「「演劇をしよう!!」(中編) (3)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「「演劇をしよう!!」(中編) (3)」(2012/09/14 (金) 18:25:06) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
パピヨン率いる演劇部の陣容はいまや最高のものとなりつつある。
抜群の運動能力を誇る秋水と斗貴子。学園一美しいと評される桜花。遅れて加入した音楽隊はさまざまな分野において
めざましい可能性を秘めている。毒島や防人といった外様連中もまた然り。
誰かがいった。とても面白い劇になるだろう。
誰もがいった。きっとそうだろう。
笑いあい気運を高める生徒達は……気付かない。
楽しい時はいつか終わる。その、逃れられない事実を。
もっとも……もし気付いたとしても彼らは気楽に笑いこう答えただろう。
「そーだよな。劇はもうすぐ終わるんだよな」
「ん? ひょっとして学園生活のコト? 考えたら卒業式までもう1年半切ってるし」
彼らはほんの僅かでも脳裏に描くべきだった。
ありえからぬ非日常の存在を。
かつて銀成学園はL・X・E創始者、Drバタフライ率いる無数の調整体の襲撃を受けあわや殲滅の憂き目にあった。
さらにその数ヶ月後、多くの生徒が鐶光のせいで胎児と化した。
ともすれば命を落としかねない境界線の上に2度も立たされながらまったく警戒するところがなかったのは、やはりまが
りなりにも「生き延びた」という安堵のせいか。
されど日常はやがて終わる。
劇の終わりとともに幕を閉じる。
ありえからぬ非日常の存在の手によって。
破滅をもたらす足音。
それを導いてくるのは皮肉にも……。
かつて学園を守り抜いた武藤カズキ。
彼の中に日常の象徴として佇む……1人の少女。
「あ! ココココ! ココだよあっきー! ココでみんな練習してるんだよ」
武藤まひろ。
彼女はただいつもの通り、親切心を発揮しただけだった。
街を歩いていたら道に迷っている者を見つけた。
目的地が自分の知っている場所だから……案内した。
たったそれだけである。もしまひろが案内しなかったとしても、非日常の存在は、その目的が銀成学園にある以上、いず
れ自ずとたどり着き、やがて結局日常を壊しただろう。
まひろはトリガーを引いた訳ではない。ただ準備万端の「軽い」引き金に触れただけである。
劇鉄が弾丸を押し出すおぞましい結末に期せずして関わってしまっただけだ。彼女自身に悪意はない。
けれど……結果だけを見れば武藤まひろは確かに。
おぞましい人物を銀成学園に招いた。招いてしまった。
そして今は体育館の近くにいる。そこには秋水を初めとする錬金戦団の面々と音楽隊がいる。
パピヨンと、ヴィクトリアも。
銀成市における戦力が総て、結集している……。
「この上ない熱気! ああ、声優時代の舞台を思い出します!」
体育館の外で手を組むのは若い女性。美人だが野暮ったい黒ブチ眼鏡をかけた”冴えない”タイプである。踵まで伸びた
黒髪は、着衣たる黒いブラウス同様ほつれと傷みがよく目立った。それでいて声は天女のように甘いから、すれ違う男子
生徒が思わず目を留めそして落胆する。桜花級を期待していたのに……ガックリうなだれる彼らはそう語っているようだ。
クライマックス=アーマード。錬金戦団、そしてザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ共通の敵であるレティクルエレメンツの
……幹部にして坂口照星を誘拐した実行犯の1人。(自らの武装錬金でアジトまで連れ去った)。
捜査本部に犯人を招くというか、軍中枢部にテロリストを招くというか。
まひろは自分がどれほど危ういコトをしているか知らぬまま、いつものように明るく笑い、もう1人に呼びかけた。
「えーと。名前忘れちゃったけどこっちだよー!!」
「うむ! いよいよ及公、パピヨンとご対面であるな!」
手招きされたのは青い銀の貴族服。衣装に見合わぬ冷たい美貌の持ち主だが2mほどある背丈や特徴的な物言いの
せいでこれまたトンチキな印象である。
リヴォルハイン=ピエムエスシーズ。鐶光をも凌ぐ、レティクルエレメンツ最新鋭のホムンクルスである。その形質は細菌
型……の集合体。バンデミックを起こせば銀成市など1時間で殲滅できる……と言われている。
彼の狙いはパピヨンの所持する『もう1つの調整体』。
かつて戦士たちと音楽隊が激しく争いあうほどに強く求めた戦利品……その正体は黄色い核鉄。
霊魂の承継、ひらたくいえば前の使用者の霊魂を受け継げるDrバタフライの遺産がなぜ必要なのか。
それはまだ分からない。
とにかくクライマックスは冥王星の、リヴォルハインは土星の、幹部えある。
そんな彼らがいま……秋水たちのいる体育館へ向かっている。
先導するまひろの後ろで二者二様の妖気が徐々にだが膨れ上がっていく──…
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: