昔、ある村のはずれに一匹のきつねが住んでいました。
きつねはいつもいたずらをしては村人を困らせていました。
そんなある日、きつねがいたずらをしようと村はずれの茂みに隠れて村人が通るのを待っていました。
けれどいくら待っても人っ子一人通りません。
その日はたまたまだと次の日もまた次の日も待っていたけど誰一人通りません。
心配になったきつねはこっそり村の様子を覗きにいきました。
けれど、いつもは田畑で働いている人々がどこにもいません。
外に人がいないので、寄り合いでみんな集まっているのかと思い、近くの家を覗くと、人が苦しそうに床についています。
隣の家を除いても床についています。
そうして村中の家を探してみて回ったけれど、苦しそうにしている人ばかり。
きつねがいたずらして遊べる相手はどこにもいません。
きつねはいたずらが好きだったけれど、人が憎いわけじゃなかったので人がいなくなるのは嫌でした。
だからきつねは病気を治すための薬を作ることにしました。
そうしてきつねは山や野を駆け回り、ぼろぼろになってようやく薬を作る事ができました。
そのまま届けた所でいたずらだと思われて飲んでもらえない、そう考えたきつねは医者に化ける事にしました。
医者に化けたきつねは村人を診ては薬を飲まして周りました。
医者に変化し続け、看病を続けたきつねが弱っていったけれど、その甲斐あって村人達の病気もどんどんよくなっていきました。
村人達がもう診なくても大丈夫なくらいに回復した頃、きつねはこっそりと出て行こうとしました。
普段であればたとえ変化したままでも気配を消すことくらい簡単な事でした。
でも、疲れきったきつねは足音を立てないようにすることさえできません。
物音に気がついた村人が起きてきたのに気がついたきつねはそれでも一生懸命に逃げました。
けれど、村人達はきつねの薬でもうずいぶん元気になっていたので簡単に追いつかれます。
銃を持って追いかけてくる村人をきつねはもう走って逃げるのは無理だと川へ飛び込みました。
けれども、銃弾がきつねを襲うほうが少し早かった。
なんとか逃げる事はできたけれど、きつねは片足を銃弾に飛ばされてしまいました。



そのころ村人達は医者がいなくなった事に気づき探していました。
医者は村中探し回ってどこにもいません。
探し回って見つかったのはきつねが飛び込んだ場所におちていた薬だけでした。
それでようやく村人達はきつねが医者に化けていた事に気づきました。
けれど、それからきつねが村人達の前に現れる事に二度とありませんでした。
その事を悔やんだ村人達の手によって今ではその村にきつねが祀られているということです。
めでたしめでたし


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最終更新:2008年07月27日 22:57