いや、なんというか・・・俺は昨日に続いてまたハルヒを『おひめさまだっこ』している。
雰囲気と勢いでハルヒを抱き抱えてしまったものの・・・
先程交した会話が会話なだけに、なんともいえない心境だ。
ハルヒも同じ心境なのだろうか、黙って前を向いたままだ。
すると突然、ハルヒが何かを思い出したように・・・
「ねえ、キョン。」
!?
「もういいわ、痛み止も効いてるし。歩けそう。」
あ、 あああそうか。
今ゆっくり、下ろしてやるから・・・。
俺はハルヒと並んで歩いた。
極力、ハルヒの歩くペースに合わせて。
しかし、あれだ・・・会話が続かない。
いや、続かないどころか気まずい沈黙のままだ。
何でも良いから話しを!
俺は、たいした話題も無いままハルヒに話かけた。
なあ、ハルヒ・・・
「ねえ、キョン。『付き合う』って何」
え?
「私は・・・昨日気付いた。たぶんキョンが好き。今まで私が思っていた通り『恋愛なんて精神病の一種』なんだとしたら、多分私は重症。」
!!!なんて言葉を返せばいい?
だれか!古泉でもいいから出てきて教えてくれっ!
「でもね、私自身が想っているだけなら、なんだか平気で大丈夫な気がしたの。
上手く、言えないんだけど・・・ごめんね。」
いや、悪いのは俺だ。さっきから、何一つハルヒに答えらしい答えを言えてない。
「でもね、さっきキョンから・・・別に噂通りで構わないって言われた時・・・凄く幸せな気持ちになって・・その後すぐに不安でしょうがなくなった。」
・・・。
「私は、SOS団のみんな・・・みんなと過ごす時間が大切。そしてキョンの事も大好き・・・でも、明日からどうしていいか解らないの。」
知らないうちに、俺とハルヒは駐輪場にたどりついていた。
とりあえず乗れよ、話はそれからでも良いだろ?
話はそれからでも良いだろ・・・と言ったものの、走りだしてからも俺とハルヒは無口だった。
無口なまま走って・・・気が付いたら、昨日の販売機の前に居た。
何か飲むか?
「うん。」
何が良い・・と聞きかけて、俺は少し考えてから言った。
同じモノでいいか?
「・・・! うん!」
少しだけハルヒの表情が明るくなった気がした。
俺は、少し苦目のコーヒーとカフェオレを買い、カフェオレをハルヒに手渡した。
「ありがとう・・・ねえ!見て!夕日が凄い!」
?
昨日もこんな感じだったけど?
「そう?気がつかなかった・・・」
そして、俺とハルヒはまたしばらく無言になった。
しかし、不思議と気まずさは無かった。
夕日が消えかかり、空が産まれたての紫に変わる・・・ふと、ハルヒが小さく呟いた。
「ねえ、キョン。こんな感じで・・・良いよね?」
!
ハルヒに言われて、ハッとした。
そうだ、俺達はこれでいい!
理屈じゃない、これでいいんだ!
そうだな。これでいい。
「かえろうか!」
俺が自転車に跨ると同時に、荷台の上にハルヒが立つ。
おい!危ないぞ?
「いいのよっ!キョン?風の伝説を感じさせる走りをするのよ!」
相変わらずわけがわからん!
だが仕方ない!
全力で行くか!
「いっけーっ!」
夕日の見える丘に、ハルヒの声が響きわたった。
おしまい