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「大長編イカ娘 栄子と山の侵略者 5」(2012/09/05 (水) 19:20:08) の最新版変更点
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「噛んで」
早苗が言った。
「痛くしてくれていいのよ。強く噛んで」
早苗の荒い息が顔にかかって、狼娘は思わず後ずさった。
「協力してくれるのはうれしいワンが、どういう風の吹きまわしだワン?」
「わたし、好きな人に痛くされると興奮するの」
直球の告白だった。狼娘は茂みの奥まで飛ぶように逃げた。
「す、好きな人とはどういうことだワン?」
「こいつはゲテモノ好きなんだよ。イカ娘も何回も被害にあってる」
栄子が説明した。
「イカ娘から、狼娘に浮気したのか?」
「とんでもない、両方愛するわよ。
わたしの愛は無限大なんだから!」
「報われないのにな……。
ま、そういうことだ。狼娘。
こいつでよければ噛みつくなりなんなりすればいい。
もっとも、ただ噛みついただけで何が変わるかというと、難しいだろうけどな」
「むっ、わたしの噛みつきはすごいワンよ!
ただ、なんか噛みついたら負けのような気がするのは何故だワン……」
「噛んで!」早苗が迫った。
「どうするんだ」栄子がニヤニヤした。
「なんの話でゲソ?」イカ娘がやってきた。
「ええい、ままよ……!」
かぷっ。
という音を立てて、早苗の二の腕に狼娘の牙が食い込んだ。
そして。
狼娘が倒れた。
「おい! なんで噛みついたほうが倒れるんだよ!」
「気絶してるでゲソ! 千鶴を呼んだほうがいいんじゃなイカ?」
狼娘の脈を取っていたイカ娘の肩を、早苗がポンポンと叩いた。
「心配はいらないわ……だワン」
「し、心配してるんじゃないでゲソ!
目の前で死なれたら目覚めが悪いだけじゃなイカ!」
「落ち着け、イカ娘。
今こいつ『だワン』と言ったぞ……?」
イカ娘は早苗のほうに向き直った。
見たところ、今までの早苗となにも変わりない。だが、その目の光になにか違和感があった。
「変態オーラが欠けているでゲソ! お主は本当に早苗でゲソか?」
「ひと目で見破るとはさすがわがライバルだワン」
「ライバルになった覚えはないでゲソ。
でも、その物言い、お主は狼娘でゲソね!」
「その通り!
わたしの牙にかかった者は肉体を乗っ取られてしまうのだワン。
狼男伝説のモチーフになった能力だワンよ!」
「ひいいっ」
「あ、渚ちゃん」
「これは恐ろしいです! 狼男伝説が今に蘇る!
人類は一人残らず狼娘になってしまうのかもしれない……!」
「あ、それはないだワン」
早苗=狼娘が首を振った。
「わたしの牙(上前歯)が刺さっている状態じゃないと操れないだワン。
だから乗っ取れるのは同時に2個体までだワン」
「し、しかしそれでも恐ろしいですよ!
例えば核ミサイルの発射権限を持つ人が操られたらどんなことになるか……。
そこまでいかなくても、煽動に撹乱にと便利な能力であることは間違いありません!」
「お主はなかなかいいことをいうだワン」
早苗=狼娘が大きくうなずいた。
「このように、わたしの能力は人間をはるかに超越したものだワン。
触手? 発光? はん。
その程度、人間の技術の力でも可能な程度の能力だワン。敵ではないワン」
「ぬぬぬ……、
わたしだって、わたしだって、
触手を体内に侵食させ他人を操るぐらいできるでゲソー!」
イカ娘の触手が栄子に絡みついた。体内に潜り込むため、口の中へと触手が走る。
「おい待てなんでわたしがモガー!」
閃光が3つ、走った。
少なくともイカ娘にはそのように見えた。
実際にはもっと多かったのだろう。イカ娘の触手は10本ことごとく、その一瞬で切り捨てられていたのだから。
相沢千鶴の手刀はそのほどまでに速く、威力もまた速さに見合ったものである。
「イカ娘ちゃん。これはちょっとやり過ぎじゃないかしら?」
「ご、ごめんなさいでゲソ」
10本の触手を失ったイカ娘は、空気の抜けた風船のようにその場に崩れ落ち、土下座の体制をとった。
「な、何ごとだワン! 今何をしたのだワン!」
「狼娘ちゃんも」
千鶴の動きが、またどの目にも捉えられない領域へと写った。
気がついた狼娘は、「狼娘自身」の体の中にいて、目の前に千鶴の手刀があった。
「さ、早苗から牙を抜いたんだワンね! いつの間に……」
「はい、それより先にいうことはないかしら?」
「ご、ごめんなさいだワン」
「はい、牙は返してあげるわ」
千鶴は手刀を引っ込めると、早苗の二の腕に刺さっていた牙をかちりと狼娘にはめた。
(差し歯方式……?)
「栄子ちゃんも、ちょっと煽りすぎじゃなかった?」
「か、勘弁して下さい」
「冗談よ。さあ、みんなでお肉を食べましょう」
千鶴が踵を返すと、緊張の糸が切れたように、全員の体が脱力した。
特に初めて『千鶴』を見た狼娘のショックは大きかった。
「な、なんなんだワン、あやつは……」
「千鶴は怪物でゲソ。注意するがいいでゲソ」
イカ娘はそういうと、千鶴のあとを追った。栄子と渚もイカ娘に続き、最後に狼娘が一人、動けずにいた。
(ケタ違いの能力だワン……人間はここまで来れるものだワンか)
そのとき、狼娘の脳裏に、ある考えがちらついた。
(相沢千鶴に噛みつければ……)
「噛んで」
早苗が言った。
「痛くしてくれていいのよ。強く噛んで」
早苗の荒い息が顔にかかって、狼娘は思わず後ずさった。
「協力してくれるのはうれしいワンが、どういう風の吹きまわしだワン?」
「わたし、好きな人に痛くされると興奮するの」
直球の告白だった。狼娘は茂みの奥まで飛ぶように逃げた。
「す、好きな人とはどういうことだワン?」
「こいつはゲテモノ好きなんだよ。イカ娘も何回も被害にあってる」
栄子が説明した。
「イカ娘から、狼娘に浮気したのか?」
「とんでもない、両方愛するわよ。
わたしの愛は無限大なんだから!」
「報われないのにな……。
ま、そういうことだ。狼娘。
こいつでよければ噛みつくなりなんなりすればいい。
もっとも、ただ噛みついただけで何が変わるかというと、難しいだろうけどな」
「むっ、わたしの噛みつきはすごいワンよ!
ただ、なんか噛みついたら負けのような気がするのは何故だワン……」
「噛んで!」早苗が迫った。
「どうするんだ」栄子がニヤニヤした。
「なんの話でゲソ?」イカ娘がやってきた。
「ええい、ままよ……!」
かぷっ。
という音を立てて、早苗の二の腕に狼娘の牙が食い込んだ。
そして。
狼娘が倒れた。
「おい! なんで噛みついたほうが倒れるんだよ!」
「気絶してるでゲソ! 千鶴を呼んだほうがいいんじゃなイカ?」
狼娘の脈を取っていたイカ娘の肩を、早苗がポンポンと叩いた。
「心配はいらないわ……だワン」
「し、心配してるんじゃないでゲソ!
目の前で死なれたら目覚めが悪いだけじゃなイカ!」
「落ち着け、イカ娘。
今こいつ『だワン』と言ったぞ……?」
イカ娘は早苗のほうに向き直った。
見たところ、今までの早苗となにも変わりない。だが、その目の光になにか違和感があった。
「変態オーラが欠けているでゲソ! お主は本当に早苗でゲソか?」
「ひと目で見破るとはさすがわがライバルだワン」
「ライバルになった覚えはないでゲソ。
でも、その物言い、お主は狼娘でゲソね!」
「その通り!
わたしの牙にかかった者は肉体を乗っ取られてしまうのだワン。
狼男伝説のモチーフになった能力だワンよ!」
「ひいいっ」
「あ、渚ちゃん」
「これは恐ろしいです! 狼男伝説が今に蘇る!
人類は一人残らず狼娘になってしまうのかもしれない……!」
「あ、それはないだワン」
早苗=狼娘が首を振った。
「わたしの牙(上前歯)が刺さっている状態じゃないと操れないだワン。
だから乗っ取れるのは同時に2個体までだワン」
「し、しかしそれでも恐ろしいですよ!
例えば核ミサイルの発射権限を持つ人が操られたらどんなことになるか……。
そこまでいかなくても、煽動に撹乱にと便利な能力であることは間違いありません!」
「お主はなかなかいいことをいうだワン」
早苗=狼娘が大きくうなずいた。
「このように、わたしの能力は人間をはるかに超越したものだワン。
触手? 発光? はん。
その程度、人間の技術の力でも可能な程度の能力だワン。敵ではないワン」
「ぬぬぬ……、
わたしだって、わたしだって、
触手を体内に侵食させ他人を操るぐらいできるでゲソー!」
イカ娘の触手が栄子に絡みついた。体内に潜り込むため、口の中へと触手が走る。
「おい待てなんでわたしがモガー!」
閃光が3つ、走った。
少なくともイカ娘にはそのように見えた。
実際にはもっと多かったのだろう。イカ娘の触手は10本ことごとく、その一瞬で切り捨てられていたのだから。
相沢千鶴の手刀はそのほどまでに速く、威力もまた速さに見合ったものである。
「イカ娘ちゃん。これはちょっとやり過ぎじゃないかしら?」
「ご、ごめんなさいでゲソ」
10本の触手を失ったイカ娘は、空気の抜けた風船のようにその場に崩れ落ち、土下座の体制をとった。
「な、何ごとだワン! 今何をしたのだワン!」
「狼娘ちゃんも」
千鶴の動きが、またどの目にも捉えられない領域へと写った。
気がついた狼娘は、「狼娘自身」の体の中にいて、目の前に千鶴の手刀があった。
「さ、早苗から牙を抜いたんだワンね! いつの間に……」
「はい、それより先にいうことはないかしら?」
「ご、ごめんなさいだワン」
「はい、牙は返してあげるわ」
千鶴は手刀を引っ込めると、早苗の二の腕に刺さっていた牙をかちりと狼娘にはめた。
(差し歯方式……?)
「栄子ちゃんも、ちょっと煽りすぎじゃなかった?」
「か、勘弁して下さい」
「冗談よ。さあ、みんなでお肉を食べましょう」
千鶴が踵を返すと、緊張の糸が切れたように、全員の体が脱力した。
特に初めて『千鶴』を見た狼娘のショックは大きかった。
「な、なんなんだワン、あやつは……」
「千鶴は怪物でゲソ。注意するがいいでゲソ」
イカ娘はそういうと、千鶴のあとを追った。栄子と渚もイカ娘に続き、最後に狼娘が一人、動けずにいた。
(ケタ違いの能力だワン……人間はここまで来れるものだワンか)
そのとき、狼娘の脳裏に、ある考えがちらついた。
(相沢千鶴に噛みつければ……)
つづく
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