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第九十話「最後の勝負・2」
絵本が振り翳したメス。その矛先は―――自らの手首だった。血が面白いくらい勢いよく飛んだ。
「な・・・何やってるんですか、あなた!」
ペコが血相を変えて問い詰めると、絵本は自分で傷の手当をしつつ困ったような顔をして言った。
「だ、だから、精神を落ち着けようとリストカットを・・・こうすると、血が抜けてく感じがして、気分もスゥーっと楽に
なるから・・・」
「・・・・・・」
嫌すぎる精神安定法だった。
「リ・・・リストカットで気分スカっと」
しかも笑えなすぎるジョークのおまけ付きだった。
「くっくっく・・・どうだ、園樹は。いい眼鏡の上に、中々面白い奴だろう?面白いなあ。本当に面白い」
狐面の男は、つまらなそうにそう言った。
「あなたは・・・なんでそんなに平然としてられるんですか」
キラは苛立ちを抑えきれない様子で狐面の男に問いかけた。
「こんなとんでもないことをしでかして・・・色んな人を傷つけて・・・アザミだって・・・!」
「アザミ・・・ふん、あの女か。ありゃあ仕方がないさ。あれがあいつの運命だった。そういうことなんだろうぜ」
「運命・・・だって?」
「そう、運命だ。俺の持論を覚えているか?時間収斂―――バックノズル。起きるべき出来事は、必ず起きる出来事と
いうこと。今、ここでそれが発現しなかったところで、いつか、どこかで必ずその事象は発生する。これをアザミに
当てはめてみれば、話は簡単だ。あいつは元々、そこにいる野比のび太たちと敵対していた。その結果として敗れ、
本来ならばそこで死ぬはずだったのだろう。だが、生き残ってしまった。つまり、<アザミが死ぬ>という事象は
発生しなかった。
次に、シュウとの接触。ここでシュウに殺されるはずだった。だが、ここでも結局生き残ってしまった。またしても
死に損なったわけだな。
しかしながら、これでは世界は―――物語は成り立たない。死ぬべき時に死ぬべき登場人物が死なないというのは、
物語にとっては誤植もいいところだ。それを是正するためにバックノズルが働き、ようやくアザミは死ねた―――
そういうことだ。結局、アザミがどこで死のうと同じことだ。奴が死ぬのは運命の決定事項だったのだから。ただ、
時系列が前後したせいでちょっとややこしい話になった。それだけだ」
「―――そんな・・・」
誰かが死んだことを、そんな風にしか語れないのか。そう言ってやりたかったが、言葉にならなかった。
言ったところで、何も感じない。何も思わない。それが狐面の男だ。
「ふん。そんなことよりも、当面の問題はシュウじゃないのか?どうするつもりだ、あいつを」
「シュウ・・・!」
ごくり、と誰かが唾を飲み込んだ。
「あの力・・・ありゃあ文字通りの―――デウス・エクス・マキナってやつだ」
「デウス・・・なに?」
「なんだ、知らんのか。演劇用語で機械仕掛けの神と言う。収集のつかなくなった物語を理不尽なまでの力で無理矢理に
終わらせちまう神様って意味だ。全く最近の若い者はからくりサーカスも読んでいないのか?」
「それ、漫画の知識じゃない・・・てゆうか、漫画好きだったの!?」
「愛している」
狐面の男はきっぱりと言った。ある意味かっこよかった。
「まあ、それはともかくだ・・・シュウの野郎、あれじゃあ下手すりゃあの場でそれこそ世界の終わり・・・いや、待てよ。
うん・・・ああ、いや・・・ふむ、そうか・・・そういうことか・・・」
狐面の男は考え込んで一人で頷いたり首を振ったりして、手をポンと叩いた。
「そうか・・・あれが、グランゾン・Fこそが、俺の求めていたディングエピローグの答えなのかもしれん。あの力は・・・
正に世界の終わりと呼ぶに相応しい。そう呼ぶしかない力だ。しかし・・・そうだとすると・・・俺はなんてつまらないもの
を長年追い求めちまったのか・・・」
「つまらない?」
「ああ、つまらん。実につまらん。俺が生涯を賭して追いかけた、あらゆる存在を犠牲にして辿り着こうとした境地が、
<やたら凄いロボットが好き勝手暴れたら何もかもぶっ壊れました>だ。ろくでもねえ。ろくでもなさすぎる。それこそ
一心不乱に読み続けた小説の最後の最後で、とてつもなくくだらねえオチをつけられたってところだな」
狐面の男は、ふうー、と長い息を吐き出した。
「まあ、こうなったら仕方がない。あいつが世界をぶっ潰すのをまな板の上の鯉のように大人しく眺めるしかないのかも
しれん。それが運命ならば従うまでか。所詮俺たちは運命に流していただいている身なのだからな」
「けっ・・・なんだそりゃ」
USDマンがふん、と鼻を鳴らした。
「ふざけんなってんだ!死にたきゃ旦那一人で死ねよ。俺様はこのまま終わりなんざ御免だぜ。それにあいつにゃあ借りも
あるんでね」
「<あいつにゃあ借りもあるんでね>ふん。ああ、そうだったな。お前、シュウにあっさりやられたんだったな」
「う!」
痛い所を突かれて、USDマンが怯んだ。
「しかし、USDマン・・・ウルトラ・スーパー・デラックスマンか・・・ふん。あれだけあっさりやられといて、いつまで
そんな大層な名前を名乗ってるつもりだ。俺だったら恥ずかしくてそんな名前はとても名乗れんね。その辺は自分としては
どう思ってるわけだ?是非とも聞きたいな」
「う、うう・・・!」
USDマンがだらだら汗を流す。そして―――ゆらり、と立ち上がった。
その姿は正に威風堂々。最強キャラに相応しい風格を醸し出していた。そして―――
「いや」
<いや>と言った。
「いやいや」
<いやいや>と言った。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
<いやいや>と10回言った。
「いや、まあ、確かにあの時は思いっきりやられて意識飛んじまったけどよ。たったそれだけのことでもうUSDマンを
名乗るな、とか言われてもな、こっちだって困るわけよ。一回や二回の結果だけ見て、それでもうお前はダメだ、みたい
な物言いはさあ、よしてほしいわけだよ、うん」
「・・・・・・・・・・・・」
USDマンによるウルトラ・スーパー・デラックスな言い訳が始まった!
「最強ってのはそういう意味じゃねえだろ。 こっちはもっと長いスパンで物事を考えてるんだから。なんせUSDマンって
ぐらいだからな。そんな些細な事にいちゃもん付けられても困るわけよ。
重箱の隅をつつくかのように揚げ足を取られても、も、なんていうかさ、わかるだろが、ほら、最強っていうのは、やっぱり
そんな短期的なサンプルじゃ、計れないわけだしよ、1回や2回じゃまぐれって事もあるし、やっぱりさ、長い積み重ねとか、
がんばりとか、そういうのも考慮に入れた上で、そういう判断はしなくっちゃ、な。
まあまあ、狐の旦那よ、あんたの言う事もわかんないでもないよ、俺様も一応、柔軟な対応をな、考えてるしよ」
「・・・もう分かった。分かったからやめろ、USDマン。こっちが悲しくなってくる」
肩をポンポンと叩くペコ。USDマンはぶすっとした顔で答えた。
「・・・へっ。冗談だよ、冗談。いくらなんでもここまでヘタレ丸出しのセリフをマジで言うわけねえだろ」
「ふん、どうかな。そもそも主役サイドに寝返った元敵キャラはへたれるのがお約束だからな」
またしても狐面の男が油に火を注ぐような発言をかました。
「てめえ・・・俺様をヘタレキャラ扱いしちまったら、それこそ全部お終いだぜ」
「くっくっく―――まあいいじゃねえか。どうせ最後だ、みんなでへたれて終わろうぜ」
「嫌だ。前作から考えると足掛け三年にも及ぶ大長編のオチがそれなんて、絶対に嫌だ」
稟は本当に嫌そうに言った。
「恥ずかしい告白大会しようぜ。一番、人類最悪。実は俺、何も考えてないんだよ」
「知ってるよ」
稟が突っ込む。
「では二番、バカ王子。実は僕、他人に嫌がらせをするのが大好きなんだ」
「とっくの昔に分かっとるわ」
今度はクラフトが突っ込んだ。
「ならば三番、アスラン・ザラ。実は俺、渚カヲルくんの声真似が大の得意なんだ。ではいきます。
<歌はいいな、キラ>」
「サルファやってないと分かんないよ!」
次はキラ。
「じゃあ四番、プリムラ。実は私も声真似が得意。<リリカルマジカル、全力全か・・・>
「アスランさんと被ってるし他職人さんをネタにするのは色々ヤバいからやめなさい!」
そしてペコ。ボケに対して突っ込み役が総動員していた。
「まあ、それはともかく・・・相手が誰だって、やるしかないよ」
のび太が決意を込めて、拳を握り締める。
「あいつを放っておいたら、大変なことになる―――そんなことは、分かりきってることなんだ」
「ふん―――そりゃあ立派な心がけだ。だがな、勝てる見込みなんぞあるのか?お前ら全員、あっさりやられてたじゃ
ないか。お前らがシュウに勝つ確立なんざ、ジャンプの次回予告が当たる可能性より低いぞ」
どういう例えだ。そう思ったが、もう突っ込まないことにした。
「それでも―――戦うよ、ぼくらは。ねえ、みんな」
「そうだね。今さら逃げたりできないよ」
ドラえもんが頷く。
「おうよ。負けたまんま終われるか!」
ジャイアンが鼻息を荒くする。
「やっぱそうなるのね・・・ま、しょうがないけどさ」
スネ夫もまたいつものこと、と肩を竦めた。
「そうよ。このままで放っておけないわ」
しずかが決意を秘めて語る。
「ふん・・・そうか。それでこそ主人公と言ったところだが―――それで、もしも勝てたとして、どうするんだ?」
「え?」
「俺のことはどうするんだ―――そう聞いている」
狐面の男は、そう問いかけた。
「お前らがシュウに勝てたならば―――シュウもまた俺の求めるディングエピローグの答えではなかったということ。
そうなれば俺はまた、世界の終焉を求めるだけだ。そうなればお前らはまた、俺との因果に介入してくるかもしれん。
そうなれば―――不毛なマッチポンプが続くだけだ。それは、俺の主義ではない。俺は一度やったことは、それが
成功であったにしろ、失敗だったにしろ、二度とはやらん」
「・・・何が、言いたいのさ」
「賭けをしよう、俺の敵。俺とお前らとの、最後の勝負だ」
最後の勝負。それは―――
「俺はシュウの勝ちに賭ける。お前らは当然、自分たちの勝ちに賭けろ。俺が勝ったならば、その時はもうどうにも
ならん。負けたお前らはまず間違いなく死ぬというわけだからな。後は野となれ山となれ、だ。
だが万が一、お前らがシュウに勝てるようならば―――その時は、今度こそ俺の完敗だ」
そして、狐面の男は、言った。
「その時は―――俺を殺す権利をくれてやろう」
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