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「──接続章── 「”過去は過去でなく輪廻して今”~音楽隊副長・鐶光の場合~」」(2012/10/24 (水) 20:30:07) の最新版変更点
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『遠い日々の記憶が刹那に……coming Flashback』
『迷い込んだのは夢なんかじゃなくて現実』
『まるで同じこと躊躇ってる』
『時を超えて……いつでも』
「行くぞ! 最後の勝負だ!」
時は移ろう。
錬金の戦士たちとザ・ブレーメンタウンミュージシャンズの戦いがいよいよ佳境に差しかかりつつあった頃。
根来忍。楯山千歳。防人衛。早坂桜花。そして中村剛太。
仲間たちが次々と倒れていく中、津村斗貴子はダブル武装錬金を発動した。
そして猛攻。圧倒に次ぐ圧倒。総てにおいて優勢だった鐶光を……押している。
(……た、ただダブル武装錬金を使っただけなのに……この気迫は一体……!?)
鬼気迫るその姿は鐶を大きく揺り動かし……。
鼓動。
小さな胸の中で動乱が巻き起こった。
(この気迫……この怒り)
(まるで)
(まるで……)
(……………………お姉ちゃん)
フラッシュバック。蘇る記憶。
けたたましい笑いが脳髄に響いた。柔らかな肌。重なる唇。ケーキ。両親の死骸……。
映像の中心は常に1人の少女だった。目を細め口を綻ばせにこやかにこやかに笑っている短髪の少女。
玉城青空。
憤然と向かい来る斗貴子に義姉を重ねた時……鐶の戦意はわずかにだが削がれた。
例えそれが決戦に抱くべからず恐懼だとしても…………戦果にどれほど影響したか今となっては分からない。
(……怯えては……ダメ……です。むかし……無銘くん……と……約束……しました……!!)
振り払い、立ち直るまで1秒とかからなかったのだから。
戦闘の中、本当に一瞬だけ現れた機微。
だから他の面々ほど露骨に語らなかったが──…
鐶にもまた、過去があった。
彼女は時々思う。
組織がその名前を拝借しているあの寓話。
驢馬の上に犬。犬の上に猫。そして猫の頭に鶏がそれぞれ乗って鳴き喚いた後もなお、泥棒たちは舞い戻ってきた。
だが犬に足を噛まれ、大声を上げる鶏に怯え──…
闇のなか彼らは錯誤した。足をメスに刺され、判官に怒鳴られたと。
犬と鶏。無銘と自分。寓話と比べると配役は逆のようだった。
運命も。武装錬金も。位相はほぼ入れ替わっている。
自動人形は判官のようで
キドニーダガーはメスのようで。
だからこそ、いつも運命を感じていて──…
.
【ヤーコプ=グリム・ヴィルヘルムグリム/作】
【関 敬悟・川端豊彦/訳】
【ブレーメン市の音楽隊】より】
やがて村を逃げ出した者三匹は、ある屋敷のところを通りかかると、門の上に雄鶏がとまっていて、精一ぱいの声で鳴
いていた。「骨の髄までしみわたるような声だね」と、驢馬が言った、「どうしたってんだい」──「上天気だよって知らせたの
さ」と雄鶏が言った、「うれしい聖母マリアさまのお祭りで、マリアさまがキリスト坊ちゃまのかわいらしい肌着を洗濯なすって、
そいつをかわかそうって日だからな。ところがあしたは日曜で、客が大勢来るってんで、うちのおかみさんたら情け容赦もな
く、あすは俺をスープに入れて食っちまうんだって料理女に話してたのさ。そいで今晩、おいらは首をちょん切られるのさ。
だから、鳴けるうちに、思いっきり鳴いてるってわけさ」──「何を言ってるんだ、赤毛君」と、驢馬が言った、「それよか俺た
ちと一緒に逃げた方がいいや。俺たちはブレーメンへ行くんだ。死ぬより良いこたあ、どこへ行ったってあらあな。お前さん
はいい声してる。みんなで一緒に音楽をやったら、きっと面白えもんになるぜ」と、雄鶏は、これを聞くと、そいつは面白いと
思って、四匹そろって出かけた。
【参考文献:角川文庫 「完訳 グリム童話Ⅰ さようなら魔法使いのお婆さん」】
──接続章── 「”過去は過去でなく輪廻して今”~音楽隊副長・鐶光の場合~」 完
過去編第001話に続く。
『遠い日々の記憶が刹那に……coming Flashback』
『迷い込んだのは夢なんかじゃなくて現実』
『まるで同じこと躊躇ってる』
『時を超えて……いつでも』
「行くぞ! 最後の勝負だ!」
時は移ろう。
錬金の戦士たちとザ・ブレーメンタウンミュージシャンズの戦いがいよいよ佳境に差しかかりつつあった頃。
根来忍。楯山千歳。防人衛。早坂桜花。そして中村剛太。
仲間たちが次々と倒れていく中、津村斗貴子はダブル武装錬金を発動した。
そして猛攻。圧倒に次ぐ圧倒。総てにおいて優勢だった鐶光を……押している。
(……た、ただダブル武装錬金を使っただけなのに……この気迫は一体……!?)
鬼気迫るその姿は鐶を大きく揺り動かし……。
鼓動。
小さな胸の中で動乱が巻き起こった。
(この気迫……この怒り)
(まるで)
(まるで……)
(……………………お姉ちゃん)
フラッシュバック。蘇る記憶。
けたたましい笑いが脳髄に響いた。柔らかな肌。重なる唇。ケーキ。両親の死骸……。
映像の中心は常に1人の少女だった。目を細め口を綻ばせにこやかにこやかに笑っている短髪の少女。
玉城青空。
憤然と向かい来る斗貴子に義姉を重ねた時……鐶の戦意はわずかにだが削がれた。
例えそれが決戦に抱くべからず恐懼だとしても…………戦果にどれほど影響したか今となっては分からない。
(……怯えては……ダメ……です。むかし……無銘くん……と……約束……しました……!!)
振り払い、立ち直るまで1秒とかからなかったのだから。
戦闘の中、本当に一瞬だけ現れた機微。
だから他の面々ほど露骨に語らなかったが──…
鐶にもまた、過去があった。
彼女は時々思う。
組織がその名前を拝借しているあの寓話。
驢馬の上に犬。犬の上に猫。そして猫の頭に鶏がそれぞれ乗って鳴き喚いた後もなお、泥棒たちは舞い戻ってきた。
だが犬に足を噛まれ、大声を上げる鶏に怯え──…
闇のなか彼らは錯誤した。足をメスに刺され、判官に怒鳴られたと。
犬と鶏。無銘と自分。寓話と比べると配役は逆のようだった。
運命も。武装錬金も。位相はほぼ入れ替わっている。
自動人形は判官のようで
キドニーダガーはメスのようで。
だからこそ、いつも運命を感じていて──…
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【ヤーコプ=グリム・ヴィルヘルムグリム/作】
【関 敬悟・川端豊彦/訳】
【ブレーメン市の音楽隊】より】
やがて村を逃げ出した者三匹は、ある屋敷のところを通りかかると、門の上に雄鶏がとまっていて、精一ぱいの声で鳴
いていた。「骨の髄までしみわたるような声だね」と、驢馬が言った、「どうしたってんだい」──「上天気だよって知らせたの
さ」と雄鶏が言った、「うれしい聖母マリアさまのお祭りで、マリアさまがキリスト坊ちゃまのかわいらしい肌着を洗濯なすって、
そいつをかわかそうって日だからな。ところがあしたは日曜で、客が大勢来るってんで、うちのおかみさんたら情け容赦もな
く、あすは俺をスープに入れて食っちまうんだって料理女に話してたのさ。そいで今晩、おいらは首をちょん切られるのさ。
だから、鳴けるうちに、思いっきり鳴いてるってわけさ」──「何を言ってるんだ、赤毛君」と、驢馬が言った、「それよか俺た
ちと一緒に逃げた方がいいや。俺たちはブレーメンへ行くんだ。死ぬより良いこたあ、どこへ行ったってあらあな。お前さん
はいい声してる。みんなで一緒に音楽をやったら、きっと面白えもんになるぜ」と、雄鶏は、これを聞くと、そいつは面白いと
思って、四匹そろって出かけた。
【参考文献:角川文庫 「完訳 グリム童話Ⅰ さようなら魔法使いのお婆さん」】
──接続章── 「”過去は過去でなく輪廻して今”~音楽隊副長・鐶光の場合~」 完
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