※設定
キョン達はもう二年生、(みくるはもちろん三年。出てこないかもしれんがww)
いろいろあって、ハルヒは新年早々、世界を作り変えようとする、


キョン「ハルヒ、お前、幸せの青い鳥って知ってるか?」



『普通の』高校生なんてものは、実際になってみると、
中学生の頃思い描いていた物からは程遠く、
ただ淡々と消化されてゆくだけのごくごくありふれた日常でしかなく
むしろ、これなら中学生の時のほうが面白かったかもしれない、
ふと俺にそんなことを思わせる。
----------------------------------------

「まさに俺とお前は今、ミチルとチルチルなわけだ。」
おれは夜空に向かって自嘲気味につぶやいた。


でも、
----------------------------------------

「・・・あの日、あなた達が閉鎖空間から帰還した日を境に、涼宮ハルヒの力は失われた。」

長門がそう言ったのは、新学年になって間もない、5月のある日のことだった。

6限目を終え、いつものように部室来てみると

コン、コン、ガチャ
「なんだ、長門だけか。」 
コクリ・・・
そこにいたのは宇宙人製ヒューマノイドインターフェース、長門有稀。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
しかし、この沈黙のやり取りも、何百回と行っていると慣れてくるもんだ。
で、いままでのその何百回の経験から、これからのことを予測すると、
俺はこのまま誰かが来るまで、ボー・・・っとして過ごすことになりそうだな・・・

しかしそうはならなかったわけだ。
---------------------------------------------------

あの日って・・・俺とハルヒが閉鎖空間で・・その・・・なんだ、まぁいい。あの日だな。
で、力が失われた、って それはどういう・・・

「つまり」
長門は顔をこちらに向け、喋りだした。
「つまり、あなた達を監視するという私の任務は終わった。」

その言葉を聞いた時、俺は思わず椅子から立ち上がっていた。
とても嫌な予感がしたのだ、あの時、長門が世界を改変してしまった時のような。
しかし、それは杞憂であるということをすぐに知らされることとなる。

「最後まで聞いて。
この端末の処理をどうするかは私にゆだねられている。
朝比奈みくる、古泉一樹も同様。
ここに留まるか、元いた場所へ帰るかは本人達の意思にゆだねられている。」

それを聞いて俺はホッとして、椅子に腰掛けた。
よかった・・・・古泉はともかく、
朝比奈さんや、長門と離れ離れになってしまうなんて絶対に嫌だ。
高校に入ってから、ハルヒや長門、朝比奈さん達と過ごした一年間は、特別なものだった。
きっとみんなだってそう思っているハズだ。
そんな特別な経験を共にした俺達には一種の絆みたいなものがあったのだ。

「しかし、古泉の機関もそうだが、未来人である朝比奈さんがよく残れたな。
未来に何らかの改変をもたらしてしまうんじゃないか?」
それともこれも既定事項ってやつなのかね。

長門は俺の目を見つめたまま、その質問に答えた。

「ここは民主主義国。古泉一樹には選択する自由が与えられている。
それに、朝比奈みくるにとってこれは既定事項。」

なるほどね。で、長門はどうするんだ?
どうするかはお前の意思にゆだねられてるんだろ?

「私は、あなたにそれをゆだねたいと思っている。」

俺は長門の口から飛び出した言葉の意味を理解するために、
何度もその言葉を反芻する必要があった。

俺に?俺に任せる?なぜ?そういや前にもこんなことあったな・・・
長門の目を見て俺は答える。
「・・・・・・お前はどうしたいんだ?」

いろいろ思案をめぐり合わせたが、かろうじて言えたのはこれぐらいだった。

すこしうつむいて、長門は言う。
「涼宮ハルヒの力が失われた今、私が存在する意味を私には見出せない。」

長門・・・それって、、、

俺はあくまで長門の意思を尊重するつもりだった。
だって、実際それが一番正しいだろ?
いや、なにが正しくて何が正しくないのかなんて、それこそ人間は万物の尺度。
明確な線引きなどできやしないのだ。だから俺は俺が正しいと思うことが一番正しいと思う。

で、長門の意思を汲むことが正しいことだと俺は思った。(ここが民主主義の国だってこともあるしな。)

「・・・・・・わかった長門、お前は             。」


長門は、顔を上げ、一言
「・・・そう」  と答えただけだった。



「ありがとう」

--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------

そんなこんなで、俺達は「普通の」生活に、至極普通の学生生活に戻ったのだ。
まぁもっとも、ハルヒの性格はあのままだが。
それでも、入学当時のハルヒと今のハルヒを見比べると、だいぶアイツは変わったと思う。

今のハルヒは・・・・
んー、まぁちょっとエキセントリックな美少女高校生ってとこだ。
…ま、悪くはない、か。

--------------------------------------------------------

ハルヒが変わっても、俺やこの学校が変わることは無く、
いつものように退屈な授業を6限分受けて、
放課後はいつものように文芸部へ行き、そこで我等が団長様の無茶な企画に付き合ったり、
朝比奈さんの煎れてくれたお茶を飲みながら古泉とゲームに興じたり、
まぁ言うなればいつもと変わらない、SOS団の活動をしていた訳だ。

まったく変化がないわけじゃない、適当に変化があり、適当に秩序が守られている、
そんな毎日を淡々とこなしていく俺と、SOS団のみんな。

そりゃあ、、、そりゃあ少しは寂しい気もした。
もう俺はどんな宇宙人的、未来人的、超能力的なことともめぐり合うことはできないわけだ。

「キョン!もう部室しめちゃうわよ、早く出た出た。」
幸せの青い鳥・・・・か。

------------------------------------------------------


ハルヒと2人で坂を下る。二年目にもなると、
あれだけ嫌だったこの坂にも結構愛着が湧いてくるもんだ。
人ってのはたくましい生き物だな。まったく。


冬は終わって、もう梅雨がくるってのに、日が落ちるのは早い。

まだ6時なのに、もう外はまっくらだった。
「ねぇ、キョン」
ハルヒが唐突に口を開いた。
「キョンはさ、最近楽しい?」
なにがだ。
「学校・・ってゆーかSOS団とか、」
もちろん楽しいとも。

宇宙人、未来人、超能力者、世界一ぶっ飛んだ面子のそろったSOS団だ。
楽しくないわけがない。
…まぁ今は未来人を除いてみんな、ごくごく普通の人間だが
それでも考えてみろ、古泉や朝比奈さんから肩書きを除くと
それこそいけ好かない、ごくごく普通の美形男子高校生と
これまたごく普通のかわいらしい女子高生ができあがってしまうだけだ
しかし、超能力者や未来人がどんな肩書きになろうとも、それは古泉と朝比奈さん以外の何者でもない。
つまりだ、俺がいいたいのは、
俺が今、好きなのは超能力者や未来人ではなく、あくまで古泉と朝比奈さんである、ということだ。

それに長門やハルヒから肩書きがとれたところで、こんなやつらは日本に2人といないだろう。
世界一とは言わないが、十分今のSOS団だってぶっ飛んでるわけだ。

---------------------------------------------------

「ふーん・・・あんたは楽しいのね。」

「なんだ、ハルヒ。お前は楽しくないのか?」

「んー楽しくないわけじゃないんだけど・・なんか物足りないっていうか。」

まぁ確かにそうかもしれんな。俺も多少は現実に物足りなさを感じている。
これは否めない。

しかし、
俺はいつかのことを思い出して、笑いながらハルヒにこう尋ねた
「ハルヒ、お前、幸せの青い鳥って知ってるか?」

「何よ!生意気ね、キョンのクセに、知ってるわよ それぐらい。それがどうしたの?」

「いや、ハルヒ、お前こんなことないか?
小学生のころ、早く中学生に上がりたい、って
きっと、中学校ってのはここよりも面白いものがあふれてんだろーなー、
って根拠のない期待っていうかさ、
でも実際中学生になってみたら、『なんだこれ、俺はこんなの思い描いてたんじゃねー』って。
これなら・・・・
「これなら、前のほうがよかった、って?」
ハルヒは俺の最後のセリフを言うと、こう続けた。
「何度も思ったわ。小学校から中学校に上がった時も、
中学校から高校にあがってスグの時も。まぁ、あんたと会って、SOS団を作ってからは、そんなことなかったけど、」

確かに俺もそんな感じだな。ただ俺とハルヒの違いは、現実に妥協したことだ。
『まぁこんなもんか、』って中学時代も、無難に生きてきた。
もちろん、校庭に落書きをしようなんて考えもしなかった。
高校ですらコイツと出会わなかったら、そんな感じだったろうさ。
そういう意味ではSOS団と、ハルヒと出会えたことに俺は感謝している。

「でも、ホントのこと言うと、最近はちょっと、『前のSOS団のほうが良かったなー』、なんて思ったりしちゃって」

ちょっとだけね。
そうハルヒは言って、少し歩みを速めた。

俺より二、三歩前にいるハルヒの背中は、なぜだか少し小さく見え、ちょっぴり寂しそうだった。

俺はハルヒに呼びかけた。
「ハルヒ」
ハルヒは立ち止まってこっちを見る。
「高校卒業して、大人になって、
今から一年前のSOS団のことを思い出したら、大人の俺達はどう思うんだろうな。」

「そりゃあ・・・そりゃ、楽しかった。面白かった、いい想い出だ、って思うんじゃない?」

「だろ? でもなんだかんだ言って、
今のSOS団のことを思い出しても、そう思うんじゃないか?
『いい想い出だ』って・・・」

ハルヒは少し考えてから、
「そうかもね・・・」と呟いた。

俺は続ける。
「結局さ、青い鳥の正体は今のSOS団なんだよ。
これからでも、今まででもなく、今のSOS団を楽しもうぜ、
そりゃ去年よりは少しグレードダウンするかもしれねぇけど
それでも今楽しまなきゃ、逃げた後じゃ、青い鳥にはもう会えない。」

「確かに・・・そうね・・・





確かに!キョン、アンタの言うことは分かるわ!!!」

何事かと思ったら、
そこには例の100Wの(これも久しぶりに見る気がする)笑顔のハルヒがいた。

----------------------------------------------

「けどね、キョン!」唾を飛ばしながらハルヒが言う。

「それは、、アンタが言ってるのは結果論なのよ。
魚心あれば水心ありっていうじゃない!要は結果じゃなくて、過程なのよ!!」

…お前、それ微妙に使い方間違ってないか?





まったく・・・・

そこには青い鳥がいないと分かっていても、
探さずにはいられない。そういう女なのだ。涼宮ハルヒとは。
そして、青い鳥探しに付き合わされるのはいつも俺。
やれやれだ・・・・




「まさに俺とお前は今、ミチルとチルチルなわけだ。」
おれは夜空に向かって自嘲気味につぶやいた。
でも、

これだけは言わせて欲しい。






おれは、やや暴走気味に突っ走るハルヒや、
それにウダウダいいながらも従う自分が大好きだ。
だから、別に見つかっても見つからなくてもいいのさ。
青い鳥なんて。


「何してんの!早く帰るわよ!」

…それに、もしかしたら見つかるかもしれないじゃないか。

こいつと一緒なら、な。
------------------------------------------おしまい

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年01月14日 02:19