・・。
違う!それじゃあ俺が変なことをしたみたいに!
「キョンくん?またどうしたんですか。どんどん顔が赤くなっていますよ。」
「あっ・・・、いや・・・その・・・。違うんです!!俺は何も!!」
不思議そうな表情で覗き込んでくる朝比奈さんに対して、俺は慌てて体裁を取り繕う。
い、いや、別に悪い事はしてないのだがな。
「はあ・・・、そうですか・・・。分かりました。今はそれどころじゃないですもんね。」
これ以上の問答は不毛だと思ったのか、朝比奈さんは俺の言葉に満足しないながらも1歩後って身を引く。
それにしても・・・。そんなに俺の顔は真っ赤だったのか。
自分なりにポーカーフェイスを勤めていたのだが・・・。
ご、ゴホン!まあいい。
とりあえずこの状況を打破しなければ。
「じゃ、じゃあ長門。これからどうする?
やっぱりハルヒが『この世界にいたくない』ように思わせなくちゃいけないのか?」
俺は長門に、今考えられる最善の方法について聞いてみる。
やっぱり複数の視点から見た方が、解決策も見つかりやすいってもんだ。
しかし、そんな俺の考えに長門が返した答えは・・・・。
「考える必要は無い。」
「でも、このままじゃ・・・。」
長門の意外な発言に、俺は肝と一緒に緊張感も抜かれる。
流石に何も考えないという訳にはいかないだろう。
「お~い。お~い。」
そして、さらに追い討ちをかけるかのように、グウの奴がニヤケ顔でこちらへやって来た。
「状況を打破しちゃいましたぞ。」
不吉だ・・・。不吉過ぎる!
ったく、グウの奴・・・。今度は一体何をやらかしたんだ?
それよりも、俺の体を早く元に戻して欲しいもんだ。
「隣の部屋に行ったら、グウと同じカッコをした人達が一杯いましたから連れてきました。ちゃら~ん!」
本当だよ。コイツのおかげで俺は人間じゃなくなくて、蜘蛛男なんかにされたんだからな。
見ろよ!今じゃ、六本も腕があるんだぞ!
これじゃあ目の前にいる戦闘員どもを統べる怪人じゃあ・・・。
「あ・・・、あれ・・・?」
「あ、あの全身タイツの人達は何なんですか~?」
「未知の生体構造を持った個体が複数出現。観察、内部構造の解析を開始・・・。」
「いや~、ここがショッカー基地ならばこの状況も至極当然。
うっかりしていましたね。はっはっはっは!」
「笑い事かーーー!!!!」
俺は古泉へのツッコミとは裏腹に、心底肝を冷やしていた。
―――甘く見ていた。
まさか実物の戦闘員が、ここまでの威圧感を兼ね備えているとは思わなかったからだ。
この様子を見ると、いくら長門やグウでも完勝という訳にもいかないだろう。
そうだ。今、俺達の目の前に居るのは、決して長門が創りだした『モドキ』では無く、
暴力でこの世を支配しようとする――――
「キキィ!!キキキィ!!」
本物の・・・・『悪』の軍団・・・・。
――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン・3――――――――――
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