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「ドラえもん のび太の新説桃太郎伝第一話」(2007/03/04 (日) 13:00:28) の最新版変更点
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第一話「報せ」
「ドラえも~~~~~~~ん!なんていうかもう、とにかく法律に触れそうなくらいヤバいチャカとかそんな感じのブツ
を出してくれぇぇぇ~~~~~~!!!」
―――絶叫しつつ部屋に飛び込んできたのは、我らが主人公、野比のび太。いきなりテンションが高すぎるが、割とよく
あることだったので、ドラえもんはもはや呆れもしなかった。
「のび太くんったら・・・またジャイアンにいじめられたのかい?」
「ジャイアンだけじゃないよ!スネ夫もしずかちゃんも、み~~~んな殺してぼくも死ぬ!」
興奮しすぎて危険思想をぶちまけ始めた。ドラえもんはふんふんと聞き流しながら、のび太が落ち着くのを気長に待つ。
五分ほどして、戦時中の日本軍ばりの言動を繰り返していたのび太もようやく平静を取り戻していた。
「で、何があったのさ?」
「うん、ちょっと聞いてよ!みんな酷いんだ!」
のび太は身振り手振りを交えつつ、如何に自分が可哀想な目にあったのかを解説しだした。
「あのさ、クラスで学芸会をやることになったんだよ」
「ふむふむ」
「で、ぼくも何か役をやりたいなーって言ったんだ」
「へえ、そりゃあ身の程知らずな」
「けどさ、そしたらジャイアンたちが笑いだしたんだ!」
「うん、気持ちは分かる」
「お前なんて、その辺に生えてる木その一くらいしか出来ないだろって!」
「はっはっは、全く持ってその通りだね!」
「スネ夫はおろか、しずかちゃんまでぼくを笑ったんだ!」
「そりゃあ笑うね!」
「―――ってドラえもん!何か笑うようなことか!?」
「だってその通りだもの。笑うしかない」
「じゃあ好きなようにやってろ!」
どっかで聞いたようなやり取りの果て、のび太は不貞腐れて寝転がってしまった。
「全く君って奴は、あれだけ冒険して色々学ぶこともあるはずなのに、どうして進歩しないかなあ。経験値が日常に戻る
たびにリセットされてるじゃないか」
「・・・逆に考えるんだ。ぼくの経験値がリセットされてるんじゃなくて、みんなも成長してるからぼくが成長してないように
見えるんだ。そう考えるんだ」
「屁理屈ばっか上手くなっちゃって・・・」
―――その時だった。ドラえもんのポケットから、ピーピーと妙な音が響いたのだ。
「ん?珍しいな。<タイム電話>の呼び出しだ」
「へえ、誰から?ドラミちゃん?それともセワシくん?」
「えっと・・・あれ、ムウさんからじゃないか!」
「ムウさん?」
意外な名前に、のび太はヒョイと身を起こした。
ムウ・ラ・フラガ。タイムパトロールの一員であり、以前のび太たちが遭遇したとある大事件の際に知り合った人物で
ある。のび太たちにとっては世代や立場を越えた友人といった間柄だ。
「もしもし―――あ、どうも久しぶりです。え・・・何ですって・・・そんな!・・・はい・・・はい・・・のび太くんも
ここにいるから替わります!」
話している間に見る見る顔色を青くしていくドラえもんを不審に思いつつ、差し出されたタイム電話を受け取った。
「ムウさん、久しぶり」
「ああ、しばらくぶりだ・・・俺の方も色々あったから、随分と話したいこともあるが、緊急事態なんだ。本題から入るぞ」
「本題?」
のび太は首を傾げた。そこから一息おいて―――ムウは言い放った。
「ギガゾンビ・・・奴が、脱獄した」
「―――!」
思わず息が詰まる。ギガゾンビ。その名前は、よく覚えている。
古代日本世界を拠点に、世界の歴史を造り替えようとした未来の時間犯罪者―――!
「な、なんであいつが!?」
「奴の仲間が刑務所に襲撃をかけたらしい。警備員たちを圧倒的な力で薙ぎ倒し、そのままギガゾンビを連れて逃げた
そうだ。今タイムパトロールが行方を追っているが・・・芳しくないな」
「そんな・・・」
「・・・君たちに連絡したのは、そのことで注意しておきたかったんだ。奴は君たちを恨んでるはずだから、もしも奴が
復讐を考えてるとしたらと思って、な。そっちで何か、変わったことはないか?」
「いや、特にありません」
「そうか・・・流石にそれは取り越し苦労だったかな。とにかく、しばらくは身の回りに気を付けてくれ。俺たちも必ず
奴を見つけ出すから」
「はい・・・」
それからいくらか言葉をかわして、のび太は通話を切った。部屋の中には、不穏な空気が流れている。
「ギガゾンビ・・・どうする、ドラえもん!?」
ドラえもんは腕組みをしながら、やがて答えた。
「・・・ぼくの道具を使えば、奴がどこに行ったのか。それは分かると思う。けど、危険だよ」
「うん、それは分かってるよ。でも・・・知っておいて、放っておくっていうの?」
真剣な表情ののび太。それを見てドラえもんは笑みを浮かべた。
「なるほど・・・経験値は、ちゃんと引継ぎされてるみたいだね。よし、行こう!」
「そう来なくっちゃ!よし、じゃあみんなも呼んで・・・」
言いかけてのび太は気付いた。<みんな>とは、喧嘩中なのだということを。
「どうしたの、のび太くん?」
「・・・いや、やっぱり今回はぼくたち二人だけで行こう」
「え!?何でだよ!・・・まさか、喧嘩したことを根に持ってるの?」
「ち、違うよ!やっぱこんな危険なことに友達を巻き込みたくないしさ。ま、ドラえもんの道具があれば、二人だけ
でもどうにかなるって。それに大長編では大体、現地の協力者とかも現れることだし・・・」
あれこれもっともらしい理由を語るのび太だが、本音はありありと顔に書いてあった。
「はあ・・・ホントに屁理屈だけは上手くなっちゃって。そんなこと言ってる場合じゃないってのに・・・」
「うるさいなあ!とにかくどれだけ事態が深刻だろうとも、今はあいつらと顔を合わせたくないんだよ!さあ、無駄口
叩いてないで、出発だ」
本音をぶちかまし、さっさと引き出しを開けてタイムマシンに乗り込んでしまうのび太。
ドラえもんもやれやれとばかりに腕を広げつつ、引き出しへと飛び込んだ。
「しかし、本当に大丈夫かな・・・」
全くのび太くんは変な所で意地っ張りなんだから。ドラえもんは嘆息するのであった。
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