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「強くなるのは、なれるのは その2 第一話」(2010/06/30 (水) 17:56:42) の最新版変更点
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最大トーナメントが終わって、加藤清澄は悩んでいた。
自分は、独歩以外なら誰であろうと負ける気はしなかった。刃牙も克巳もブッ倒してやる
つもりだった。
が、結果はどうだ。克巳には格の差を見せ付けられ、その克巳も烈に完敗、その烈は
刃牙に敗北。自分はと言うと、一回戦負け未満と言っていい惨めな負けっぷり。
聞くところによると、昻昇も似たような悩みを抱えたらしい。で、そんな自分に
喝を入れるべく、まだ見ぬ達人に試合を申し込んだという。そしてその結果、
見事に立ち直って発奮し、今の自分は烈より強いと息巻いているとか。
[[強くなるのは、なれるのは>http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/733.html]]
「……」
光成の屋敷。加藤は、自分も光成から試合相手を紹介してもらおうと思ってやってきた。
そしてとりあえず、昻昇と試合をしたという柔術家の資料を見せてもらったら、絶句した。
「……昻昇のヤロウ……」
「羨ましい、とか思っておるか?」
加藤と向かい合っている光成は、資料を覗き込むようにしている加藤を、ニヤニヤして
見ている。
「刃牙から聞いたが、本物の彼女はその資料以上の人物だったとか。顔よしスタイルよし
物腰丁寧、見ての通りのメイドさん、しかもコスプレではなく本職」
「……(ごくり)」
「お前さんも、そんな人を紹介して欲しいというのか? まあ女性格闘家の資料
というのもなくはないが、流石にそう多くはないぞ。で、好みのタイプは?」
「そ、そうだな。やっぱり、ナヨナヨした奴よりは気が強い女がいいな。こう、キリッとした
顔立ちで目元鋭く、それでいて時々女の子らしさも見せ……って、ちがああぁぁうっ!」
加藤は、柔術家の資料を畳に叩き付けて吼えた。
「なんでそんな話になってんだ! 大体、アンタは本来そういう人じゃねえだろ!」
「いや、今、その資料を見てたお前さんの表情から察してじゃな。ワシとて、年がら年中
格闘家のことばかり考えておるわけではないから」
「だからって、他人のお見合いの仲立ちが最高の趣味だ、と断言するオバハンみたいな
ことホザいてんじゃねえっ!」
「さてさて。え~、キリッとした顔立ちの、と」
「人の話を聞けええええぇぇぇぇ! ……よーしわかった、だったら女を紹介してもらおう!
但し、『刃牙みたいな女』だ! そんなのがいたら紹介しろ! してみやがれ!」
どーだムリだろへへんっ、と加藤が胸を張ったのも束の間、光成は分厚い資料ファイルの
中から、ひと束を選んで取り出した。
「あったあった。お前さんの注文通りの女の子。キリッとした顔立ちで目元鋭く、時々
女の子らしさを見せる」
「ジジイっ! だからそれは、」
「そしてこの子は、刃牙の得意技を刃牙以上の強さで使える。というか刃牙なんぞ
比較にならん。遥かに越えておる」
加藤の目が、点になった。
「……え?」
「無論、この技に関しては刃牙以下である独歩や克巳など論外じゃな。
二人が十年修行しても、この子の足元にも及ぶまい」
資料を見ながらスラスラと語る光成の言葉を、加藤は信じ難い思いで耳に入れていた。
「な、なあ。それ、料理の腕前とかそういうオチじゃねえだろうな?」
「もちろん。この技をもって、この子はとてつもない強さを振るっておる」
「刃牙以上の、か」
「遥かに越える、じゃ。それでもこの子は宿敵に勝てんということで、
現在は山にこもって修行しておるとか」
刃牙よりも強いのに。宿敵には勝てないから。山にこもって修行中?
……それだ!
「ジジイ! いや、あの、ご老公! その子を紹介してくれ! できれば
試合をしたい! おっと、今、その子についてこれ以上の詳しい説明はしないでくれ。
事前知識無し、情報のハンデなしでぶつかってみたい」
「連絡は取ってやってもいいが、お前さん理解しておるのか? 刃牙よりも、
克巳よりも独歩よりも強いんじゃぞ? まあ、総合力では逆転するかもしれんが、
この子の得意技に限って言えば、その三人が束になっても勝てん」
「そういう強さの、女の子なんだろ?」
加藤がニヤリと笑みを浮かべた。
刃牙よりも強い相手。そんな奴と試合をする。考えただけで、ほら、肩が腕が
足が震える。怖い。だが怖いだけではない。これは、武者震いも含めての震えだ。
「ヘタなプロレスラーなんざ腕相撲で負かせる刃牙。それを超える強さの女の子だ。
つまり腕力の差を完全に制することのできる、とんでもない技の使い手に違いない。
だったら勝てずとも、この身で味わうだけで、きっと何か掴めるさ」
「その結果、大ケガをしてもか」
「それぐらいの技でねえと、学ぶ価値もねえよ」
「ふむ、なるほど。それは道理じゃな」
光成がようやく、真面目な顔つきになった。
「よかろう、先方にはワシから連絡を入れておく。技を教わるのではなく、
試合の申し込みでいいんじゃな?」
「おうよ!」
数日後、とある山の奥深く。
加藤は、ひいひい言いながら暑い山道を登っていた。
だがその胸の中は、照りつける太陽以上に熱くなっている。
『待ってろよぉ~!』
光成は件の女の子に連絡をしたのだが、試合の申し込みも技の教授も
断られたのだ。自分の修行が忙しいからと。そして加藤のことを説明したところ、
そんな相手では練習相手にすらならないから時間のムダ、と言い切られたとか。
そこまで言われて平気でいられる加藤ではない。だったらケンカを売りに行ってやる、
いや、そいつが俺にケンカを売ったんだ! ということで今、
山道を登っているわけである。
「ふうっ、だいぶ奥まで来たな。確かこの当たりのはずだが……んっ?」
木々の途切れた岩場に出てきた。正面には高いガケがあって、辺りには巨岩が
ゴロゴロしているも、それなりに平地もある。修行の場としてはうってつけだ。
が、異様だ。あっちこっちに転がっている岩が、どう考えても自然にこうはならない
だろうという砕け散り方をしている。
見上げれば、ガケの中腹が不自然に抉れていたりする。足元を見れば、
ところどころ溝のようなものが、これまた不自然に地面に刻まれている。
「ち、ちょっと待て。まさかこれ、修行の跡なのか?」
いくらなんでも、人間が素手でできることではない。
だが、光成の情報網に入っている以上、武器や兵器を使うはずはない。
ということは、素手でこんなことを? どんなバケモノだ? 一体どんな技だ?
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