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マックレイカー プロローグ


「マック、どうしたの?」

仄暗く窓の無い部屋で、その全身を神秘の光に包んだ鎧は、無機質な、しかし流暢な声のボリュームをできる限り上げた。

[しばらくしたら,ハルマゲドンが起きる!!]

「それは聞いた。それで?今なんて言ったの?」

[ハルマゲドンに参加する!!]

先程もスピーカーから出力された言葉が繰り返された。それを聞いて鎧の目の前の少年は唖然とする。

「ダメじゃないか!君の身体と鎧には世間には秘密の機能で満載なんだよ?君が人間じゃないってことが誰かにバレたら、ここにあるデータごと持って行かれて解体されちゃうよ」

[ハルマゲドンには参加するけど,その時は少しいつもと見た目を変えて,今日は代理のロボットを参加させる,とか言っておけば大丈夫!!]

鎧の顔の部分にあたるモニターには自信満々な表情が浮かべられている。それが少年の神経に障った。

「いつもとの違いがわかる人がいたらどうするの!?」

[大丈夫,いない.他にハルマゲドン出たい人調べた.]

少年は溜息をついた。今話している相手が彼の唯一の友人であること、そしてその友人が戦地に赴こうとしていることに。
この少年は魔人だ。それも彼の能力を格付けするとなれば、準EFB級以上の価値を認められるだろう。彼が1人でいるならば何ら危険は無いが、他の魔人と手を組めば、世界はガラリと姿を変える。
彼の能力『ランガジュ』はそれほどまでの危険を秘めていた。

「行かないでくれよ、友達だろ?」

[……]

「なんで返事してくれないんだよお…」

電子妖精はちっぽけな存在に背中を向けた。ちっぽけな肉体から涙が滲んでいる。
彼のセンサーは背後の人間の感情に気づいていたが、それを理解していないかのように振る舞った。

[頼まれたんだ… クラスの友達に……]

「なんで引き受けるんだよ!?そんなもの…!」

[この学校に入って初めて優しくしてくれた子なんだ.凄く良い子で…守ってあげたい…]

「そんなことして、余計なことをして正体がバレたらどうする!」

[大丈夫,バレないようにする.そんなの『ランガジュ』があれば楽勝.]

「そうだけど…そうだけど…魔人相手の戦いで、何があるかなんて分からないんだから…
僕の能力の唯一の対象外の、転校生が現れたら、どうなるか分からないし…」

[私は君に作ってもらったような物だ.君には感謝している.だけどね,この体はいつも心配してるんだ.君がいなくなった後の事を.そしたら私は一人ぼっちだ.]

「……」

[君が本来の所,私を1人遊びの相手に用意したのは知っている.寂しさを紛らわせるために作ったのは.でもズルいじゃないか,君が死んだら私は孤独だ.]

「ごめん…」

鎧は再び少年の方を向いた。

[これは挑戦で,賭けだ.今回私の正体がバレず,君のことも突き止められなかったなら,ここから出よう.
地下室の外で,君も,もう一度自分の友達を作るんだ.
『ランガジュ』に自信を持て.『ランガジュ』が君の人生を不幸にはしない.]

「マック…」

少年は嗚咽し、殆ど声を出すことも出来なかった。天井からぶら下がった電球が瞬き、マックレイカーの鎧が全身で涙をながすようだった。

「それじゃあ、約束してもらって良い…?ハルマゲドンまでの間、今までより長い時間を一緒にいる時間にしてくれない?」

鎧の手甲が少年の肩を肩を優しく掴み、もう片方の腕が頭を撫でた。そこには強い肯定の意志が込められていた。

「ありがとう。」

[無茶をするかもしれない,ごめん.]

「ボディーの傷なら僕が何回でも修復できる。帰ってきてくれるなら戦いなんて好きなだけ行って良い。僕には『ランガジュ』がある。大丈夫だ。」

少年の涙はもう止まっている。先程までの瞳に映っていた不安な表情はもう無い。
残された転校生の脅威、それすらも恐れてはいない。

希望崎学園、秘密の地下室、あっても無くても変わらないような小さな部屋。ここに今、1人の小さな決意が生まれ、一つの強力な戦士となった電子妖精が生まれた。


『ランガジュ』…情報収集系能力。過去現在未来、全ての平行世界の言語として表された情報を自らの知識に還元する。
本来はいつでもどこでも誰とでも会話することの出来る能力であったが、会話の際に必要となるバックグラウンドとしての知識が想像以上に膨大な物となり、超強力な能力となってしまった。
もともとマックレイカーの鎧を作った少年が、友達を作りたくて手に入れた能力だったが、怖い秘密結社や機関の事を知り、自らを存在の知られていない地下室に封じ込める事になった。
転校生は平行世界などを色々超えた存在の為、その出現と影響を事前に完全な知識化する事が出来ない。