例えば、朝目覚めてまず私室のカーテンを開ける時や、外出中、ふと空を眺めた時など
でしょうか。両の目に差し込む陽の光を煩わしく感じるようになったのが一体いつの頃から
だったのか、わたくしは覚えておりません。

 幼い頃の記憶を手繰り寄せてみますに、他の同年代の方々が所謂遊び盛り、毎日のよう
に暗くなるまでお外を走り回っていらっしゃったのに対し、当時のわたくしは物心ついてから
というものずっと入院しておりました総合病院の個室の中で、母や同年代の入院患者の方
の訪問や、問診の時間を除けば独りの時を過ごしているのが専らでございました。
 また敷地内の軽い散策を含め外出など滅多にないものでしたから、仲良くして頂いた看
護婦――当時はまだこの名称が用いられておりました――の方に「雪みたいに綺麗な肌」
と世辞を賜ったこともあった程、紫外線に触れる機会のないわたくしの肌は、酷く青白い、
不気味な血色をしていたと記憶しております。

 ですが、然様な当時のわたくしが陽の光を疎ましく思うようなことはなく、むしろその逆でご
ざいました。
 当時のわたくしは自らの置かれた境遇から、病室の外の世界に、また何よりも分厚いカー
テンの隙間から見える、実に生き生きとした表情で遊びまわるわたくしと同年代くらいの方々
に、憎悪にすら近しい羨望を抱いておりました。
 強すぎる陽の光がもたらす影響は当時のわたくしにとってあまり芳しくないもので、故に気
ままに外を歩くこともままならず、また病室のベッドも分厚いカーテンの引かれた窓際から
若干以上離された位置で固定されたまま、と徹底した日除けがなされておりました。
 それ故、いつしか外の世界への羨望は次第に手前への劣等意識に摩り替わり、その内
にわたくしは、陽の光を全身に浴びながら表を歩く、という健康的な児童であればごく当たり
前である行為に、恋慕に似た情を抱くようになっていたのでございます。

 わたくしにとって陽の光は体に害をなす毒であると同時に、憧憬の対象でございました。

 そんなわたくしの病状も同学年の方々が小学校中学年を過ぎられた頃から次第快方に向
かいまして、高学年の仲間入りになろう春にはわたくしの体は彼らとともに学校へ通える程
度に回復しておりました。
 物心ついて以来ずっと病院の中で独りの時を過ごしてきたわたくしが、自らの足で初めて
外の世界へと足を踏み出した時の感動を、見上げた空の青々と晴れ渡った美しさを、けし
て言葉などでは表すことの出来ないそれらを、わたくしは年月を経た今でも覚えております。
 そのあまりの眩しさに、眩暈すら感じたものでした。


 それが、一体いつの頃からだったのでしょうか。
 わたくしは、覚えておりません。


                           ◇


 その日の『仕事』は、非常に簡潔簡素なものでございました。

 とは申しましてもこれはわたくし個人の主観に基づきます故、『機関』の他の方々や一般
の方々におかれましてもそうであると断ずることは難しいかも知れません。
 また、『仕事』とわたくしは呼称しておりますが、『機関』の他の方々は別称をお使いになら
れるようです。恐らくは一般の方々もまた、わたくしの『仕事』の内容を聞き及びになられま
したら、その別称をお使いになることかと思われます。

 その別称とは、『任務』。
 その内容とは、『殺人』でございます。

 みなさまもこれをお読みになられて「ああ、それは『任務』と呼ぶべきものだろう」とお思い
になられたことでしょう。それがごく自然な、正常な感想であると、わたくしも思うものでござ
います。

 ですが、わたくしはわたくしの『仕事』を、どうしても『任務』であると思うことが叶いません。
 『機関』の為、ひいては世界の為に動く行為を『任され務める』ものであると認識するなど
といったおこがましい真似を、どうしてわたくしのような者にできましょう。
 わたくしはただ『仕える事』を想い、その為に動くのみでございます。

 その日のわたくしの『仕事』場となったのは、とあるオフィスビルの一室でございました。

 事の発端はその日から顧みまして先週に遡ります。『機関』に敵対する勢力――朝比奈
みくるさんを誘拐した組織とは、また別の組織でございます――が涼宮さまを拐かそうとし
ている、とそのような情報がさる筋より得られたのでございます。

 かの勢力は前々より非常に過激な行動を取っておいてでございました。そこへ来て先の
誘拐事件があり、恐らくはそれを真似てみたくなったのでしょう。かような狼藉を働こうと画
策しだしたのでございます。尤も、先の誘拐事件もそうでありましたが、その計画意図は全
く短絡的で、実に幼稚であると言わざるを得ません。
 また、先の誘拐事件においてはその直前まで察知することが叶いませんでしたが、今回
は数日の猶予がございました。これがかの勢力同士の格の違いから来るものか、先の事
件より強化されていた『機関』情報部の活動の賜物かは、わたくしには想像することすら過
ぎた案件にございます。

 『機関』上層部にて方針が決定したのは、かの情報を得てから数時間も経たない内であり
ました。即ち、『かの計画に於ける実行日の前日に、かの勢力の要人を暗殺する』という方
針でございます。また、これまで要人と一言に申し上げておりましたが、彼はかの組織にお
いて指導者的立場を取られている方でございました。従って彼の暗殺は事実上かの組織の
解体に他なりません。

 我々『機関』がかような強行手段を用いるのは、久方ぶりのことでございました。発足当時
は様々な思惑が『機関』内外に存在し、能力者、非能力者を問わず多くの血が流れ、また多
くの命が失われたものですが、最近ではそういった血生臭いことはご法度……、とまでは申
し上げませんが、減少していたのは事実でございます。ですから、わたくしがこういった『仕
事』をするのも、久方ぶりのことでございました。
 ですが、かの勢力は少々無体が過ぎました。かの勢力の規模の小ささ故に未然に阻止す
ることが出来たが為、これまで表に出ることは、少なくとも『彼』が知るようなことはなかった
のですが、『彼ら』に直接的な危害を加えようと画策したことも一度や二度ではありません。
ですから、今回の『機関』上層部の判断は当然の沙汰でございました。


 ――と、些か蛇足が過ぎたようです。
 無礼をどうか、ご容赦いただきますよう。


 その日の『仕事』は、非常に簡潔簡素なものでございました。

 我々『機関』に敵対する勢力の要人を暗殺すればよい。
 ただそれだけの、簡潔簡素なものでございました。


                           ◇


 『仕事』場へ向かう道行のことです。わたくしは通りを歩く方々の中に、見知った顔がある
ことに気がつきました。
 『彼』は休日であるその日を街の散策に費やしていたのでしょうか、時折立ち止まり、通り
沿いの店先やウィンドウに並ぶ、主に洋服類といった品物を眺めておりました。

 『彼』とはこれまでに三度ほど、顔を合わせたことがございました。一度目は古泉が企画し
た推理ショウの舞台である夏の孤島、二度目は同じく推理ショウの舞台である冬の雪山、
三度目は先の誘拐事件のときであったと記憶しております。
 ですので、これは四度目の逢瀬ということになるのでしょう。わたくしはそのまま通り過ぎる
ことも勿論、可能でございました。けれど、どうしてか、その『彼』の姿に見入ってしまったの
でございます。

「あれ、森さん……ですか?」
 暫くそうしていますと、『彼』もまたわたくしに気がついたようでした。
「はい。ご無沙汰しております。森園生でございます」
 失礼のない角度でお辞儀をしながら、わたくしは言葉を続けました。
「少々、お時間を頂けますでしょうか」
「え? あ、はい」

 と、『彼』は突然の申し出に驚かれたようでしたが、すぐに取り直し、わたくしの目を真っ直
ぐに見返してきたのでございます。その切り替えしの速さ一つをとっても、『彼』がこれまでに
経験してきた苦労が分かるというものでしょう。
 わたくしと致しましては、些か苦労を背負いすぎのきらいがあるように思うのですが、恐らく
わたくしでなくとも『彼』の置かれている状況を知れば、同じ感想を抱くのではないかと思うも
のでございます。




「お気に召しましたでしょうか。こちらはわたしのお気に入りのお店なのですけれど」

 丁度、わたくしがよく足を運ぶカフェが近くにあったことを思い出し、そちらへと向かうこと
に致しました。良質な茶葉を使った紅茶を比較的良心的なお値段で提供してくれるお店で、
装飾や茶器もそれなりのものを用いている為、敷居も高すぎず低すぎず、わたくしの感性
には丁度よいお店なのですけれど、

「はあ、なんというか……、本格的な感じですね」
 どうも、『彼』には敷居が高かったように見受けられました。
 それも致し方ないかも知れません。わたくしも学生身分の時点で『お茶を飲む』と言えば、
よくある喫茶店が専らでございました。『彼』の緊張も分かるというものです。

 ですが、もしかしたら『彼』の緊張は別のところから来ていたのかも知れませんね。やはり、
『彼』は些か苦労を背負いすぎのようで――などと。
 注文した茶葉――わたくしにはダージリンを、『彼』には比較的飲み易いレディグレイを注
文致しました――と茶器が届き、わたくしがそれぞれに紅茶を淹れると同時に、
「それで、要件はなんですか?」
 と、切り出した『彼』に、わたくしはそのような感想を抱いたのでございます。

「要件、と呼べる程のものはございません。ただ、あなたと個人的なお話をしてみたかった、
というただの気まぐれです」
 それはそのまま、言葉通りの事実だったのでございますが、念には念をと、なるべく緊張
を和らげるような言葉を選びながら申し上げますと、『彼』は安堵の溜息をつき、
「そうなんですか。俺はてっきり、また何かあったのかと……」

 『何か』、とは先の誘拐事件のようなこと、でしょうか。あれから然程月日も経っていないと
いうのに……、と、わたくしや他の『機関』の方ならば思うのですが――実際、かの情報を聞
いた『機関』の皆様の反応は、驚くどころか呆れるといったものでございました――、『彼』の
場合はあれから然程月日が経っていないからこそ、なのでしょう。
 無理もありません。『彼』は件の朝比奈みくるさんとは非常に懇意に接しておられますし、
わたくしのように周囲の動きを多少なりと掴んでいるわけでもないのですから。

 とは申しましても、考えすぎはよいものではありません。実際のところ『何か』はあったので
すが、それは『彼』の与り知らぬところで終わることでございます。

「何か、ですか? 何かあった方がよろしかったのでしょうか」
 嗜める意味も込めてそら惚けますと、『彼』は慌てた様子で、
「ああ、いえ。そんなことは」
「お気に触られたのなら謝ります。どうぞ、ご退席頂いても――」
 と、わたくしの言葉を遮るように、

「いえ、気に触るだなんてとんでもない。俺としても一度森さんとはそういうの抜きで話してみ
たいと思ってましたから」

 そう言って、ようやく『彼』は緊張の解けたことを示す苦笑を、わたくしに見せてくれたので
ございました。



 それから暫く、わたくしたちは他愛のない会話に耽りました。

 『彼』の普段の生活のことですとか、これまでに『彼』の身の回りで起きた不可思議な現象
のことですとか、それとはまた毛色の違う、『彼』の幼少時のことなどもほんの僅かばかりで
はありますが、お話を聞かせて頂きました。
 勿論、わたくしめも色々とお話をさせて頂きました。わたくしの幼少時のことですとか、学
生時代のこと。それから、三年前に古泉と出会ったときのこともほんのさわりの部分だけ、
お話致しました。

 取り留めのない思い出話ばかりで要旨をまとめることも叶いませんが、そのどれもが血生
臭い話題とはかけ離れたものであったことだけは、確かでございます。

 そんな会話が続き、小一時間は過ぎた頃でしょうか、卓上に置かれていた『彼』の携帯電
話が着信を知らせました。

「すみません」
 と断りを入れ中座した『彼』は店外へとお出になられました。丁度、わたくしたちの座ってい
た窓際の席からは出入り口付近の様子が見て取れましたので、わたくしは電話応対中の
『彼』のお姿を拝見することが叶いました。
 暫くその横顔を眺めていますと、『彼』は何か面倒ごとを抱え込んだような……と申し上げ
ますか、それとも厄介な事案に巻き込まれたような……と申し上げましょうか、けれど、何処
か楽しげな……、複雑な表情をなさっておいででした。

 ああ、左様でございますね。恐らくは、その表情を一言で表現するならば、『彼』の口癖が
最も適するものであるかも知れません。

 即ち、『やれやれ』でございます。

「涼宮さまからですか」
 『彼』が席へとお戻りになられたと同時にそう申し上げますと、『彼』は力ない笑いとともに
頷かれました。
「申し訳ないんですが、用事が入ってしまったので、これで」
「いえ、こちらこそ休日の貴重なお時間を拝借してしまい、大変申し訳ありませんでした」
 そうして、わたくしたちはお店を出ることに致しました。

 会計の際、『彼』は「自分が払う」と仰ったのですが、それは丁重にお断りさせて頂きました。
『彼』に男性の面子があると同様に、わたくしにも年上の面子と言うものがございます。何よ
り、誘ったのはわたくしです故、わたくしがお支払いするのが道理というものです。
 『彼』は「せめて自分の分だけでも」と食い下がったのですが、然様な理由を申し上げます
と、渋々、といった様子ではございましたが、了承して下さいました。

 店外に出ますと、そろそろ陽も天頂を過ぎた頃で、もう暫くもすれば夕暮れ時、とは少々
気が早すぎるかも知れませんが、わたくしの本日の『仕事』場を考えますと、急いだ方がよ
い頃合になっておりました。


 ですが、どうしてそれを躊躇ったのか。
 或いはそれは、気の迷いであったのかも知れません。




「あなたは、運命というものを信じますか?」

 わたくしは、『彼』にこのような質問をしていました。

「は?」
「どうしようもなく抗いようのない運命というものを、信じますか?」
 不思議そうな顔をする『彼』に、少々の補足を加え、わたくしはもう一度質問を致しました。

 『彼』は、暫くの間――ほんの数秒程度であったかと思います――お考えになりますと、
「昔は信じてなかったですね。でも、今は信じてもいいかなって思ってます」
 わたくしの目を真っ直ぐに見据え、そう仰いました。

 続けて、こうも仰いました。
「ただ、それは喜劇的な運命って奴だけです。面白おかしく笑って、ハッピーエンド。それ以
外の運命なんてのは信じません」
 それは……、なんと申し上げたものでしょう。

「差し出がましい感想を申し上げますが……、それは、随分、虫のいい話かと」
「俺もそう思います。ただ――」
 と、某かの意を決するように言葉を区切り、『彼』は、

「もし、悲劇的な運命しかないんだとしても、そんなのはぶち壊せばいいだけの話です。ぶち
壊した後で面白おかしく笑えりゃ、それはそれでハッピーエンドですよ」

 『彼』は、苦々しくも朗らかに、笑ったのでございます。



 そのときわたくしがその笑顔にどのような感情を抱いたか、思い出すことが叶いません。
「あなたは、前を向いて生きられる方なのですね」
 ただ、ふと口をついて出たこの一言だけは、紛れもなくわたくしの心よりの感想であったと、
思うばかりでございます。

「そんなんじゃありません。ただ考え無しなだけです」
 『彼』はそう言って、照れくさそうに目を細められました。

 いいえ。左様なことはございません。
 ただ前だけを向いて生きることの如何に難しいことか。
 僭越ながら、それを理解しているわたくしには、その姿はあまりにも眩しく――

「羨ましい――」
「え?」
「いえ、何でもありません。不躾な質問をして申し訳ありませんでした。それでは、わたしは
これで失礼致します」

 見送りをさせる無礼を働くことに抵抗はございましたが、流石にそろそろ急がなくては『仕
事』に間に合わなくなってしまいます故、せめて失礼のない角度でお辞儀をし、わたくしは踵
を返しました。

 ですが、
「――森さん」
 呼び止められ、振り返ったわたくしに、『彼』はもう一度あの笑みを浮かべながら、こう仰っ
たのでございます。


「今日はありがとうございました。またいつか、こんな風に話せる日を楽しみにしてます」


 それは、太陽のような微笑でございました。


                           ◇


 『仕事』は、簡潔簡素に済みました。

 わたくしは用意された経路を使い『仕事』場へ侵入し、事前に得た情報どおりそこにいた
標的に面会し、事を成しました。その間、ビル警備システムは『機関』情報部で掌握、周囲
には作戦部の方々が隠れて待機し、ごく普通のオフィス街の一角にあるそのビルは、ごく
普通のオフィス街の夕暮れに溶け込みながら、けれど直接的にも間接的にも、外界から完
全に断絶されておりました。
 それ故、わたくしの『仕事』はわたくしが動く前に九割九部九厘九毛、完遂しているようなも
のでございました。言うなればわたくしが成したことなどというのは、画に描いた竜に瞳を描
き足す……と、その程度のことでございます。

 事を成した後、その日わたくしの『仕事』場となりましたそのオフィスビルの一室には、わた
くし以外に動くものと言えば――標的の方の趣向でしょうか――天井にぶら下がるモビール
やぽこぽこと泡を立てる水槽内をゆったりと泳ぐ熱帯魚くらいのもので、その他は昏倒した
私兵の方々や、永遠の眠りについた標的の方が地に伏せているのみでございました。

「もしもし、森でございます。……はい、『調理』は完了いたしました。これより『掃除』を済ま
せ次第、『お迎え』に参りますので、その間、『お庭のお手入れ』をお願い致します」

 本部への連絡を手短に済ませ、わたくしは一面ガラス張りの壁面から、外の景色を眺め
ました。

 三十階建てのオフィスビル、その最上階に位置する一室より見える景色は、わたくし以外
の誰が見ても、心を惹かれるものであったかと存じ上げます。しかしながらわたくしは、どう
してなのかは分かりませんが、その景色に非常に不愉快な印象を抱いたものでした。
 もしかしたら、『彼』とともにこの景色を見ていたら、その印象も違ったかも――などと、そ
のような分不相応なことを思ってしまったのは、地平の向こうへと落ちて行く夕陽があまりに
も赤々と輝いていたせいでしょうか。


 ふと。先ほど、事を成す直前に、標的であるかの要人が仰った言葉が、頭をよぎりました。
確か、『貴様らは神の代行者にでもなったつもりか』といった発言であったように思います。

 彼は、もしかしたらそれになりたかったのでしょう。
 ですが、わたくしたちは。

「そのようなつもりはございません」
 わたくしは、最早物言わぬ死体となった彼に向けて、言葉を紡ぎました。


  そう
  たとえそれが 望まぬものでも
  どうしようもなく 抗いようのない
  運命というものが あるのだとしたら



  『彼』と 『彼ら』には どうかせめて



「わたくしどもの願いはただ、幸せな未来を築きたい――それだけなのです」



 赤々と燃える陽の光は、わたくしの両の目に痛みを感じるほどの熱を与えます。
 痛みに耐えかねた両の目は、次第、潤みを帯び始めました。

 だから、わたくしは、

 わたくしは、その眩しくも柔らかい陽光を、ほんの少しだけ疎ましく思ったのでございます。



end.

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最終更新:2007年09月08日 02:09