狛犬とは?


L:狛犬 = {
 t:名称 = 狛犬(種族)
 t:要点 = かわいい,犬,くるくる
 t:周辺環境 = 世界の終わり
 t:評価 = 体格4,筋力3,耐久力4,外見1,敏捷2,器用2,感覚2,知識”,幸運2
 t:特殊 = {
  *狛犬の人カテゴリ = ,,汚染種犬士種族アイドレス。
  *狛犬の位置づけ = ,,{犬士専用,汚染種種族}。
  *狛犬の保持根源力 = ,,300000。
  *狛犬のイベント時食料消費 = ,条件発動,(一般行為判定を伴うイベントに参加するごとに、食事として)食料-2万t。
  *狛犬の魔法系・宗教系職業補正 = 歩兵,条件発動,({魔法系,宗教系}職業についた場合の)全能力、評価+4。
 }
 t:→次のアイドレス = 方術師(職業),番犬(職業),シールド展開(絶技),魔法力解放(技術)




神聖巫連盟には、狛犬という種族がある。
狛犬とは古来より、社寺仏閣の結界の境にあり、聖域に入るものを見定める役割があるものである。世間一般には、狛犬たちは銅などで鋳造された像として、互いを見合って、もしくは守護すべき社に背を向けた形で立っているものだが、神聖巫連盟の狛犬は像ではなかった。


彼等は、広義にいえば犬士である。犬士とは藩国に住まう犬たちのことであり、人と共に暮らし、人の友として勉学や業務に励む犬たちのことである。
犬士として生まれ、人と共に教育を受けてきた犬士たちは、そのうちに【信仰】というものを見出し、自分からすすんで神々に仕えるようになってきた。
そしていつしか、人が神々に感謝し、祈るのと同じように、神々と触れあい、そして信仰を持つようになった。

それが、巫の狛犬である。


巫の狛犬

狛犬は己の選んだ神々に仕え、その守りを担っている。
仕える神々は様々あるが、大抵はその社を中心とした聖域を守護し、社寺仏閣の清掃維持などを行っており、小さな神々に仕える狛犬の中には、神々をその背に乗せ、移動を助けたり、諸国を巡る旅に向かったりするものもいるが、狛犬たちの大半は神々を直接助けるというのではなく、その社や社のある土地、その土地に住まう者達を見守ることで、神々の手助けを果たしている。

彼等は神域や社を守るために、土地についているものが多く、血縁の代わりに地縁を重んじるものが多いのが特徴である。
特に子供に対しては関心が強くあり、それが高じて保育園や小学校で子供たちの守護をする者もいる。また、彼等が学校や保育園で働く場合には、人の指導を受けながら保育や教育にあたる。


また、巫の狛犬たちは人へと姿を変えることが出来る。
彼等は神々に仕えるにあたり、必要なことを学ぶために修行をすることがあるが、彼等の修行は、子供と接するための保育や、社などを修繕するための建築、急病人や重傷者の初期手当てを行うために医療など、多岐にわたる。
大抵はその道の神々や、専門家に教えを請い、学んでいくのだが、その内に人に変化する方法を体得したといわれている。


狛犬の仕える神々とは?

巫の狛犬が仕える神々とは、世間一般に言う神々も含めて、様々なものに仕えることがある。
様々な神々に仕える彼等の姿を紹介しよう。

社の神々に仕える者

国内にあって、悪魔神社のような大きな社を構える神々に仕える者達は、全体的に数が多く、人とのかかわりも深い。
お盆や初詣の時期などには、社の社務所でお守りや破魔矢を授けていたり、清掃していることもあるほどである。迷子が出たときには、子供を保護し、一緒に親を探していることもある。

同じように小さな社を構える神々に仕える彼等も、社の清掃などをしているが、大きな社に比べると数が少ないのが特徴である。とはいえ、数が少なくても果たすことは同じであり、日々、社の清掃や参拝客の案内をしている姿を見ることが出来る。

家に住まう神々に仕える者

彼等は家に仕えることもある。正確にはその家に住まう神々に仕えるということになるが、彼等はその家に住まう家族にも権を置くのが大半である。
家具や道具が神となった九十九神と呼ばれる神々や、その家の子供たちに仕えるので、ペットとして生涯をすごす者が多い。
彼等は人と共に生活するので、子供の散歩に付き合ったり、買い物に一緒に出かけたりしていることがあるが、時には子供に毛繕いされながら、日向の中でまどろんでいる姿を見ることも出来る。

特定の場所にいる神々に仕える者

彼等が仕える神々の中には、社は持たないが、特定の聖域を持つ神々に仕えるものもいる。
滝の神や山の神に仕える者たちは、大抵人里はなれたところに住まうため出会うことは少ないが、時折迷い込んできた人を、危険から救うことがある。
また、神々の中には、人里にあって聖域を持つ神々もいる。
たとえば橋の女神に仕える狛犬たちは、橋から人が落ちたりしないように見守り、また、橋が朽ち落ちないように綻びがあれば修繕していることがある。

概念神に仕える者

概念神とは、正義や愛、真理など、理が神格化され、あがめられている神々のことである。
概念神に仕えた狛犬たちは、概念神が持つ性質を理解しようと努め、それを人々に伝えていく役割を持っている。
例えるならば、雨の女神が降らせる雨は優しき恵みをもたらすこともあるが、その雨が流れをまして田畑を襲うこともある。その際に、彼等は雨を必要以上に防ぐ術を人に説くのではなく、雨と共に生きる術を人に説くのである。
神々と人が共に暮らせるように、互いを助けていくのが彼等の役目である。

流浪する神々に仕える者

狛犬が仕える神々の中には、社も聖域も持たないものがいる。
その神々は旅人を守護する神々であったり、神々間の伝令であったりするので、その神々に仕える彼等もまた大抵移動し続けている。
狛犬たちは、神々が移動する際の足となったり、寝床で一緒に丸まって寝てたりと、神々の生活全般を助ける役目がある。
時折人里に下りると、狛犬たちに暇を与え、彼等を祭りに行かせてみたり、子供たちと遊ばせてみたりすることがあるが、旅を続ける性質ゆえにひとつ処に長く留まれないので、人と彼等とはほぼ一期一会の関係といってもよい。
ただ、時折、人が狛犬を追ってきて、一緒に神々に仕えたというケースもあるという。

子供に仕える者

狛犬たちは、7歳までの子供に仕えることがある。
なぜならば「7歳までの子供は神様からの預かり物」である、という認識が巫で持たれているからであり、七歳を過ぎて、ようやく人として魂が定着したと言われているのである。
そのために、7歳になるまでは必ず何処かしらで子供たちを見守っている。
保護者がいる子供に直接的に仕えるということは、学校や家仕えの場合などを除けば、まず無いといえるが、保護者が何らかの理由で亡くなってしまった場合など、その子供が生きられない状況に陥ったとき、そっとその手を握り、彼等がある程度自立するまで彼等の支えとなって共に生活している。
彼等は独自のコミュニティを持ち、人里はなれたところに隠れ里を作って、そこで子供たちと共に生活し、勉強や生活の術などを教え、助けていくのである。


以上が巫に住まう神々に仕える犬士たちの姿である。


或る少年と狛犬の物語


これは、筆者がある茶屋で団子を貪っている時に、客人が話してくれた物語である。


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その少年は、5つの誕生日にただ一人の親であった母を失ったという。
少年の母は元々病弱であったが、彼を育てるために朝から晩まで働き、無理をして病を患ってしまったという。病を患ってからは少年とその母共々、長屋のご近所や町医者たちがいろいろと面倒を見てくれていたが、薬石効なく、彼女は少年を残して旅立ってしまった。

そして、彼女の葬儀が行われた日。彼は町辻の小さな社に腰掛けていた。
数刻前に執り行われた葬儀の間、彼はけして泣かなかった。笑顔を作って、葬儀を手配してくれたご近所連に礼を述べていた。
実のところ、彼にはまだ死と言うものは良くわからなかったし、母が死んだという実感もなかった。
だが、もう母には会えないということだけは心のどこかで感じていた。そして、自分が孤独になってしまったということ。そのふたつだけが、彼の感じたことだった。
秋口の冷たい風が彼の身体を貫いた。

「あなた、どうしたの?」

不意に後ろから声がした。
振り返ると、そこには優しげに微笑む妙齢の女性が立っていた。着物の後ろから、細く白い尻尾がのろりと覗いていた。

「私で良ければ、どうしたのか話してもらえないかな」

女性は少年の隣に腰かけ、目線を合わせる。ほんのりと暖かな陽射しの香りがした。
少年は彼女の中に、元気だったころの母の姿を見出し、大いに泣き出した。
思い出の中にある母の香りと、女性の香りが似ていたのかもしれない。

「……大丈夫だよ、私がいるから」

肩を震わせ、ひっく、と嘔吐く少年。
女性は彼の肩に手を回し、抱き寄せるように包み込んで頭を撫でる。繰り返し、繰り返し、大丈夫だよと声をかけながら、少年が泣き止むまで。


/*/

少年と女性が出会ってから数日後、二人は少年の長屋を引き払い、女性が暮らしているという山里に行くことになった。
その里には、彼と同じように何らかの理由で親を亡くした子供たちや、親から捨てられてしまった子供たちが住んでいた。

「此処はね、私たちや神さま、藩王さまが作った……そうだね、みんなの心のよりどころ。かな」

女性は何処か誇らしげに微笑んでいった。


その里で、少年は多くのことを学んだ。
読み書き、算数、歴史などに加えて、他の子供たちと料理や農耕の方法も学んだ。夏には祭事が開かれ、年末には鬼の格好をした悪魔が現われて豆当てをしたりもした。
中でも、時折現われる来訪者や神々が語ってくれる物語は、多くの子供たちが耳を傾けた。


次第に彼はこの里の暮らしに順応してきた。
里の暮らしの中でも、彼を導いた女性は常に彼の傍らにあった。里の学校に行くときも彼女が見送ってくれたし、帰ってきたときにはいつも温かなご飯が出来ていた。
彼は女性を姉のように思って慕い、彼女もまた少年を自らの家族のように守り育てた。

少年は暮らしの中でこの里の仕組みを知るようになった。
この里には、黎明の職人と呼ばれた優れた保育士を筆頭に、犬士と呼ばれている種族が暮らしていること。
自分を導いてくれた女性が犬士という種族であったこと。
そして時折、国営の学校に入るためこの里を去る子供たちが居ること。

「あの子たちはもう、私たちが居なくても大丈夫だからね」

女性は何処か寂しげに笑った。それがとても印象的で、少年はいつしか、自分もまた彼等のように出て行く日が来てしまうのかもしれない、と思った。


こうして、二年の歳月が過ぎた。


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少年が七つの誕生日を迎える一月前、彼は町の学校に編入することを勧められた。
寮があるから、暮らしにも困らないし、学力もついていけるだろうからと、女性や里の神々にも薦められ、彼は同意した。
残り一月でこの里を出て、街の学校へ編入することになったとき、少年は女性にひとつ願い事をした。
それは【自分と一緒に町に来てほしい】であった。
女性はそれを聞いて、何処か寂しげに笑みを浮かべながら、頷いた。


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そして、彼が里を出るその日。
朝早くに支度を済ませた彼は、女性に付き添われ、里の神々への挨拶を済ませ、里を出る門の前に立った。
当初は彼女も一緒に里を出ることになっていたが、諸事情により彼女だけ遅れて里を下ることになっていた。


門番の犬は、彼を誇り称えるように深々と頭を下げ、門を開く。
重い木戸が開かれる音が、彼の心に響いた。

「じゃあ、いってらっしゃい、頑張ってね」

女性は眼に涙を浮かべ、彼を抱きしめた。
数日後に会えるはずなのに、なんで彼女は泣いているのだろうか? 少年にはよくわからなかった。

そして、彼は里を下った。
だが、彼女は来なかった。


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幾年かの月日が流れる。

学校を卒業する年になった彼は、もう里で暮らした日々のことを忘れかけていた。
ただ、記憶の何処か奥底で、自分を守ってくれた女性の存在を感じていただけであった。

ある日、行きがけに持たされた小さなお守り袋がほつれてきたので縫い直そうとしたとき、小さな紙が入れ込まれているのに彼は気づいた。

そこには女性の筆跡で、こう書かれていた。

「私の大切な君へ。
これを読むのがいつかはわからないけれど、貴方はきっと私たちのことを忘れかけてると思う。
ごめんね、約束やぶっちゃって。私も一緒に行きたかったんだけど、私はこれ以上、君と一緒にいられないんだ。
君はもう、一人でも大丈夫だものね。 私がいたら、君はきっと私に頼るようになっちゃうから。

ちゃんとご飯食べてる?
ちゃんと毎日歯磨いてる?
予習復習忘れてないよね?
お友達できたかな?

……君のことだから、きっと大丈夫だよね。

おなかすかせちゃだめだよ?
ひとりぼっちになっちゃだめだよ?

もし、何か辛いことがあったら、私たちのことを思い出してね。

一緒に食べたご飯美味しかったね。
一緒に作った竹馬、まだ遊んでくれてるかな。
きっともう、覚えてないかもしれないけれど、私にはどれもこれも大切な思い出です。

あなたと一緒に暮らせて私は幸せでした。

ありがとう。
それじゃあ、さようなら」


少年の記憶の奥底に封じられていた思い出が、徐々に溶けていった。
その女性と一緒に遊んだ日、いたずらして怒られた日、一緒に芋を掘りにいって、その芋で炊いたご飯が美味しかったこと。
いつの間にか、その少年の瞳には涙があふれていた。


/*/

以上が私が茶屋で客人から聞いた話である。
客人は、何処か誇らしげにその物語を語っていたのが、私にはとても印象的だった。
彼が去るとき、その帯にぶら下げられた古いお守りが、彼に寄り添うように、小さく揺れていた。


/*/

作業者:
技:ミツキ
文:御奉梗斗


○編集履歴
2011/06/28 03:04 作業者の名前の誤字を修正しました
2012/08/22:作業者ミツキ:開示内容の追記

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