……なんだこれは?
パタン
一度開いたドアを閉めた、ここはSOS団の部室ってのは間違いない。
今日は担任の呼び出しで遅れた俺、間違いない。
ノックすると朝比奈さんの声が聞こえてくる。
うむ、今日も癒される良い声だ。
ドアを開けると……やはりおかしい。
窓際でハードカバーを読み続ける長門、一人でニヤケ顔をしながら詰将棋を解く古泉、お茶を用意してくれている朝比奈さん………
ハルヒはどこだ?
 
古「おや、涼宮さんはご一緒でないのですか?」
それは俺のセリフだこのニヤケ顔。
あいつは今日も俺の背中をペンで突っ突き何か思いついた顔でニヤニヤしながら机(窓)に向かっていたんだぞ。
朝「でも部室には来てないですよ?」
そんなことはないですよ。
何せ走って向かって行ったのを見ましたから。
長門は見なかったか?
長「見ていない」
あ~そうか、俺の心配より本が気になるか。
 
「ちょっと俺、ハルヒを探してきます」
と告げると部室を飛び出した。
 
さて、走り回ること1時間……いねぇ。
帰ったのか?
自分で言って笑いがでるな、ありえねぇ。
まだ調べてない場所は?
1時間も走ったからないはずだ。
 
いろいろ考えながら廊下を部室に向かい歩いていると気付いた。
 
「部室の中調べてねぇな」
 
部室に戻る足を自然と早めて2分で部室に着いた。
もし開けてからハルヒがいなかったら……
俺は首を横に振ってドアを開けた
 
が、ハルヒはいない。
何なんだよ、これ。
ハルヒがいないとこんなに辛かったのか?
 
「みんな、ハルヒを探してくれないか?どこにもいないんだ」
と言うしかなかった。
 
みんないつもの様子だったが一人だけおかしい、朝比奈さん?
何故そんなに笑いをこらえていらっしゃるので?
 
ハ「お勤めご苦労!!バカキョン!」
 
「………」
絶句した。俺は嵌められたのか?
とか考えるのと俺の目から涙が出るのが同時だった。
 
ハ、朝、古「えっ!?」
長門も少し驚いていた……のかもしれない、よくわからん。
はずぃ、何泣いてんだ俺。
「帰るわ」
一言残して部室を立ち去った
ハ「ちょ、ちょっと!キョン!?」
ハルヒの声が遠ざかるが歩く、歩く。
ひたすら歩いて落ち着こう。とかいうヒマもなくハルヒに追いつかれた。
情けねぇ。
 
ハ「待ってってば!騙したのは謝るからさ!……そんなに騙されたのが悲しかったの?」
「違う、お前が無事で安心したんだ。」
ハ「!?」
 
バカか俺は。
なんてセリフを吐いたんだ。穴があったら入りたい、窓から飛び下りるのもいいかもしれん。
今はまともな言葉は出ないからハルヒがびっくりしてる間に帰って落ち着こう。
 
俺は走って家まで帰った。
ハルヒは立ち尽くしていたから走る必要はなかったがな
 
とりあえず格好悪いことこの上ないので誰にも見つからないように部屋に駆け込んだ。
あ~、なんだってんだ。
俺ばっかり孤独感味わったりしてるな、たまには古泉と代わってもらいたいところだ。
などと一人でグチを垂れていると
 
インターホンが鳴った。
誰だ?
 
……全員来やがった。
まぁ上がってもらうとしようか。
 
朝「キョンくん、ごめんなさい!」
まずは朝比奈さんが謝った。あなたの謝る姿を見ればなんでも許してしまいそうですよ、今回の件以外は。
 
次に謝ったのが長門と古泉
こいつらは謝る気があるのかわからん。
長門は相変わらず機械的で、古泉に至っては講釈垂れるように言い訳しやがる。
 
そしてハルヒ……の前に3人とも帰って行った。
これは指示されたんだろうな、このSOS団の団長様に。
 
「さて、どういうことだったんだ?」
と、俺は尋ねた。
 
ハ「最初はあたしがロッカーに隠れて焦ったキョンを後ろからびっくりさせようと思ったの」
ハ「そしたらネタばらしする前にキョンが飛び出して……」
俺のせいなのか?
と思ったがそんなはずがあるわけない、しばらくは無口だ。
 
ハ「それでしばらくしたら有希があんたが帰って来るって言うからもう一度やり直そうとしたら……」
 
「なんだよ、俺はSOS団の遊び道具になったわけか。」
ハ「ち、違……」
「違わないだろ?俺一人お前がいなくなったのを心配してたのがアホみたいだったな」
ハルヒは泣き出した。
俺はこれでよかったのか?
自分の中にある最大の感情、『ハルヒが無事で安心した』という気持ちを隠して強がっている。
それでよかったのか?
 
泣いているハルヒを横目に部屋を出ようとした……が、ハルヒが膝にしがみついている。
 
「離せ」
ハ「やだ!」
「お前は駄々っ子か」
ハ「お願いだから許して!キョンがいないとあたし……」
俺は一つ溜め息をつき、ハルヒを抱き締めた。
 
ハ「え!?キョ…キョン?」
何故こんなことをするかわからん。
が、とりあえずハルヒの泣き顔を見るのは嫌だからな。
 
「約束をしろ、2度とこんな気持ちにさせるようなことはするな。
相手が誰であろうとだ」
 
ハルヒは黙ったまま大きく首を縦に振った
 
「そして泣くな、お前は笑ってないとダメだ」
 
ハルヒは泣き笑いになった、言っちゃ悪いが面白い顔になってるな。
 
「全部わかったら俺にキスしろ、迷惑料としてな」
 
ハルヒは戸惑っていたが意を決して近付いてきた
 
俺達は灰色の世界以来の2度目のキスを交わした。
 
次の日、俺は何ごともなかったかのように部室に入ると全ての団員からお詫びの品をもらった。
 
軽い王様気分だったがそれも束の間
この明るい一声でいつもの日常に戻った。
 
「さぁ!緊急ミーティング始めるわよっ!!」

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最終更新:2021年02月23日 18:33