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「遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 終章3「其処に物語(ロマン)は確かに在った」」(2010/01/13 (水) 20:17:05) の最新版変更点
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修学旅行が終わり、遊戯達はまた学校に通い始めていた。
「―――そしてオレと星女神の巫女・ミーシャが絶体絶命の危機に陥ったその時、颯爽と救世主は現れた!その通り、
彼こそは星女神の勇者・オリオン!そしてもう一人は何を隠そう我が親友・遊戯!」
「はいはい、もう百回は聞いたよ…」
遊戯と城之内の友人である本田は、ウンザリだといわんばかりに両手で耳を塞ぐ。
「オカルト的な事にはオレだって何度も巻き込まれたから、タイムスリップしたとかいう話を疑うわけじゃねーけど、
ここ最近、 お前それしか話してねーじゃんか!」
「そーよねー。ほんともう、耳にタコってカンジ」
仲間内の紅一点・杏子も、ふふんと城之内を嘲笑う。
「そんな事ないよ。ボクは何度聞いてもワクワクするけどなー」
「うう…獏良ぁ~~~!本当のダチ公はお前だけだぁ~~~!」
漢泣きしながらちょっと電波入ってる友人・獏良に縋り付く城之内。暑苦しい男だった。
「ふふ、城之内くんったら…」
(ははは…また、いつもの毎日が戻ってきたってカンジだな)
遊戯、そして闇遊戯は、そんな光景を微笑ましく見つめるのだった。
海馬はというと、学校なんぞ目もくれず、本業である海馬コーポレーション社長として仕事に精を出していた。
海馬とて(信じられないかもしれないが)生身の人間である以上、休憩くらいする。
その時間を利用して、彼はとある本を読んでいた。
「あれ?兄サマ、何を読んでるのさ」
「モクバか…何、少々興味深い本だからな」
海馬にとって唯一の肉親であり、ただ一人心を許す存在である海馬モクバ。海馬は彼に、手にした本を見せる。
「<カイバセイア>…?聞いた事ないなー」
「まあ、少し読んでみろ」
受け取ったモクバは、最初こそいまいちピンと来ない様子で本を捲っていたが、次第にその瞳が輝きを増し、文字を
追うスピードが上がる。
「うっわー…これ、すっげー面白い!なんかこの<白龍皇帝>ってヤツ、ちょっと兄サマに似ててかっこいいしさ!
名前まで<カイバ>だし!」
「フン。そうか」
どことなく嬉しそうに海馬は笑い、部屋の一角に目を向ける。
そこには、例の白龍マスクが誇らしげに飾られていた。
(海馬ランドの次のアトラクションは決まりだな…)
<正義の味方・カイバーマン>を主役としたヒーローショーは、チビっ子の間で絶大な人気を博したそうな。
―――さて。
ここから先は、神話を生きた者達のそれからの人生―――
奴隷部隊―――彼等が巻き起こした戦乱から、早くも数年の月日が流れていた。
「今思えば、まるで夢のような出来事だったな…」
かつて<紫眼の狼>そして<白龍皇帝>の副官を務めたシリウスは、懐かしむように目を細めた。
「そうだな…けれど」
彼と立場を同じくするオルフは、力強く言った。
「あれは、素晴らしい夢だった。それを見せてくれただけで、私は閣下と皇帝様に感謝している」
「そうか…」
シリウスも、にやりと笑う。
「私もだ。そして…こいつらもな」
後ろを振り向くと、そこには随分と数を減らしてしまったが、奴隷部隊の仲間達がいた。
「―――さて!もうすぐ鉄器の国に着く。そこで我らの新天地を探すのだ!」
おおー!と元気のいい声が返ってくる。
苦しい旅を続けてきた彼らだが、誰一人として弱音など吐いたりしなかった。
奴隷部隊から離れていった者、死んでいった者も多いが、彼らとて、最後まで己の意志で、そのように生きた。
彼らの闘いは、世界に変革をもたらすことはできなかったが―――奴隷達に、前を向いて歩くことを教えた。
もう誰も、いじけた瞳をしていない。澱んでいた彼らの心には、確かに風が吹いたのだ。
―――その後の奴隷部隊については、詳細は不明である。無事に新天地に辿り着けたのかもしれないし、或いは荒野
で彷徨った果てに野垂れ死んだのかもしれない。
だが、少なくとも―――彼らは人として生きた。人としての自由を求めて闘い、人としての命を紡いだ。
それは誰にも穢されざる、彼らの生きた証―――
アルカディアでは、国王レオンティウスの結婚式が盛大に行われていた。
相手は、というと。
「おお…何という美しい花嫁か…」
「まるで、女神の様だ…」
「あんな綺麗な人、ほんとにいるもんなんだな…」
「素敵ね…憧れちゃう」
そんな民衆に対して、花嫁は見た目華やかな笑みを浮かべて手を振りつつ、小声でレオンティウスに囁く。
「ははははは、見ろレオンティウス。皆の者が私の見てくれに騙されておるぞ」
「…どうしてこうなった…」
レオンティウスはこめかみをピクピクさせながら、呻くように呟く。
この花嫁、言うまでもなくアレクサンドラである。
「確かに。どういう経緯を辿ってこうなったのだろうな。私にはさっぱり分からん」
「威張って言うな、脳筋女め」
「まあアレだ。私達に関してはいいオチがつかんから、とりあえず結婚させてみましたという思惑が垣間見える」
「身も蓋もないな…」
嘆息するレオンティウスであった。
「ところでレオンティウス。お前の妹…ミーシャとかいったか。確か、あの色男と結婚したんだったな」
「ああ。いざ挙式という段になって、エレフが<やはり納得いかん!>と言い出してな。あの時は大変だった」
レオンティウスがその時の事を思い出して、苦笑する。
「全く、あんなに可愛い義弟が出来るというのに、エレフは何が不満なんだ!」
―――彼のアノ趣味は、今なお現役バリバリである。
「…それはともかく、今では子供も生まれて平穏無事に暮らしておるそうではないか。よかったよかった」
「ああ。私もほっとしているよ」
「やはり可愛い妹の事か…ふふ。お前も立派にシスコンよなあ」
そんな事をのたまいつつ、アレクサンドラは思い出したように言う。
「そういえば、生まれた娘はお前が名付け親になったんだったな」
「そうだとも」
レオンティウスは、笑って胸を張った。
「我が母上のように立派な女性になるようにと、願いを込めてな」
「ふん、マザコンめ」
憎まれ口を叩きながらも、アレクサンドラは屈託なく笑っていた。
―――その後、レオンティウスは勇猛果敢な王として雷名を轟かせ、アレクサンドラは夫と並び戦場を駆ける戦乙女
として、皆から尊敬される王妃になったという。
何だかんだで、二人は仲良くやっているようだった。
―――アルカディア領のとある街。
広場では、二人の吟遊詩人が軽やかに竪琴を奏で、高らかに歌っている。
まだ年若い兄妹と思しき二人だったが、その技量は一流の詩人と比べても決して遜色はない。
観客は皆、彼等の詠う物語に聴き入っていた。
その内容は主に<白龍皇帝>と呼ばれる英傑を詠ったものだった。
彼の歩んだ軌跡、成し遂げた偉業。その破綻しているとしか思えない、それでいてどこか魅力的な人格に至るまで、
事細かに彼等は語り、詠う。
やがて物語は終わりを告げ、観客達はいくらかのおひねりを詩人の兄妹に手渡して去っていく。
二人が荷物をまとめ、立ち去ろうとすると、服の裾を小さな手が引っ張っていた。
「ねえ、おにいちゃん、おねえちゃん。それから、オオカミさんとこーてー様はどうなったの?」
それは、幼い少女だった。ふわふわした金色の髪に、神秘的な色合いの紫眼。まるで天使のように愛らしい少女。
彼女は笑顔で問いかける。
「二人が、おともだちといっしょにわるい神様をやっつけたんだよね。ねっ?」
詩人の兄妹は、苦笑しながら答えた。
「さあ、どうなったのかな…もう昔の話だから」
「そうね。もう誰も忘れちゃったの」
「ええ~。そんなのずるいよぉ」
「はは…さあ、もうお帰り。父さんと母さんが待っているだろう?」
「はーい…」
渋々といった様子で、少女は去っていく。残された詩人の兄妹は、顔を見合せて笑う。
「ソロル…本当はね、あの頃の事は今でもよく覚えてるよ」
「ええ。私もよ、お兄様」
そう。何もかも印象深く覚えている。思い出すまでもなく、ずっと想っている。
<紫眼の狼>と<白龍皇帝>の強さと、優しさを。
二人は、信じているのだ。
どこか遠い遠い空、白龍の翼は今なお力強く煌いているのだと―――
―――紫眼の少女が街中をぽてぽて歩いていると、前方にこちらに向けて手を振る男の姿があった。
「イサドラ。ここにいたのか、探したぞ」
「あ、おじさま!」
元気よく駆け寄り、その胸元に飛びつく。男は少女の金の髪をくしゃくしゃと撫でた。
銀髪に紫のメッシュ。少女と同じ紫眼。
けれどその面立ちは穏やかで、かつて<紫眼の狼>と呼ばれた険しさなど何処にもない。
ただ優しい笑顔で、姪に当たる少女を抱きしめていた。
「今日は皆で出かける約束だったろう?勝手に出歩いて、お父さんとお母さんが怒ってたぞ」
「ええ~…おじさまは、イサドラの味方だよね?いっしょにごめんなさいしてくれるよね?」
「ああ、味方だ」
「わーい!」
「しかし、味方だからこそ甘やかさない!」
「えーん!」
ころころ表情を変える姪っ子に苦笑しつつ、男―――エレフは、イサドラを肩車する。
「ほら、行くよ。二人はもう向こうで待ってる」
「うん!」
―――二人が街外れの丘に辿り着く頃には、もう夕暮れ。西の空が赤く輝いていた。
「きれい…」
「イサドラは、夕焼けが好きかい?」
「うん、とってもすてき!」
「そうか」
エレフは、微笑む。
「それはよかったな」
「おじさまも、好きでしょ?」
「ああ…」
少しだけ言葉に詰まり、けれど答えた。
「夕焼けは、綺麗だから好きだ」
その時だった。
「おーい、エレフ!おせーぞ!」
「イサドラも何処をほっつき歩いてたの、もう!お母さんの鉄拳が火を噴くわよ!」
丘の麓で、二人が声を張り上げる。
オリオンとミーシャ―――笑えるくらいに、あの頃と変わっていない。
変った所といえば夫婦になって、子供…イサドラが生まれた事くらいだ。
「ごめんなさーい…」
「ったくもう。子供一人で出歩いてたら、危ねーだろ。心配かけさせんなよ」
叱りながらも、オリオンとミーシャは優しく笑っていた。
それはただ、ありふれた、ごく普通の家族の姿。
「じゃ、全員揃った所で、行くか」
「え、どこいくの?」
「そうか。イサドラは、ここに来るのは初めてだったな」
「うん」
「そうだったか…いいモノがあるからな、驚くなよ?」
不思議そうに首を傾げるイサドラに、オリオンはそう答える。
「ねえねえ、いいモノって何なの?おいしいもの?」
「がっつくな。食いモンじゃねーよ」
「着いてからのお楽しみよ」
いいモノと聞いて目を輝かせるイサドラを軽くかわしつつ、四人は丘を登っていく。
「ねー、おじさまー。まだかなー?」
「もうすぐだ…ほら。あれを見なさい」
「ん…?」
夕陽に照らされた、丘の頂上。
そこには、三体の石像があった。精巧に彫られたそれは、まるで今にも動き出しそうな程だ。
「わあー…すっごーい!」
「だろう?私が彫ったんだぞ、これは」
「おじさまが!?ふわー、すごいすごい!おじさま、てんさいー!」
「あんま褒めるな、イサドラ。このバカはすぐに調子に乗るからな…いてっ!」
軽口を叩くオリオンの脳天にチョップをお見舞いした。
「何すんだ、バカ!」
「うるさい、大バカめ!」
「ケンカはやめなさい、二大バカ!」
ミーシャのダブルパンチが二人の鳩尾に炸裂し、悶絶させる。そしてここに序列が決定。
ミーシャ>>>>>(越えられない壁)>>>>>野郎二人
それはともかく。
「このおにいちゃんたち、かっこいいね」
石像の精悍な姿に、イサドラはただ見惚れていた。それを見守りながら、オリオンは答える。
「そりゃそうさ。何しろ、神様さえぶっ飛ばした奴らだからな」
そして、エレフに目を向けた。
「しかし、今更だけどさ…お前、何だってこんなモン作ろうと思ったんだ?」
「大した理由じゃないさ」
エレフは、夕焼け空に向けて目を細める。
「ただ、何かの形で残しておきたかったんだ。あいつらの姿を…」
「そっか」
オリオンはミーシャと並んで、懐かしそうにその石像を見つめた。
それは、遊戯たち三人の姿をしていた―――それに向けて、三人は自分たちの想いを込める。
遠い遠い未来で、いつの日か、見つけてくれた時のために―――
(…やっと、来てくれたね。待ってたんだよ)
(また会えて嬉しいわ、遊戯。城之内。それに海馬も…)
(よう、お前ら。ひっさしぶりだなあ。まさか俺たちのこと、忘れちゃったりしてねーよな?)
<幻想音楽を奏でる吟遊詩人>が紡ぐ、無限にして夢幻の地平(セカイ)。
其の第六の地平線を統べる運命の女神<Moira(ミラ)>。その姿を見たものは未だ誰もいない―――
―――遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~・完―――
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