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御伽噺を語りましょう
子どものころあなたが夢見た、だれかが夢見た御伽噺を
けれど大人になって忘れてしまった御伽噺を
あなたの心の中にたしかにあった御伽噺を
けれどどこかに消えてしまった御伽噺を
涙と悲鳴と絶望がこめられた残酷な御伽噺を
ささやかな希望がこめられた優しい御伽噺を
わたしはクロニカ
あなたたちが〈黒の予言書〉と呼んでいるものの原典
つまらない昔話しかできないくだらない女です
そしていまだ〈書〉に記されていないこの世界の〈歴史〉を視る女です
幾度となく繰り返される予定調和から外れたこの世界の〈歴史〉を
ここはあなたの理解を超えた世界
ここはあなたがいつか夢見た世界
もしあなたがこの世界の〈歴史〉を知りたいと望むのならば――
まずはつまらない昔話からお話してさし上げましょう
突如として全世界を襲った複数の魔導災害によって旧世界は完全に崩壊
した。その発端となったものは諸説あるが、一番有力なものは、倫敦を壊滅さ
せた大規模バイオテロとされている。公的には、だ。真相はもっと別のおぞま
しい恐怖が倫敦を襲ったのだ。
第一の魔導災害。狂った『少佐』が引き起こした、人類の〈歴史〉上、
最大最悪の吸血鬼禍。鉤十字の亡霊達。狂戦士の群れ。吸血鬼の群れ。彼
らは倫敦の一切合財を破壊し、半世紀前から続く怨念のすべてを解放し、
すべての生けるものを死せるものへと変えた。
魔女の釜の底と化した倫敦を脱出した老いた女王はただ事態の沈静を
待った。彼女がもっとも信頼を寄せる不死者の王が、狂った『少佐』の夢
を終わらせるのを待った。
だが、狂った『少佐』を打倒し、吉報を伝えるはずのヘルシング家の若
き当主も、その下僕の不死者の王も、その下僕の下僕であるドラキュリー
ナも、老いた女王の下に帰還する事はなかった。そして女王の祈りを嘲笑
うかのように、倫敦でさらなる異常事態が発生した。
第二の魔導災害。倫敦全域を覆う、原因不明にして正体不明の霧。
出ることも入ることも許さぬ霧。人間と空間と時間を狂わせる霧。
その向こうに『漆黒の逆さ城』が存在していると噂される霧。
老いた女王はすぐさま自分の手足である《ディオゲネス》に命じた。
倫敦を襲ったこの異常現象の調査を命じた。
王立碩学院に所属するひとりの碩学は語る。
「あの霧――仮にこれを《無限霧》とでも呼びましょうか――の彼方に
は、過去現在未来の倫敦が同時に存在しています」
度重なる調査の末にわかったことはそれだけだった。
生存者の安否は不明。倫敦の詳しい状態も把握できない。
そしてその報告を最後に調査隊の派遣は打ち切られ、米国に暫定的に置
かれた英国政府、ならびに崩御した女王に代わり新たに戴冠したシャル
ル・ジ・ブリタニアによって、倫敦は永久立入禁止区域に指定された。
第三の魔導災害。それは南極大陸から発射された大陸弾道兵器によって
引き起こされた。後の調査によれば、その弾道弾には鉤十字が刻まれてい
たらしい。
標的になった場所は、太平洋ニュージーランド沖合、南緯47度9分、西経
126度43分。人類の黎明以前からこの星で永劫の眠りにつく『大いなるC』
が存在する場所。海底神殿ルルイエ。
各国諜報部がその弾道弾の着弾を確認した後、おぞましい恐怖の怪物た
ちが出現し始めた。〈クトゥルー眷属邪神群〉と呼ばれる彼らは、ヨーロ
ッパのあらゆる場所に出現し、人間文明を破壊しはじめた。大いなるある
じに代わり永遠の治世をもたらす為に。
人間たちはこの事態に対抗すべく、ヴァチカンが擁する第9次十字軍の
生き残り、代行者や埋葬機関、魔術協会の魔術師たち、西方碩学協会の碩
学、そして国連加盟国の軍隊をまとめた連合軍――〈人間戦線〉を形成し、
〈クトゥルー眷属邪神群〉に戦いを挑んだ。
もっとも憂慮された事態――陰秘学者が夢あるいは書物の中で警告し続
けてきた旧支配者の顕現は、いかなる理由か何故か確認されなかった。そ
のため、魔術兵器ゴーレムを中核とした〈人間戦線〉の軍隊は、ある程度
戦況を有利に進めることができた。その代償としてヨーロッパの全土は戦
場となり、人の住めぬ地獄と化した。
そして、第四にして最後の魔導災害。それは、〈人間戦線〉と〈クトゥ
ルー眷属邪神群〉との殲滅戦がヨーロッパからアジアや南米大陸にまで飛
び火し始めた頃。広域犯罪組織《結社》が暗躍し始めた頃。鉤十字騎士団
や聖槍十三騎士団、ミレニアムの残存部隊に御伽噺部隊などのナチ残党が
組織した〈総統の子ら〉のテロ活動が活発になり始めた頃。ドール病、ス
テーシー病、離魂病などの原因不明の奇病がヨーロッパの滅亡を加速させ
ていた頃。
もはや死に体になっていたヨーロッパの大地に、突如として巨大な大樹
が芽吹いた。後に〈ダヌの世界樹〉と呼ばれたそれは、直截的な被害こそ
及ぼさなかったが、これまで起こった魔導災害の中で、もっとも怖ろしい
変化を世界にもたらした。
あの日、あのとき。世界中の青空を灰色雲が覆い、美しい太陽を隠して
しまった日から、それは始まった。
それは在りえざるものたちの《復活》の日。
それは忘れ去られていたものたちの《復活》の日。
それは人間と鋼が支配する〈歴史〉において消え去ったはずのものたち――
すなわち、御伽噺の住人の《復活》の日。
《復活》――全世界に突如として発生した魔導災害の中でもっとも大規模、
そして致命的な変化を及ぼした異常現象。その《復活》の日を境に、かつて
この世界に在り、そして人間に忘れ去られ、夢の彼方に去ったはずの御伽噺
の住人が、荒廃したこの世界に帰還を果たした。
幻獣、妖精、荒ぶるドラゴン、これら御伽噺の住人の存在が各国都市で
同時に確認された。夢まぼろしに過ぎなかった彼らは、まるで物語の役割
を演じるかのように振舞った。人間には扱えぬ奇跡の技を示し、人間には
操れぬ言語を発し、人間には理解できぬ理由で人間を害した。
そして人間もまた変化を免れることはできなかった。
世界のかたちが歪んだように人間のかたちもまた歪んでしまった。
世界が変異したように人間もまた変異した。
人間の姿かたちは御伽噺の住人の姿かたちに捻じ曲がった。
かつての人間のかたちを留めるものはごく少数で、ほとんどが姿を変え
てしまった。魔法という未知の技術が一般社会に浸透し、これまでの世界
を一変させた。
人々は思った。まるで物語の中へ迷い込んだようだと。
世界は変わった。迷信深い世界へと。
夢が現実になり、現実が夢になった。
旧き〈歴史〉は終わりを告げた。人間の〈歴史〉は終わりを告げた。
御伽噺の〈歴史〉が始まった。
つまらない昔話は、これでおしまい
これより先は、彼らの物語を語りましょう
御伽噺が《復活》した世界で、もっとも御伽噺が満ちる場所
御伽噺の住人に変異した人間たちが住まう場所
異形都市〈ケイオス・ヘキサ〉で紡がれる物語を
絶望の泥濘で喘ぎながらそれでも希望を信じるものたちの物語を
〈Lost chronicle〉
first page「未来のイヴの消失」
プリマヴェラ・ボビンスキ …… デッドガール
イグナッツ・ズワクフ …… ドールジャンキー
メディスン・メランコリー …… アンティークドール
second page「伝言 -message- 」
ルーン=バロット …… 事件屋
メアリ・クラリッサ・クリスティ …… 黄金瞳の少女
紫陽花の姫君 …… 壊れた人形
third page「ひばり」
リア・ド・レエ …… 求道者
ジャンヌ=クローム=〈ラ・ピュセル〉 …… 鋼鉄の聖女
フランチェスコ・プレラッティ …… 錬金術師
fourth page「魔女は楽園の夢を見るか?」
ラフレンツェ …… 魔女
オルフェウス …… 仮面の男
黒いアリス …… Forest
last page「■■■■■■■■■■■■」
■■■■■■ …… ■■■■■■
■■■■■■ …… ■■■■■■
■■■■■■ …… ■■■■■■
御伽噺を語りましょう
子どものころあなたが夢見た、だれかが夢見た御伽噺を
けれど大人になって忘れてしまった御伽噺を
あなたの心の中にたしかにあった御伽噺を
けれどどこかに消えてしまった御伽噺を
涙と悲鳴と絶望がこめられた残酷な御伽噺を
ささやかな希望がこめられた優しい御伽噺を
わたしはクロニカ
あなたたちが〈黒の予言書〉と呼んでいるものの原典
つまらない昔話しかできないくだらない女です
そしていまだ〈書〉に記されていないこの世界の〈歴史〉を視る女です
幾度となく繰り返される予定調和から外れたこの世界の〈歴史〉を
ここはあなたの理解を超えた世界
ここはあなたがいつか夢見た世界
もしあなたがこの世界の〈歴史〉を知りたいと望むのならば――
まずはつまらない昔話からお話してさし上げましょう
突如として全世界を襲った複数の魔導災害によって旧世界は完全に崩壊
した。その発端となったものは諸説あるが、一番有力なものは、倫敦を壊滅さ
せた大規模バイオテロとされている。公的には、だ。真相はもっと別のおぞま
しい恐怖が倫敦を襲ったのだ。
第一の魔導災害。狂った『少佐』が引き起こした、人類の〈歴史〉上、
最大最悪の吸血鬼禍。鉤十字の亡霊達。狂戦士の群れ。吸血鬼の群れ。彼
らは倫敦の一切合財を破壊し、半世紀前から続く怨念のすべてを解放し、
すべての生けるものを死せるものへと変えた。
魔女の釜の底と化した倫敦を脱出した老いた女王はただ事態の沈静を
待った。彼女がもっとも信頼を寄せる不死者の王が、狂った『少佐』の夢
を終わらせるのを待った。
だが、狂った『少佐』を打倒し、吉報を伝えるはずのヘルシング家の若
き当主も、その下僕の不死者の王も、その下僕の下僕であるドラキュリー
ナも、老いた女王の下に帰還する事はなかった。そして女王の祈りを嘲笑
うかのように、倫敦でさらなる異常事態が発生した。
第二の魔導災害。倫敦全域を覆う、原因不明にして正体不明の霧。
出ることも入ることも許さぬ霧。人間と空間と時間を狂わせる霧。
その向こうに『漆黒の逆さ城』が存在していると噂される霧。
老いた女王はすぐさま自分の手足である《ディオゲネス》に命じた。
倫敦を襲ったこの異常現象の調査を命じた。
王立碩学院に所属するひとりの碩学は語る。
「あの霧――仮にこれを《無限霧》とでも呼びましょうか――の彼方に
は、過去現在未来の倫敦が同時に存在しています」
度重なる調査の末にわかったことはそれだけだった。
生存者の安否は不明。倫敦の詳しい状態も把握できない。
そしてその報告を最後に調査隊の派遣は打ち切られ、米国に暫定的に置
かれた英国政府、ならびに崩御した女王に代わり新たに戴冠したシャル
ル・ジ・ブリタニアによって、倫敦は永久立入禁止区域に指定された。
第三の魔導災害。それは南極大陸から発射された大陸弾道兵器によって
引き起こされた。後の調査によれば、その弾道弾には鉤十字が刻まれてい
たらしい。
標的になった場所は、太平洋ニュージーランド沖合、南緯47度9分、西経
126度43分。人類の黎明以前からこの星で永劫の眠りにつく『大いなるC』
が存在する場所。海底神殿ルルイエ。
各国諜報部がその弾道弾の着弾を確認した後、おぞましい恐怖の怪物た
ちが出現し始めた。〈クトゥルー眷属邪神群〉と呼ばれる彼らは、ヨーロ
ッパのあらゆる場所に出現し、人間文明を破壊しはじめた。大いなるある
じに代わり永遠の治世をもたらす為に。
人間たちはこの事態に対抗すべく、ヴァチカンが擁する第9次十字軍の
生き残り、代行者や埋葬機関、魔術協会の魔術師たち、西方碩学協会の碩
学、そして国連加盟国の軍隊をまとめた連合軍――〈人間戦線〉を形成し、
〈クトゥルー眷属邪神群〉に戦いを挑んだ。
もっとも憂慮された事態――陰秘学者が夢あるいは書物の中で警告し続
けてきた旧支配者の顕現は、いかなる理由か何故か確認されなかった。そ
のため、魔術兵器ゴーレムを中核とした〈人間戦線〉の軍隊は、ある程度
戦況を有利に進めることができた。その代償としてヨーロッパの全土は戦
場となり、人の住めぬ地獄と化した。
そして、第四にして最後の魔導災害。それは、〈人間戦線〉と〈クトゥ
ルー眷属邪神群〉との殲滅戦がヨーロッパからアジアや南米大陸にまで飛
び火し始めた頃。広域犯罪組織《結社》が暗躍し始めた頃。鉤十字騎士団
や聖槍十三騎士団、ミレニアムの残存部隊に御伽噺部隊などのナチ残党が
組織した〈総統の子ら〉のテロ活動が活発になり始めた頃。ドール病、ス
テーシー病、離魂病などの原因不明の奇病がヨーロッパの滅亡を加速させ
ていた頃。
もはや死に体になっていたヨーロッパの大地に、突如として巨大な大樹
が芽吹いた。後に〈ダヌの世界樹〉と呼ばれたそれは、直截的な被害こそ
及ぼさなかったが、これまで起こった魔導災害の中で、もっとも怖ろしい
変化を世界にもたらした。
あの日、あのとき。世界中の青空を灰色雲が覆い、美しい太陽を隠して
しまった日から、それは始まった。
それは在りえざるものたちの《復活》の日。
それは忘れ去られていたものたちの《復活》の日。
それは人間と鋼が支配する〈歴史〉において消え去ったはずのものたち――
すなわち、御伽噺の住人の《復活》の日。
《復活》――全世界に突如として発生した魔導災害の中でもっとも大規模、
そして致命的な変化を及ぼした異常現象。その《復活》の日を境に、かつて
この世界に在り、そして人間に忘れ去られ、夢の彼方に去ったはずの御伽噺
の住人が、荒廃したこの世界に帰還を果たした。
幻獣、妖精、荒ぶるドラゴン、これら御伽噺の住人の存在が各国都市で
同時に確認された。夢まぼろしに過ぎなかった彼らは、まるで物語の役割
を演じるかのように振舞った。人間には扱えぬ奇跡の技を示し、人間には
操れぬ言語を発し、人間には理解できぬ理由で人間を害した。
そして人間もまた変化を免れることはできなかった。
世界のかたちが歪んだように人間のかたちもまた歪んでしまった。
世界が変異したように人間もまた変異した。
人間の姿かたちは御伽噺の住人の姿かたちに捻じ曲がった。
かつての人間のかたちを留めるものはごく少数で、ほとんどが姿を変え
てしまった。魔法という未知の技術が一般社会に浸透し、これまでの世界
を一変させた。
人々は思った。まるで物語の中へ迷い込んだようだと。
世界は変わった。迷信深い世界へと。
夢が現実になり、現実が夢になった。
旧き〈歴史〉は終わりを告げた。人間の〈歴史〉は終わりを告げた。
御伽噺の〈歴史〉が始まった。
つまらない昔話は、これでおしまい
これより先は、彼らの物語を語りましょう
御伽噺が《復活》した世界で、もっとも御伽噺が満ちる場所
御伽噺の住人に変異した人間たちが住まう場所
異形都市〈ケイオス・ヘキサ〉で紡がれる物語を
絶望の泥濘で喘ぎながらそれでも希望を信じるものたちの物語を
〈Lost chronicle〉
first page「未来のイヴの消失」
プリマヴェラ・ボビンスキ …… デッドガール
イグナッツ・ズワクフ …… ドールジャンキー
メディスン・メランコリー …… アンティークドール
second page「伝言 -message- 」
ルーン=バロット …… 事件屋
メアリ・クラリッサ・クリスティ …… 黄金瞳の少女
紫陽花の姫君 …… 壊れた人形
third page「ひばり」
リア・ド・レエ …… 求道者
ジャンヌ=クローム=〈ラ・ピュセル〉 …… 鋼鉄の聖女
フランチェスコ・プレラッティ …… 錬金術師
fourth page「魔女は楽園の夢を見るか?」
ラフレンツェ …… 魔女
オルフェウス …… 仮面の男
黒いアリス …… Forest
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