おまけ
 
キョンとハルヒが去った後の花見会場。流石に開始から4時間を過ぎると、ちらほら帰る学生も出始める。
まだ一部盛り上がっているところもあるが、殆どが既に惰性で会話を続けており、宴会終了の合図を待っているような状況だ。
 
「涼宮さん、とうとう彼に告ったかぁ。羨ましいな、彼」
「彼とは昔同じ高校だったらしいね」
「でも彼はこっちの高校だろ?あ、高校の時にこっちに転校してきたって言ってたな、そういえば」
「あー、そうなんだ。じゃあ何?涼宮さんって彼のことをここまで追いかけて来たんだ。へええ、そう言うの良いよね。一途って感じでさ」
「遠距離恋愛ってヤツか。一度で良いから、そこまで想われてみたいもんだなぁ……」
「遠距離か。結構辛いぜ、それ」
「お?もしかして、経験者?」
「んー、高校の時付き合ってた彼女が居るんだが、進んだ大学が違ったらふっつりと連絡が無くなってさ」
「……もしかして、終わった?」
「いや、俺は終わってないつもりだったんだけど、こないだ『出来ちゃったんで結婚します』ってメールがきてさ。俺もう、死にたくなったよ」
「あー、それはきついな。」
「それで、こないだからお前元気なかったのか」
「ああ。だから俺は、こっちで彼女作ってアイツのことを見返してやるんだ!」
「おーおー、暗い情熱だね。まあ、頑張れや」
「そう言えば、さっき帰った二人……えーとほら、医学部の……古泉と長門さんだっけ?あの二人も出来てそうだよな」
「そう言えば、あいつらも涼宮さんと同じ高校らしいぜ」
「マジで?なんでわざわざこっちの大学に来たんだ?」
「さあ……??」
そんな他愛もない会話を延々と続けていた学生の輪に、声が掛かった。
「あのぉ、すいませぇん」
子供のような声と、それに似合った童顔。でもそれらに見合わないアンバランスな肢体の女性が彼らに声を掛けてきた。
 
「はいっ!」
「何でしょう!」
「どうされました?私で宜しければ……」
一瞬にして頭の中に澱んでいた酔いを吹き飛ばす学生達。
 
「ひぇ……あ、ごめんなさい!なんでもないですぅ~~」
女性は驚いたように後ずさり、くるりと踵を返すと一目散に駆けていってしまった。
 
「……あー、行っちゃった」
「お前がそんなぎらぎらした目で見るからだろ!お前のせいだ!」
「やかましい!お前こそなんだそのでれっとした顔は?」
「まてまて。俺から見るとお前らどっちも同じだ」
「一人冷静な顔をするな。お前も同じだろ!大体だな……」
女性に逃げられた彼らは、それから延々と「誰が彼女を怯えさせたか」について責任のなすりあいを始めた。
 
「ふぇ、どうしよう?この時間平面ではこの場所が正しいはずなんだけど……」
魅力的な彼女は、普通の人には理解できないような単語をその可憐な口から紡ぎ出していた
 
「……キョンく~ん、涼宮さ~ん、長門さ~ん、古泉く~ん……なんであたし、ここに居るんですかぁ~~」
 
遠距離恋愛  本当に終わり
 
 
 

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最終更新:2007年10月18日 01:13