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「涼宮ハルヒの正義 47-3」(2007/04/03 (火) 00:58:48) の最新版変更点
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俺は怪人である。
名前は・・・、無い方がいいかもしれない。
生まれた場所、というか衣装を着た場所は演劇部の部室だ。むしろ見当がつかない方が怪人らしいが。
まあ、唯一記憶しておきたい物事としては、鶴屋さんが俺の体を見て悲鳴を挙げた事ぐらいだ。
全く人間って奴は獰悪な種族だ。
自分でここで着替えろと言った癖に、その通り実行すれば非難銃弾雨あられなのだから。
だから俺は怪人の姿は少し気に入り始めている。
あくまでも着ぐるみを着るだけという前提があるが。
しかしこの怪人姿にも一つ問題がある。
それはこの姿が、俺に『蜘蛛男の着ぐるみ』を付け加えただけにしか見えない点だ。
それでも心優しい朝比奈さんや、話を合わせるのが上手い古泉はこちらの芝居に乗ってくれるだろう。
問題は怪人を欲した張本人。涼宮ハルヒだ。
どう考えても彼女にはユーモアが無い。
いや、言うこと・成す事・考える事にはユーモアがある。
だが他人に対するユーモアがかけている。
それも決定的にだ。
だからハルヒと対面した時の策を考えねばならない。
例えばこんなのはどうだろう。
俺が体育館と入ると同時に・・・、
「さあっ!いよいよにょろね!!」
「朝比奈さんへ脇目も振らずに襲い掛かり・・・・。」
「じゃあ、さっきの手はずどおりだからにょろね!よしっ!!GO!!」
「うむ、本番スタートか・・・、って鶴屋さん!?」
俺が鶴屋さんの言葉に気付いたときには既に遅し。
何故か俺が物思いに耽っている間に事は進んでいたようだ。
おいおい・・・、一体どうするんだよ・・・・。
「きゃあ~~!!怪人がやってきたわ~~!!」
そんな俺の心は露知らず、鶴屋さんの合図と同時に演劇部員の一人が体育館へ猛然と駆け込む。
あくまで素人的観点だが、この人は相当な大根のようだ。
(これじゃあ、流石のハルヒでも一発で分かるだろ・・・。)
しかしすでに賽は投げられ、カエサルもルビゴン川を渡る準備をしている。
だから今更どうこう言うつもりもない。暇も無い。
―――そう・・・、
(どうせこの世に怪人は居ないのだから、俺が怪人になってやる!)
俺は半ば以上にやけくそな思いを胸に秘め、先に入った演劇部員の子を追う様に体育館の中へ突入した!!
自分の中で背一杯の怪人を演じながら!!
「うおおおおおおーー!!怪人だぞ~~!!」
さあ、どうだ!俺が怖いか恐ろしいか!
これが俺の所有する怪人の知識をフル活用して出来た威嚇の言葉だ!
後でいくら俺を咎めても意味は無いぞ!
なぜなら俺は自分のした行動に一片の悔いも無いからだ!
さあ!さあ!さあ!
HURRY!!HURRY!!HURRY!!
俺のこの怪人デビューについて、何らかのリアクションを頂戴~!!
「くっ・・・!また怪人が増えたの!?」
うむ。体育館に入って来た怪人姿の俺を見て、ハルヒこと仮面ライダーハルヒが最初に言った言葉がこれである。
とどのつまり・・・。
ハルヒはすでに怪人――――カメレオン姿の怪人と闘っていたのだ。
「やだっ!そんなところを舐めないで!!掴まないで!!きゃああああーーー!!」
そして当然というべきか、怪人らしきモノの片腕に朝比奈さんが捕らわれているのが見える。
その捕らわれっぷりときたら、ある種の血統を受け継いでいるとしか思えないほどだ。
「ふふふ・・・、援軍が来たか!これまでだな。仮面ライダーハルヒよ!!」
しかし・・・、どうする?
この状況は。
とりあえず怪人の存在の有無に関して今は問わないとしても、朝比奈さんが捕らわれているのは事実。
如何にハルヒといえど、目の前にいる怪人っぽい奴に勝てるとは思わない。
しかもあの怪人っぽい奴は、ハルヒのことを仮面ライダーと認めている。
きっと手加減はしないだろう。しかも援軍が来たらしい。
これは由々しき事態だ。
ん・・、援軍・・・・?
「さあっ!!俺と一緒に、仮面ライダーの奴に悪の制裁を加えてみようぞ!!怪人キョン吉よ!!」
そう言ってカメレオンの姿をした怪人は、俺の方を見てニヤリと笑う。
俺も・・・、怪人の仲間入りですか?
「ったく!みくるちゃんも人質に取られてるのに、また怪人が増えるなんて・・・。
一体どうしたら・・・?」
いや、ハルヒも目の前のそれは仕方ないとして、俺の方は気づけよ。
どこをどう見たって怪人という名の俺feat.着ぐるみだろ。
「しょうがない!こいず・・・、じゃなくて親父さん(おやっさん)!!新手の方は頼むわよ!」
「分かりました!すずみ・・・、じゃなくてライダー!
さあ、怪人キョン吉!ここは通さないぞ!!」
いや、勝手に話を進めるなって・・・、古泉。大体お前はキャラが違うだろ。
いつの間に熱血キャラに転進した?
っていうか、お前は俺に絶対気付いているだろ?
絶対絶対ワザとだろ?ぜ~ったいぜったい!!
「古泉!!本当にワザと・・・、あっ・・・。」
100%こちらを馬鹿にしているかのような顔で近づいてくる古泉を見て、俺はあることに気付く。
(そうだ、あそこにいる怪人が本物ならば、いくらフロイトを馬鹿にしたようなニヤケ顔をしている古泉でも、
なんらかの対処を取るだろう。
というか、そもそもアレが怪人な筈がない。
大体、怪人なんてものは醜い姿と純粋すぎる心の為に、常軌を逸した行動で一冊本が作れるくらいの人物を言うんだ。
別に蜘蛛の姿をした人間やラッコの姿をした芸人が居たとしても、それは決して怪人とは言わない。
それにそれらの大半は全て想像上・著名な作家による創作物であり、それが排出する背景としても、
高度な経済成長期・バブル等の貧富の格差や、立場による自己の評価の限度が怪人を欲するものなのだ。
ある種自分よりもしたの存在。または平行線に並ぶ存在として。
つまり怪人とは道端に転がっているようなものでなく、
『怪人という人間ではない人間』が一般大衆の心に必要となった時、初めてその姿を現してよいもので・・・。
だから、今俺の目の前に居るカメレオンの姿をした物体は決して怪人ではない。
つまりあれは・・・・。 )
「そうです。ご明察の通り、アレは長門さんが涼宮さんを満足させるために創り出した、怪人を模した『モノ』です。
ちなみに、アレは涼宮さんのキック一発で倒される次第となっています。
当然キョンくんを仲間だといったのも長門さんのプログラムどおりです。」
俺が現状理解を終えようとしたその刹那、古泉がいつもの笑顔と『解答』で俺の思考を遮った。
やはり俺はコイツのことが100%信用が出来ない。
始めから全てを理解していたかのような言動をとるところなんて特にだ。
「いや、私も最初は気付かなかったんですよ。でも、キョンくんを仲間と言った瞬間にピンと来ましてね。」
そんな古泉の体裁が今まさに体現されている。
はいはい。どうせ俺が一人であたふたしているだけですよ。
「まあ、そういうことなんで今しばらくお付き合いください。」
「だから顔を近づけて話すなって!!」
「しょうがないじゃないですか。距離を離して喋り続けていたら、まるで怪人と仲良しさんに見えてしまいますからね。
一応、僕とあなたは敵同士・・・。という設定で、この場に居合わせているんですから。・・・えいっ!!」
古泉はいつもの調子でそう言うと、いきなり俺の軸足を大外から払ってくる。
もちろん格闘の経験なんて無い俺は、そのまま床に向かって横転した。
「うおっ!古泉!何しやがる!!」
「しょうがないですよ。闘うといった手前、それらしくしないと・・・。ねっ?」
「『ねっ?』じゃねえ!!」
予想外である古泉の攻撃に俺は思わず我を失ってしまう。
そして激高した感情のままに古泉の脚を蟹バサミでひっくり返した!
「あたっ!ったく、キョンくんは・・・。」
「お前が悪いんだろうが!大体、俺の後ろには鶴屋さんもいるんだ!もし彼女まで巻き込んだらどうす・・・。」
俺と古泉はそこまで言ってあることに気付く。
(しまった!今までの話を鶴屋さんに!!)
そう。鶴屋さんのような普通の人に『怪人を造った』や長門の能力の話はご法度である。
もし、もしもだ。
この話が鶴屋さんに聞こえてきて、彼女が疑問に思ったならば面倒な事に・・・。
(どうする・・・、聞こえていない・・・か?)
俺がそう考えると同時に古泉と視線が合う。
きっとコイツも同じ事を考えていたのだろう。
そして、俺と古泉が揃って鶴屋さんがいるはずの体育館入り口を見ると・・・・、
「いや、グウはなにも聞いてないですよ。にょろ。」
「聞いてない。良かった~って、顔が違~う!!」
文字通り『めがっさ可愛い』はずの鶴屋さんが、 能面顔の得体の知れない人物になっていたのだった。
――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン――――――
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