「ドラえもん のび太の超機神大戦 第91話「前夜・1」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ドラえもん のび太の超機神大戦 第91話「前夜・1」」(2007/02/07 (水) 23:50:29) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
第九十一話「前夜・1」
「はい、お手」
少女がにこにこ笑いながら目の前の真っ白い犬に手を差し出す。
彼女の名は芙蓉楓。稟とプリムラの同居人にして、学園三大プリンセスの一人と称される美少女。彼女のためなら
命をも捨てる狂信者たちから女神の如く崇められる存在である。
そんな彼女に笑いかけられれば、大概の雄生命体は陥落することだろう。しかしながら、その犬―――ペコは違った。
「くぅーん・・・」
素っ気無く鳴いて、ぷいっとそっぽを向いてしまう。普通の人間の前ではとりあえず普通の犬のように振舞っているが、
お手などという人間に媚びるような行為はもっての他と言わんばかりの態度である。
「うーん、ペコちゃんは人見知りする子なんでしょうか・・・」
楓は苦笑しつつペコの頭を撫でた。
長らく留守にしていた稟とプリムラが帰って来て、さらには異世界へと戻ったはずののび太やドラえもんまでいたことに
驚きつつも喜んでいた彼女は、落ち着いた所で足元にいた愛らしい犬に気付いた。
犬好きでもある彼女は早速スキンシップを図ろうとしたのであるが、結果は今一つであった。
「仕方ない。ペコは、とても辛い過去を持っているの・・・」
プリムラが語り始めた。
「親と死に別れ、心無い人に生き埋めにされそうになって、何とか逃げ出すも苛酷な野良生活、泥まみれのぼろぼろの
身体を引き摺り、のび太や青玉に拾われるまで明日をも知れぬ日々を送っていたの・・・」
まるで見てきたかのように暗いバックストーリーを語る。しかも、結構事実に近かった。
それを聞いた楓は目を潤ませてペコを抱き上げ、頬ずりする。
「そんな酷い目にあったんですね、可哀想に・・・よしよし、怖くないですよ。ここにはあなたをいじめる人なんて
どこにもいませんから」
「わん!?わんわんわん!わんわん!」
それに反論するかのように激しく鳴いた。いじめる人なら今ここにいる。具体的に言うと、ツインテールの耳長娘だ。
多分そう言っているのだろう。
「なはは、形無しだなあ、ん?」
テーブルに座ってラーメンを啜っていたUSDマンが愉快そうに笑った。
「・・・あんたは何故に堂々とウチでいきなりラーメンを食ってるんだ?」
稟がそう聞くと、USDマンはふんと鼻を鳴らした。
「いたらわりいか」
堂々と言い返されると、言葉も出ない。
「いや、悪くはないけどさ・・・」
「いいんですよ稟くん。稟くんやのび太くんのお友達なんでしょう?」
「ほら見ろ。可愛いこちゃんもこう言ってくれてるぞ」
楓のご好意に甘えまくるUSDマン。これくらい図太くないと、最強などと自認できないのかもなあ・・・と、のび太は
変な所で感心した。
そんな稟たちの様子を見守りつつ、のび太とドラえもんはそっと家を出た。
こんな日常も、今夜が最後かもしれない―――そう思っていた。
シュウとの最終決戦―――決行は、明日。それが皆で話し合った結果だった。
ならば今夜は、今夜だけは、騒がしくも暖かい、日常を過ごそう。
誰もがそう思い、それを実行することにした。
それぞれの最後の夜。みんなはどう過ごしているのか。
のび太とドラえもんは、魔王の家の前に立った。中からはドンチャン騒ぎの音が聞こえてくる。
「やってるみたいだね・・・」
家に入っていくと、まさに酒池肉林。メンバーは神王と魔王のおっさんコンビを筆頭にアスランとキラ、リルルを筆頭と
したメカトピアの面子、ジャイアン、スネ夫、しずかであった。
ちなみにジャイアンとスネ夫はすでに酔いつぶれている。子供の癖に、飲みすぎだ。
二人に気付いたアスランが声をかけてくる。
「おお、のび太にドラえもんも来たか!ささ、遠慮するな。自分の家だと思ってくつろぐしかないじゃないか!」
「アスランの家じゃないくせに・・・」
当のアスランはシャツとトランクス一丁で、地べたに胡坐をかいて座っていた。
他人の家だというのにリラックスし過ぎだ。
「いいんだよ、のび太ちゃん。このくらい気軽にしてくれた方が我々も堅苦しくなくていいからね」
「おうとも。無礼講で行こうぜ」
「マジで?じゃあ俺もおじさんたちのこと神ちゃんにまー坊呼ばわりでいい?」
「「いいともいいとも!」」
二人とも王様のくせして、いいのかそれで。相変わらずの二人に、呆れ返るのび太だった。
それを尻目にアスランは焼酎をぐびぐび飲み干しながら、ごま塩らしきものが振られた白くて三角の食べ物を口に入れた。
「いやー、美味いな、この饅頭!」
「饅頭って・・・これ、おにぎりじゃないの?」
キラが首を捻る。目の前にあるのは、どう見てもおにぎりだ。
「固いことを言うな。饅頭って言ってるんだから、饅頭ってことにしとけ。MUSASHIスタッフに怒られるぞ」
「うーん・・・」
釈然としないキラであった。
「けど、こうして騒いでいていいのかしら?明日には、最後の戦いが始まるっていうのに・・・」
リルルが不安そうに言うと、アスランは胸をそびやかした。
「心配するな、リルルよ。俺たちは次は絶対に負けない・・・何故ならば・・・」
いつになく真剣なアスランを、皆固唾を呑んで見守った。
「何故ならば・・・負けられない理由があるからだ!」
「・・・・・・・・・・・・どういう理由?」
「・・・・・・・・・・・・すまん、言ってみただけだ」
全員ずっこけた。
「しかし、負けられないという気持ちは本物だとも!だからどうか応援よろしく、中華料理屋の息子ケンに病弱な勝治、
そしてエセ外人のロイドさん!」
「誰のことを言ってるんだ、貴様」
「ケンがディアッカ、何故なら炒飯だから。勝治はニコル。何か死にそうだから。エセ外人はイザークだ。これには
特に理由はない。余り物ということで一つ」
「ちっ・・・全く、緊張感のない奴だ。そんなことで明日の戦いに勝てると思ってるのか?」
イザークはそっぽを向いてしまった。
「大丈夫だ。俺と∞ジャスティスは数々の試練を共に歩んできた・・・共に滝に打たれ、共に夕日の河原でタイヤを引いて
走り、共にシャドーボクシングに精を出した・・・」
「どれも意味ないしうさんくさいよ」
律儀にツッコミを入れるキラ。しかしそれを無視してアスランの話は続く。
「そして第一話にして悪の首領であり実の父と決戦!昨日までの俺では勝てなかったが俺は一秒ごとに成長し強くなる
男だから何とか勝てたのであった!ちなみに母さんには父さんが悪の首領なのはナイショだぞ!」
「なに、そのグダグダなストーリーは・・・」
さすがのキラも呆れ返るのであった。
「てゆーかもう、この話自体やめようよ。MUSASHIならともかく、カ○トボーグの話なんて誰が分かるのさ」
「・・・そうだな。我ながらやってて虚しくなってきた」
アスランはコップに焼酎を入れなおし、またちびりちびりやり始めた。
「もう・・・相変わらずだよね、アスランは。ねえ、しずかちゃん」
「え?ええ、そうね・・・」
しずかはどことなくぼんやりしているようだった。
「・・・アザミのこと、考えてたの?」
「それもあるわ。あと・・絵本って人」
「絵本さん・・・あの人が、どうかしたの?」
「アザミがどこで死んだのかを聞いてきたわ。場所を教えたら、今からそこに行ってくるって・・・どういうつもり
なのかしら・・・」
「・・・・・・」
確かに気になるところだったが、気にしてもしょうがないことだった。
その後も未だに宴会を続ける一同(主にアスランとおっさんコンビ)に呆れて、のび太とドラえもんは魔王宅を辞した
のだった。
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: