「さあ、上の展望スペースへいくわよ、もたもたしてると置いて行くからね」
「おい、ハルヒ、飛ばしすぎだ、古泉たちが追いついていないぞ」
「大丈夫よ、目的地わかってんだから さあ、キョン、きりきり歩く」
走っているって、おまえ

いつものようにSOS団は不思議探索の真っ最中である
この暑い中、本当によくやるもんである
ただいつもと違うのは、今回はハルヒのマクロ的に不思議を探すとかで
組み分けなしで、市内で一番高いこのビルの展望フロアー行くべく
エレベーターに乗り込もうとしていることだった。
まあ、冷房が効いているビルの中ってのが唯一の救いかもしれない

で、冒頭に戻ると、俺とハルヒは2人だけ先のエレベーターに乗り込んで
しまったのである

「いい、いままでは、小さな視点で不思議を探してたのよ でもね、もっと
大きな視点も大事だと思うのよ、たとえば、2本になったり3本になったりする
煙突とか」

えーハルヒさん、一体頭の中は昭和何年代なんでしょうか
いまどき、そんなもん 不思議のうちにはいるかい
なんてことは、思ったところで決して口にしない、さかしさは持ち合わせている
俺ではあるが、これくらはいいだろう
「やれやれ」

「なんか言った キョン」

その時であった

ガクンという振動とともにエレベーター内の照明が消えた

「停電」
「停電か」

落ち着け 落ち着け
まずは深呼吸だ

まっくらとなってしまった、空間、ここにいるのは俺とハルヒだけ
いつぞやの閉鎖空間を思い出してしまうが、今回は現実世界
白雪姫では助けはこない

そうだ 携帯

暗闇の中で携帯の明かりがともる

「圏外か」

エレベーターないに設置された非常通報装置も応答はない
停電に影響に巻き込まれたのか、広範囲なので対応できないのか

外との連絡手段はとだえてしまったようだ

えーい いまいましい

ハルヒは
暗がりの中で携帯の小さな明かりがなんとも頼もしい

「おい ハルヒ 大丈夫か」

「なによ、これ、ぜんぜんなってないじゃない」
とりあえず、大丈夫なようだ

「外と連絡がつかない、どのくらいの規模の停電なのか見当もつかない」

「だから なに!」
不機嫌にならなきゃいいが、こいつの不機嫌は世界を巻き込む

「いや、多分空調も切れるだろう、少しでも楽な姿勢でいるほうがいい」

「そ、そうね」
えらく弱気な返事 本当に大丈夫かこいつ

その場所で、座りこむのを確認して、携帯を閉じる、闇が空間を支配する

「なんで、携帯とじちゃうのよ」

「いつまでかかるか、わからないんだ、バッテリーを無駄にはできない」

「そ、そうよね」

俺はこの暗闇でハルヒの顔が見えないことに安堵しつつも、弱っているハルヒの
顔がみれないのを少し残念にも思っていた。

稀代の変人なんて称号をもらっていたって こいつも一人の女の子なんだ
そんな当たり前のことを思う

「なんか 話してよ」

「そうだな」

俺はあの4月に初めてハルヒに出会った時のことから話を始めた

自己紹介のこと、髪型のこと
朝比奈さんの衣装のこと
長門の本のこと
古泉とのゲームのこと
合宿でのこと、
SOS団のこと
そして俺自身のこと
ハルヒのこと 

こうゆうこっぱずかし話をするのに、相手の顔が見えないというのは
結構いい状況かもしれない
そういえば、ハルヒとゆっくり話をするのも久しぶりかもしれない

ハルヒは別段、口を挟むでもなく、俺の話をただ聴いていた
暗かったからどんな表情だったかはわからないが

どのくらいそうしていただろうか、
閉じ込められた不安も
空調の切れたた暑苦しさも
微塵も感じていなかった

ふと、腕に感触が伝わる ハルヒの手が、俺の腕をつかんでいる
まるで幼子が おいてゆかれるのを察したかのように

ハルヒが黙っていてくれることに感謝して
その手の上にそっと自分の手を重ねた

「キョン わたしも                    」





軽い振動とともに狭い室内に明かりが戻る
どのくらいの時間だったのだろう、エレベータは再び
なにごともなかったかのように上昇を始めた

ハルヒの最後の言葉は正直いって、聞き取れなかったのだけが残念だ

最上階につきエレベータはその重かった扉をあけた
まばゆいばまりの外の日差しが飛び込んでくる

「えらいめに あったわね、キョン、
SOS団としては早速、この事故の原因を究明する必要があるわ!」

 すっかり、元にもどったハルヒの声を聞きながら、
 3人がどこにいるんだろうと考えている俺がいた。




番外編


朝比奈「あっ キョン君と涼宮さん先にいっちゃいましたよ」
古泉「大丈夫でしょう、行き先は上の展望スペースですから さあ、われわれも」
長門「・・・」

どうたら遅れた(宇宙人と未来人と超能力者の)三人もエレベーターに
乗り込んだようです

朝比奈「あれ」
古泉「停電ですね」
長門「環境情報の取得を開始」

朝比奈「どうしましょうか」
古泉「とりあえずは外の状況を」
長門「この地域に主要電力を供給する電力線に大規模な事故が発生
現在原因を究明中」

朝比奈「てっとりばやく外にでちゃいます?」
古泉「え」

朝比奈「TPDDで外に、時間移動分を微少にすれば、単純に空間移動できます」
古泉「上じゃまずいか、下のロビーあたりで、三人一緒で問題ないですか」
朝比奈「この程度の距離なら私の権限で大丈夫です あ、長門さんジャンプ先の
確保をお願いします、突然人ごみの中って訳にはいかないので すみません」
長門「了解した」

朝比奈「では、お2人ともわたしの手を握ってください」

朝比奈「はい、着きました、長門さん、環境操作ありがとうございました」
古泉「けっこう、きますね、これ」
朝比奈「大丈夫ですか、なれないと酔うんですよこれ 長門さんは大丈夫そうですね」
長門「問題ない」

朝比奈「ひぇー ビルの中暗くなってますねぇ」
古泉「結構大変なことになってますね これは時間がかかりそうだ」
朝比奈「でも あっついですね、キョン君たち大丈夫なかぁ」
古泉「空調きれてますね、このビル自家発電への切り替えどうなっているんでしょう」
朝比奈「とりあえず外でませんか もうあつくって」
長門「了解した、遠隔での監視を続行する」

朝比奈「あ、そとのコンビニでアイス配っている、もらってきますね人数分」
古泉「停電じゃ 商品まるで無駄になりますからね」
長門「かき氷がいい」

朝比奈「ふぃーやっと一息ついたって感じですね、あれ、古泉君、あっちの方は
大丈夫ですか」
古泉「ええ、あの空間も発生していないようですし、まあ、危機で2人で密室ですから
なんとかよろしくやっているんじゃないんですか つり橋効果って言葉もありますし」
長門「さくさくさく」



長門「通電の再会を感知、あと3分15秒でこのビルの電源が回復する」
朝比奈「さぁて」
古泉「そろそろ行きますか」

      3人が展望フロアで2人と再会したのは、この7分後のことであった

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最終更新:2007年01月14日 02:18