「キョン!お手!」
「わんっ」
何で俺が、こんなことをしているのかと、
「そのままおかわり!」
「くーん?」
思われそうなのでキッパリ言っておく。
これは断じて俺ではない。ハルヒが勝手に考え付いたことである。
「やっぱりバカキョンはバカキョンね!
お手のおかわりも出来ないのに世界制覇なんて出来ないわよ!」
ハルヒ、それは何の世界制覇なんだ?ブリーダーコンテストとか言うやつか?
俺はよくわからんぞ、ああいうの。
「お手っ!おかわり!」
「わんっ?」
「あー、もう!ダメダメ!」
ダメって言われてもなあ・・・困ったもんだ。
とりあえず、読者の皆さんに何故今このような状況なのか説明したいと思う。
 
それは昨日の部活のときのことだ。
放課後、部室に行くと珍しくハルヒが長テーブル席に座っているではないか。
そしてうーん、とか んー?とか唸っている。
「キョ、キョン!来てたの?どどど、どうしたの?」
おまえこそどうした。こんなところでんーんー唸って。
「あ、ああー。聞いてくれる?私ペットをね、飼い始めたんだけど・・・」
猫か?シャミセンの相手にいいんじゃないか?
「猫じゃないの。犬よ、犬!
阪中さん、いたでしょ?あの子の犬見てて、私も飼いたいな・・・って思ったのよ。」
で、飼い始めたのか。
「そう。阪中さんちみたいな、高級犬じゃないけどね。」
名前、なんて言うんだ?やっぱ主人に似て獰猛なのか?
「な、名前?まだ決めてないわよ!それに獰猛じゃないと思うわ!まだちっちゃいし・・・
だ、団員の誰かにね、名前は決めてもらおうかと思ってたけど、面倒だからあんたで良いわ!」
そんなんでいいのか?俺ネーミングセンスないぞ?
「いいわ、あんたが決めて。」
ポチとkゴフッ
俺の腹に強烈なパンチがお見舞いされた。あっぶねえ、あやうく昼飯リバースするところだった。
「このバカキョン!そんなありきたりなのダメよ!ダメダメ!!」
じゃあ・・・ハチkアベシッ
「だーかーっらーっ!!それもありきたりよ!!」
なら、その犬を実際に見て決めたい、うちに連れて来てくれないか?
「は?そんな面倒なことする暇があったら散歩とかしつけしてるわ!」
じゃあ決めてやらん。
「え、ええっ、あ、あんたが決めないと死刑よ!死刑!」
死刑は嫌だが顔も見ずに名前をつけるのはもっとどうかと思うぞ?
ちゃんと考えてやるから、な?いいだろ。
「わ、わかったわよ!そこまで言うなら行くわよ!もう!」
さて、どんな名前にしてやろうかね。あいつのことだ、変な眉毛犬だったりしそうだな。
そうだったら、芋眉毛とか・・・いかん、あれ思い出してしまった。
 
「じゃあ、あとであんたんち行くからちゃんと居なさいよ?」
へーへー、わかってますよ。特に用事もないから今日はずっと家に居るつもりだ。
どんな犬を連れてくるのかね、楽しみだ。
「キョンくんおかえりー!」
むおっ。妹よ、いくら家の中だからってへそ出しながら歩くんじゃありません。
「あっ、みちゃだめっ。てへっ♪」
わざとか、わざとなんだな・・・
「っと、妹よ。今日はハルヒが来るからシャミセンと自分の部屋で遊んでなさい。」
「えー。わたしもはるにゃんと遊びたいよーっ!だめー?」
俺の腕に捕まってばたばたするんじゃない、痛いから、いたっ、いたいって。
「今日はちょっと決めなきゃいけないことがあるらしいからダメだ。」
「でもでもでもー。」
一応こうでもしてシャミセンを避難させておかないともし獰猛だったときに困るからな。
ピーンポーン。
む、もう来たのか。早いな。ほら、シャミセンと行った行った。
「むーっ。」
 
「ちょっと、キョン?早くあけなさい!」
「わんっ、わんっ」
はいよ、今開けるから待ってくれ。
「こら、ほえないの!」
ほお、柴犬か。日本系の犬も可愛いもんだな。
「でしょ?で、どうすんの?名前。」
いけない、考えなくては。どうする・・・?
「んー、とりあえず俺の部屋に行こう」
「もしかしてあんた、浮かばないとか?」
げっ、やっぱり鋭い・・・何か話題を振ってごまかそう。
「とっ、ところで何でそいつにしたんだ?」
 
するとハルヒは少しうつむき、
「あ、あんたにちょっと似てるかなー、何て思ったのよ。ちょっとよちょっと。」
へ?俺に似てる?
「ほら、このやる気のない目とか・・・ってあんたは私になな、何を言わせてるの!」
なんでこいつは耳が赤くなってるんだ?風邪でも引いたんだろうか・・・
「お前、風邪引いてるのか?耳、赤いぞ」
「かか風なんてひひ、引いてないわよ!!耳が赤いのも気のせい!!あっ!そうだ!」
ん?どうした。
「キョン、悪いけど今、名前決めたわ!」
おおい、それじゃうちに来た意味がないじゃないか。まあいい、どんな名前だ?
「それでは発表します・・・!!」
なぜか思わずごくっとつばを飲んでしまった。しかしこのことを後悔すべきだったな。
なぜならハルヒは呆れるような名前をつけやがった。その犬の名前は、
 
「キョン2号です!!」
 
ここ、笑うところ?
「・・・・・・・・・」
「な、なによ!」
「それはマジで言ってるのか?」
「マジよ、大マジ!すっごいマジ!!」
何で俺のあだ名なんだ、しかも2号って・・・
「あんたに似てるし、1号はあんただからよ」
「・・・そんなんでいいのか?」
「いいのっ、私がつけたんだから文句言わないでよね!」
と、ここで回想は終わりである。
 
「やっぱあんたにクリソツよね!おかわりも出来ないなんて!」
クリソツってあんたはいつの人間だ。それに俺は犬じゃないからお手すらしないぞ。
まあ、朝比奈さんに言われたらしちゃうかもしれないが・・・
「今度の市内パトロールまでに芸を仕込まなきゃね!」
またパトロールするのか。ちょっと久しぶりだな。
「そ。そこで他の団員にお披露目するのよ!
このバカキョンをあんたより忠実ないい子にしつけてやるんだから!」
なんだそりゃ、それじゃ俺がまるで犬よりしつけが悪いようじゃないか。
「似たようなもんよ。」
そりゃひどいぜ、まったく・・・
「でも・・・そんなところが好きかな。あ、い、いまのあんたに言ったわけじゃないから!」
ぼそぼそ言われたので余り分からなかったが、今なんて・・・
「気にしちゃダメよ!気にしたら死刑と罰金だから!」
やれやれ・・・死刑も罰金も嫌だぜ。俺も財布もまだ生きていたいからな。
ま、そんな団長さんが大好きだぜ、俺も。
 

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最終更新:2020年08月23日 03:32