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至高と究極、の蛇足」(2016/01/23 (土) 20:00:18) の最新版変更点

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*【至高と究極、の蛇足】 ――さて。 もし、この二人の光景を、動体視力が極めて良く、殺気に敏感な人間が観察していたならば。 大菩薩峠連火が、ラーメン完成の直前に 粘土の塊を二つ、焼き窯近くの森に投げたことに気付けたかもしれない。 ~~~~~~ 「……ウホ」 向かって西側の樹上にいた一匹のゴリラ――学名・ゴリララーメンゴリラ、人読んで蕎麦食部ゴリは―― 顔面に付着した粘土を忌々しげに拭いながら、すごすごと立ち去っていった。 いつの頃からかは解らないが、彼は大勝百歩日高次郎極のラーメンを執拗に付け狙っている。 極のラーメンが誰かに振る舞われようとする度に、彼はその熱を、香りを、気配を嗅ぎつけて現れる。 隙あらばそのラーメンを奪わんと……否、それ以上の狼藉をも働かんがために。 だが、今日ばかりは相手が悪かった。悪すぎた。 屋外ならば好都合、とばかりに待ち構えていたが―― あの派手な服を纏った女の、焼けつく焔のような鋭い一瞥。 それに気付いた時、既に顔面には衝撃が走っていた。 いや、たかだか泥の塊だ。致命傷どころか、ダメージすら殆ど無い。 だが、それ以上に――刻まれた恐怖という感情のほうが、痛かった。 いいだろう。今日の一杯は、あの女に譲ろう。 だが、次は――次こそは。 そう決意しながら、彼はどこかへと帰って行った。 ~~~~~~ 「……うううう、やっぱりあの人いい性格ですよ」 向かって東側の樹上にいた一人の少女――明智矢矯は、顔面の泥濘を拭き取りながら 手芸部の部室への帰路を辿っていた。 大菩薩峠連火――陶芸部部長にして、手芸部の兼任者。 だが、実質的に言えば――手芸部の裏切り者、抜け手芸者も同然の存在である。 様々な事情から、連火と手芸部の間には不可侵協定が結ばれているが…… しかし、それでも新入部員である矢矯には理解しがたかった。 手芸部からの、陶芸の独立――いわばクーデターを目論んで。 あまつさえ、成功させた。 それでいて、抜け手芸者としての罰を逃れた女傑。 だから、彼女はどうしても諦めきれず――彼女の命を、殺(と)るつもりでいた。 だが、あの瞬間。 自分よりも遥かに格上の、手芸者としての凄みを、思い知らされた。 投げつけられたのが、もしも失敗作の陶器であれば―― 目の一つは持って行かれていただろう。いや、命も十二分に殺れた筈だ。 だからこれは、やはり手加減であり手心であり手抜きに他ならなかった。 不出来な後輩に対する慈悲とも取れるような、生温い撃墜。 「……でもいつか、貴方に一針喰らわせてみせますよ、ええ」 顔中の粘土を拭いながら、矢矯は少しだけ手芸者として成長を見せた――

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