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砂々目萌香&砂々目早苗のプロローグ


――最近、兄が帰ってこない。
「ちょっと青春しに行ってくる」
あたし、砂々目萌香の兄である砂々目賛土は、死地に行くような真剣な面持ちでそう言って家を出ていった。それを見送る水佳ねぇの悲しそうな表情を覚えている。
それから数ヶ月過ぎ、未だ連絡はない。
水佳ねぇが言うにはぴんぴんしているらしいので、殺したって死にそうにないあの変態に問題はないだろう。
…が、こっちはそれによってとても重大な問題が発生していた。
『もぉ~、賛土まだ帰ってこないのっ!?』
“観察日記”から舌足らずな可愛らしい声が不満を伝えてくる。
「なんかよく分からないけど、まだ帰れそうにないんだって」
そう言いながら膝の上に乗っかった“妹”、砂々目早苗の頭――“お花”に触ると怒るので、“葉っぱ”――を軽く撫でる。
『やだ!賛土に会いたいよ!』
“妹”はかわいいおててとあんよ振り回し、じたばたと暴れだす。くぅ、かわいい…
と同時にこうまでも慕われる兄に嫉妬の炎が燃え上がる…
(オノレ、あの馬鹿にぃめ…)

悔しいことに、早苗はあたしよりも賛土にぃに懐いている。この生みの親であるあたしよりも!
あたしの能力《観察日記》は植物であればその状態を完璧に知ることができ、その生長をコントロールすることができる。
砂々目早苗はその《観察日記》の能力をフル活用して生まれた思考し活動する動物のような力を得た植物、いわば魔人植物なのだ!
それに対して賛土にぃは含有する鉱物や養分を植物に合わせて調整した、植物の育成に最適な土を生み出す能力をもっている。
魔人の力によって生み出される最高の土は魔人植物である早苗にとって、とても魅力的な存在…
それだけでなく、賛土にぃの土に埋まるという趣味が早苗と見事合致(?)していて本人同士の仲も良い。
なんなんだろうね、あの変態…

『う~…』
暴れ疲れたのか、大人しくなった早苗。それでもなお唸り声を上げている…
いつまでも早苗の機嫌を損ね続けるのもあたしとしても本意じゃない。
「…なんだったらさ、会いに行ってみる?」
『え?』
きょとんとした表情でこちらを見る早苗。
希望崎学園、魔人が集う学校。魔人として目覚める以上、今の学校を卒業したらあたしと早苗もそこに通うことになるだろう。
少し早い学校見学のようなものだ。
『行く!』
早苗も諸手を挙げて賛成だ。
部外者だと怒られるかな?治外法権らしいし、絡まれたら怖いな…あ、水佳ねぇの制服借りれば…
そんなことを考えて水佳ねぇとのスタイルの差で少しダメージ受けたりしながら、遠足に行く子供のようなちょっと浮かれた気分で準備を進めたのだった。


――それが、あんなことになるなんて、その時のあたしは思いもしていなかったのである…