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「鬼と人のワルツ43-2」(2007/02/11 (日) 14:15:42) の最新版変更点
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その夜は残暑が厳い夜で、眠れない飲茶は三度目のため息をついた。
脳裏に昼間の事件がこびりついて離れない。
諸々の感情が浮かんでは消えていく。
「暑いなぁ」
もう一度ため息をついて部屋の窓を開けた。
少しばかり風が吹き込んできたが1LDKの部屋は一向に涼しくならない。
クーラーぐらいつければいいのに。
うんざりした気分で電灯の紐を引いた。
豆球の発する熱でも減らしたいと思ったのだ。
無論ただの気休めである。
完全に電気の消えた部屋で、電灯のスイッチの先についたプラスチックの重りが浮かんで見えた。
何とはなしにファイティングポーズを取り、夜光塗料でぼんやり光るそれに拳を降った。
狼牙風々・・・
紐が揺れてまたもとの位置に戻る。
重力とは偉大なものだ。
もう一度繰り返す。
三発目のパンチのとき、紐が指の間に挟まって電灯が派手に揺れた。
一瞬ビクリとしたが、電灯は何も無かったかのように元の位置に収まり、明かりがともった。
安堵のため息をついた。
よかった、こわれなくて
そう思って自分の拳を見た。
重力も、紐の張力も、切なくなるほど偉大だった。
もう一度ため息をついてベッドに仰向けに倒れこんだ。
顔のすぐ隣に名刺があった。
手にとって明かりにかざしてみる。
明かりがまぶしくてよく字が良く見えない。
ごろんと転がりうつ伏せになってみた。今度は読める。
しばらく眺めて脇に置いた。
電灯はまだ少し揺れている。
いつの間にか窓から涼しい風が吹き込んでいた。
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