俺は雨の中傘もささずに自転車を走らせていた。
どうして俺がそんな熱血漢よろしくびしょ濡れ全力自転車疾走しているのかというと、まあどうということはない。
例の如く素敵団長様こと涼宮ハルヒがらみである。
傘をさしていなかったのは別に俺が雨に濡れながらのサイクリングをこよなく愛していたわけではなく、ただ&&そう、このときの俺はそりゃあもう驚天動地を通り越して呆然自失していたからな。

 

事の始まりは古泉からの電話だった。

 

「もしもし!?」
『おや? 遅かったですね、何かあったんですか?』
「何でもねぇよ」
『そうでか。それでは、いきなりで申し訳ないのですが、今すぐ市立病院まで来てください』
「いきなりそんなこと言われてもな」
『すみませんが一刻を争う事態なんです。取り乱さず落ち着いて聞いてください』
電話越しの古泉の声はいつになく真剣だった。
「何だ? もったいぶらないでさっさと言え、俺は早いとこ寝ちまいたいんだ」
今日はいろいろあったからな。もうヘトヘトなんだよ俺は。
古泉は何のつもりかたっぷりと間を置いて、次のようなことを宣った。

 

『実は、……涼宮さんが、先程交通事故におあいになりました』

 

「……あのハルヒがか?」
『ええ、あの涼宮さんが』
「古泉、くだらない冗談はよせ、そんなブラックジョークを笑って済ませれるほど俺は人間ができちゃいないぞ」
『我々もそう思いたいのは山々ですが、これは歴とした事実なのです』
古泉の声はさっきにも増して真剣そのものだった。
「……本当、なのか?」
『ええ、えらく本当です』
「……」
あのハルヒが交通事故だと?そんな馬鹿な話があるか。
あいつが交通事故にあうなんてそんなの起こりうるはずがない。
だってあいつは自分の周りの環境を……自分が望むように変えることが……

 

『お気づきになりましたか?そうです。涼宮さんは望んでしまったのです』

 

『自らが交通事故にあうことを』

 

俺は古泉の言葉の続きを聞きもせず、気がついたら病院へ向かっていた。

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最終更新:2020年03月12日 16:22