(注:このページの内容は、当サイト管理人の開米瑞浩
@kmic67が立てた仮説に過ぎないことを念頭においてご覧ください)
「算数のテストで点を取る」ために、おおまかに2つのアプローチがあります。ここではリアルイメージ(RI)解法とテキストパターンマッチング(TPM)解法と呼んでおきます(いずれも開米がこの記事を書くためにつけた名前ですので、一般に確立した用語ではありません)。
リアルイメージ解法というのは、「出題文」から「実世界でのイメージ」を脳内に描き、そのイメージが意味するところを読み取って式を起こして計算する、という方法で、算数/数学を学ぶときは本来こうあるべき、という方法です。
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一方、テキストパターンマッチング(TPM)解法というのは、リアルイメージではなく、「出題文」というテキストが「○○のパターンに当てはまるときはこういう式を立てる」という、パターンマッチで式を立てる方法です。(プログラミングをされる方は正規表現のパターンマッチングなどを連想していただくと良いでしょう)
実例として最も単純なのは 「たし算だから、問題文の数字を2つたす」というのがその例です。問題が比較的単純なうちは、リアルイメージを持たなくても「問題文というテキスト文字列のパターンマッチング」である程度答を出せてしまうわけです。
スラッシュドットのこの
コメント では、そのパターンマッチングの例が他にもいくつか書かれています。
- たし算の単元だから、問題文中の2数をたす
- ひき算の単元だから、問題文中の2数のうち大きい方から小さい方をひく
- かけ算の単元だから、問題文中の2数をかける
- わり算の単元だから、問題文中の2数のうち大きい方を小さい方でわる
いずれも「リアルイメージ」ではなく「テキストパターンマッチング」の解法なのはおわかりでしょう。
断言しますが、テキストパターンマッチング(TPM)をやっているうちは算数も数学も絶対にわかりません。(あらゆる科目について言えることではありますが)
そこで、算数/数学を教えるときに教師が気をつけなければならない重要なポイントは、
【RI解法の推進】
TPMをやっている子供をいかに早く見つけ出して、
リアルイメージで考えるように仕向けるか
だと私(開米)は考えます。
では、「かけ算の順序を固定して『1あたり×いくつ分』の順で書くように厳しく指導する」方法は、この「RI解法の推進」という点で有効なのでしょうか?
ひょっとしたら、「TPMの下手な子を見つけ出して、TPMがうまくなるようにしているだけで、RIの促進には役に立っていない」という可能性はありませんか?
「じゃあ・・ウサギには2本の耳がある。ウサギは4羽いる。耳は全部で何本?」
「ずつ、が入ってないからどっちが先か分かんない。答えは8本だけど」
「ずつ」という言葉がついているかどうかで判断する、という、これは明らかにTPMをやっています。この他にも類似の「テキストパターン」の例をいくつかあげると
- 「人にものを配る問題って、人数が後ろに来るんだよね」
- 「答が『○本』を求めているから、同じ単位の数字が先に来るよね」
↑この種のテキストパターンマッチングが通用する間は、リアルイメージを描かなくても対応できてしまうわけです。
さらにもうひとつ見てみましょう。TPMを続けていると、問題が複雑になるにしたがって破綻します。たとえば問題が分数のわり算になると、
「りんご2個を5人で分けました。一人何個になりますか?」
という問題に対して
わり算の単元だから、問題文中の2数のうち大きい方を小さい方でわる
というパターンを適用すると、
「5÷2=5/2 答え5/2個」
とやってしまうわけですね。
だから、「1あたり×いくつ分」という計算順序を指導しなければいけない、と、順序固定派の先生は主張します。「1あたり×いくつ分」を守らせることで、「問題文を読んで、どれが1あたりなのかを考えるようになるから」効果がある、というわけですが・・・
その効果はホンモノですか?
単にTPMがうまくなるようにさせているだけではありませんか?
たとえば先ほど出た「りんご2個」の問題にしても、
わり算の単元だから、問題文中の2数のうち大きい方を小さい方でわる
というパターンでは通用しませんが、
「1人何個になりますか? と聞かれたときは、人数の数字でわればいい」
というパターンなら、やっぱりリアルイメージなしでも通用します。
「1あたり×いくつ分」という指導をしておけば、「わり算でつまずく子を減らせる」と、順序固定派の先生は考えていることでしょう。
でもそれは本当にホンモノの成果ですか? 単にTPMがうまくなっているだけだったら、それは問題を先送りしているだけです。
最終更新:2015年12月02日 23:17