「上の上にいる上」(2007/02/11 (日) 14:36:52) の最新版変更点
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“神”という単語を聞けば、おそらく十人中十人が(実在を信じるかはともかくとして)
いわゆる“最高の存在”を連想するだろう。
ところが「上には上がいる」という言葉が象徴するように、神もまた最高ではない。
なぜなら、宇宙には神をも超越する存在“界王”がいるからだ。
界王星。蛇の道終着点に位置する、あの世ともこの世ともつかぬ領域。
体積は小さいが、重力はなんと地球の十倍。
「ほれ、出たぞ~い」
淡い黄土色をした液体が、あちこちにばら撒かれる。
「それっ、ウェーブじゃっ!」
液体の軌道が右往左往し、心電図さながらの波を描く。
「はいーっ! 超スピード!」
とてつもない勢いで雑草に落ちていく液体。まもなく噴射が終わる。
丸出しになっていた陰茎をしまい、声の主が一息つく。
「ふぅ……すっきりした」
背は低く、体格は太め。丸いサングラスに、触覚がついた奇妙な帽子。さらにはこれま
た奇妙なマークが刻印された中華服。加えて余りにも下らない遊びに興じていた男。正真
正銘、界王その人である。
彼が行っていたのは小便アート。現在ちょっとしたマイブームとなっている。
「どうじゃった、今のは?」
「ウッホッホ、ウッホッホ」
「そうかそうか~!」
ペットである猿、バブルスに評価を求め大喜びする界王。
偉人が考えていることは、どうも凡人には理解しがたいところがあるようだ。
ちょうどその時、界王星に珍しく来客があった。
「よぉっ、界王様、バブルス!」
軽快な挨拶が飛ぶ。
「ご、悟空っ! いったいどこから現れたんじゃ!?」
来客は孫悟空であった。ナメック星で超サイヤ人に目覚め、悪の根フリーザを打ち倒し
た張本人。
「あぁ、ちょっと瞬間移動でな」
「瞬間移動……? また便利な技を覚えたもんじゃのう。で、何しに来たんじゃ?」
「え、あぁ、ほらフリーザとの戦いじゃ、ずいぶん界王様に世話になったからさ。お礼に
来たんだ」
と、五百ゼニーで購入した菓子折りを手渡す悟空。
「ほう、わざわざすまんな」
「あ、あと、これも」
菓子折りの上に、ぽんと乗せられるビデオテープ。タイトルは『爆笑必至!お笑い傑作
選』とある。
「これは?」
「あぁ、初め何を持っていくか迷ってちゃってさ。ヤムチャとかに相談したら、界王様は
ギャグが好きだからこういうのがいいって持たされたんだ。っつっても、オラはどうもよ
く分からねぇけど。まぁ、せっかくだから暇があったら見てくれよ」
「ふむ……。ギャグの天才であるわしにとっては“釈迦に説法”のような土産じゃが、暇
があったら見ておこう」
こうして悟空は帰っていった。
さて、“暇があったら”どころか暇だらけの界王。意気揚々と自宅のビデオデッキにテ
ープを入れる。
悟空にはああいったが、内心は期待に満ち溢れていた。
一週間後、再び界王星を訪れる悟空。
界王はいつもと変わらないのんきな生活を送っていた。──ある一ヶ所を除いて。
「あれっ! 界王様、どうしちまったんだ?!」
悟空はすぐに気づいた。彼の頭上に、金色に光る輪っかが浮かんでいることに。
「えっ?! い、いや……ちょっと、ね……」
汗をかき、口ごもる界王。まさかビデオで笑い死にしたなどと、口が裂けてもいえるも
のか。
お わ り
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