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「無題 43スレ201さま」(2007/02/11 (日) 14:40:11) の最新版変更点
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満天の星が降るようなニュージーランドの夜。屋上の屋根に昇った私はあることを考えていた。
「おい、お茶だぞー」
のんきそうに見えて実は危ない橋を幾度も渡っているらしいエノラさんが紅茶が乗ったトレイを持って顔をみせる。
「あ、いただきます」
丁度喉が渇いていたところだ。この差し入れはありがたい。私はトレイを受け取ると、出窓の平らな部分にそれを置いた。
「久しぶりに晴れたな」
何の気まぐれか、エノラさんが屋根に上がってくる。もしかしたらコヨミちゃんの機嫌が悪いのかもしれない。
いや、実際悪いのだろう。今回の仕事は私の単純なミスによるものだったからだ。
ダイブ・アーム通称DAのバラスト調整不良。ありきたりな見落としだった。
「あー、その、なんだ」
エノラさんがタバコを取り出し、火をつけながら言ってくる。
「大将、気ィ抜くなとよ」
今の私にはずしりと思い一言だった。何も言えない。言えた義理じゃないし、何を言っても言い訳になる。
黙って紅茶をすする。ミルクティーの癖になぜか苦かったのは私の気のせいだったか。
しばらくの間、ハウラキバリアに波が寄せる音だけが辺りに響く。
エノラさんが最後の一服を終えて火を消した。
「あのよ、大将が言ってたんだけどよ」
くしゃくしゃになったタバコの箱をポッケにしまいながら、エノラさんは話を切り出した。
「お前さんの案、考えてみるってよ」
頭の中にショックが走った。
「ホントですか!」
ガバッとエノラさんの鼻先に詰め寄る。
「タクティカル・レスキュー・スーツ(TRS)入れてくれるんですか?」
エノラさんはびっくりして引いている。
「あ、ああ。でも過度に期待するなよ。考えてみるって言ってただけだからな。あいつの気まぐれはいつものとおりだし」
そんなエノラさんの声は聞こえてこなかった。私の頭の中には数々のメーカーの海難救助用潜行服のデザインが乱舞し、それどころではなかった。
「エノラさんありがとう!」
新参の私の意見がすんなり通る訳はない。コヨミちゃんに口添えしてくれたであろうエノラさんに抱きついて私はほっぺにキスをした。
「おいおい、俺にサービスしたって何も出んぞ!」
多少顔の赤くなったエノラさんが大声を出す。私はかまわず抱きついた。
まだ、ギガンティックトウキョウに関わることになる前の泳がされていた平和なときの出来事だった。
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