205.偽装された官

  東魏の孝静帝のとき、吏部令史の張永和や崔闊らが偽って別人を官につけていた事案が発覚して、取り調べを受ける者が六万人あまりに達した(『魏書』孝静帝紀)。このように荒れ乱れた王朝において、官吏が不正をおこなうのは、もとより怪しむに足りない。隋の文帝のときにいたって、統治を鑑みて偽装者をなくすべきとされた。向道力という者があり、偽って高平郡守とされた。向道力が官に赴任しようとしたとき、薛冑が道中に遭遇して、これを疑い、主簿に審問させた。徐倶羅という者があり、先に海陵郡守となったが、向道力に郡守の仕事を代行させていた。任期を満了しても公私ともに気づかれなかった。徐倶羅はまた「道力はわたしに代わって一任を果たしただけです。使君はどうしてこれをお疑いなさるのか」といった。薛冑は聞き入れず、向道力を収監すると、向道力は罪に服した(『隋書』薛冑伝)。郡守は位の低い官ではないのに、任期を満了してもしばらくのあいだ、偽装が発覚しなかったのは、また法の網の緩さを見るべきであろう。しかしまた信じられないのは、偽の郡守がいて、真の郡守はどこにいたのか。危険を冒して数年も偽装するとは理に合わず、どうして聞く人を納得させることができるのか。史書の作者の見聞の狭さが恐ろしい。

205.假官

  後魏孝靜帝時,吏部令史張永和、崔闊等僞假人官事覺,糾檢首者六萬餘人。(本紀)此荒亂之朝,吏弊官邪,固無足怪。至隋文帝以綜核爲政,宜無敢有作僞者矣,乃有向道力者,僞作高平郡守,將之官,薛冑遇諸途,疑之,使主簿按問。有徐倶羅者,先爲海陵郡守,已爲道力所代,秩滿而公私未悟。倶羅亦曰:「道力已代我一任,使君豈容疑之。」冑不聽,遽收道力,道力果引服。(薛冑傳)郡守非卑秩,任滿非暫時,乃作僞而莫之悟,亦可見法網之疏矣。然亦有不可信者,彼既爲僞守,則真守何在,豈肯聽人之假冒數年,而不出理者,恐作史者之謏聞也。

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魏齊斗秤? 205.假官 周隋唐皆出自武川

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最終更新:2021年09月25日 15:10