第一章
日曜日。いつものように妹に起こされて俺はまだまだ未練が残る布団にさよならしようとしていた。
が、今日は妹の兄起こしの決めゼリフが違っていた。
なんか青い髪のお姉ちゃんが来てるとか何とか。
俺の家に訪ねてくるような妹におねえちゃん扱いされるやつはごく少数でありその中の青い髪といえばしっくりはこないが長門か?
だが妹は長門のことはおねえちゃんなどとはいわん。有希と呼ぶはずだ。
だとすると・・・簡単な消去法だ最近転校してきたアイツ以外考えられねえ。玄関へダッシュの俺である。
階段なんかはもう足の限界を超えるほどに飛ばして下りている。
ドアの前に立っていたのは俺の予想通りのやつ、そう、朝倉である。
「キョン君おはよう♪」
満面の笑みで朝倉が言う。
なぜこんなに早いんだ。まだ七時だぞ?というかなぜ俺の家を知ってるんだ?
「長門さんに教えてもらったの。早いのは私がいた世界の涼宮さんは集合する時一番遅かった人は喫茶店代おごりって事になってたんだけど、ここでもそうでしょ?」
どこの世界でもハルヒの考えは同期した長門のように同じらしい。
「ほら、いきましょ。」おい。ちょっと引っ張るな。そんなに急がなくてもまだ七時だ。いくらなんでも早すぎやしないか?
「キョン君。私歩いてきたんだけど自転車の後ろ乗せてくれない?」朝倉は手を合わせて小首を傾げてお願いしてくる。
くそっ。こいつに殺されかけた前科が無けりゃ何の躊躇も無いんだが。
一度死に直面するとなかなか考え方を変えるのは難しいものである。
まあ自転車の後ろに乗せるくらいはたやすいことだ。それぐらいはしてやるとしよう。
「ありがとう。キョン君。」再び満面の笑みの朝倉。
俺は二人分の体重に硬直を決め込んでいるペダルをこぎだした。
結局のところ集合場所である駅前にはのんびりペダルをこいできたにもかかわらず七時三○分過ぎについちまった。
せっかくの日曜をこんな朝っぱらから駅前で過ごそうと思っている変人思想家はいないらしく駅前を動こうとしていないのは俺と朝倉だけだった。
眠いことこの上ない。布団を差し出されて寝ていいですよと許可を出されるや否やすぐにでも深い眠りにつくことが出来よう。
九時までの一時間半の予定を聞かせてくれ。下らんものだと俺は喫茶店で寝ることになるだろう。
「この世界であったあなたや涼宮ハルヒ、SOS団での出来事を詳しく教えてほしいな。」との提案だ。
そんな下らんことをするよりは寝るほうがいくらかましなので寝ることを心に決め喫茶店に向かおうとしたが朝倉は俺の腕を掴んで行かせまいと断固阻止している。
所詮は女子高生の力なので振り切ることは容易だが周りの目などを考えるとここで振り切ると後で朝倉が何をするかわかったもんじゃない。
そこを運悪くハルヒに見られでもしたらもう最悪の事態を免れることは不可能になる。
仕方なく俺はハルヒと出会ったあの始業式の日のことから今までの経緯を全てあらいざらいしゃべってやった。
要点だけを掴んで話す必要も無いほど時間は有り余っていたしな。
だらだらとした割り切れないとわかっている数を割っているような俺の長ったらしい説明を朝倉は時々ふんふんと相槌を打つ意外は何もせず聞いていた。
「とりあえず今までのことは把握できたわ。ありがとう。」
今気づいたことだが朝倉は手に何か隠し持ってやがる。ちょうどナイフぐらいのとたとえるのが妥当だろう。
ナイフ?やべえ。
体が動かないのはこの一年で俺が何も成長していない証なのだろう。
俺もハルヒの扱い方や長門の表情の読み取りに関する分野なら著しく成長しているはずなんだがどうやら本能的に恐怖に対する成長はしていない模様だ。
やっぱ朝倉は嘘ついてやがったのか。
となるとあの異世界とか俺と付き合ってるっていうのもでっち上げの嘘っぱちって事になるのか?
ああもうわからん。
頭の内容量に余裕のあるやつ、俺の脳内の情報を処理してくれ。
あまりの恐怖からか俺はとっさに目をつむった。自分の体が太いナイフでぐりぐりえぐられてる姿はたとえ朝比奈さんが頼み込んできたとしても見たくは無いからな。
が、だ。
朝倉を俺を刺そうとする手の動きは一切とらずその手は確かに俺の手にその何かを握らせている。
体が動くようになっている。これ幸いとばかりに周りを見回すと普通の駅である。
そういえばさっきあの情報統制空間とかいうやつになってたか?知らん。覚えてないのは仕方ないね。
少しばかり余裕が出来た俺は警戒心を怠らずその手に握っているものを見つめた。
ナイフの柄のように見えたそれはリモコンのようなものだった。何だこれは。
「何か困ったことがあったらそれを使ってね。」意味がわからん。なら今使わせてもらおう。
俺はさっきの特大の恐怖で精神が崩壊寸前だ。これは困ったことではないか。
「そういうのじゃなくてもっとこう全世界が困るような、長門さんでも対処できないようなことが起こったときにお願い。」
そうかい。
俺の困りごとはそんなに詰まらんものだと言いたいのか。
「早いじゃない、キョン、涼子。」ハルヒが割って入ってきた。
ハルヒは特徴の無い普通の私服、朝比奈さんは女性というよりも少女を思わせる少し子供的な白いワンピース(まあ激似合っているから何でもOK)、長門は俺の妹が鬱々としているほどの低確率な制服以外をまとっている。淡いピンクのブラウスに濃い紺色のスカートという春の桜を思わせるスタイルだ。
正直なことを言うとハルヒも含めてこの四人はまだ到着してない古泉と俺にはもったいなすぎるほどの美女揃い踏みだ。
両手に花もここまで来ると誇らしさよりも申し訳なさが引き立つほどだ。そん所そこらのアイドルよりは目を引くだろう。
「まだ古泉くんが来てないわね。」考え込むような仕草のハルヒ。
ハルヒが何を考えているかは知らんがどうせろくでもないことだろう。まあ喫茶店代が俺の財布から抜け落ちるということは今日のところはまぬがれているからどっしりと構えておくことにしよう。
まあ油断してハルヒの企てに足元をすくわれない程度にな。
最後のご登場はこの面子からも察せるように無料スマイル振りまき野郎だ。
「僕が最後ですか、皆さんお早いようで。」戯言を言う暇があったら自分の財布の心配でもしといたほうがいくらか意味があるはずだ。
「そうですね。ただ僕は皆さんの早さに感心しているだけですよ。」
そりゃあ今日の集合は桁違いだったろう。
俺と朝倉は七時三○分頃、ハルヒ一同は八時ごろのご到着だからな。というかハルヒたちはいつもこんなに早く来ているのか。
そんなに自分の財布を痛めずに喫茶店でのどを潤したいのかね、ウチの団長は。
まあ俺もできることならそうさせて欲しいところだが。何せ俺も鶴屋さんのような財力が余りあるような家計の人間では無いからな。
「全員そろったしじゃあ喫茶店で作戦会議よ!」というハルヒ号令により俺たちはいつもの喫茶店へと足を運ぶこととなった。
俺たちSOS団がここ一年でこの喫茶店にほぼ毎週寄付のように支払った代金の合計は詳しくは知らんがプラズマテレビ一台分をゆうに超えているであろう次第だ。
長門に聞けば正確な金額がわかるだろう。
そのほとんどが俺の財布から抜け落ちているんだから洒落にならんな。大げさなどなく一年間で俺の趣味として使った金よりも多いと思われるだろう。
いやほんと洒落にならないっすよ。
注文を終えるなりハルヒはどっかから割り箸を取り出しグループ分けを始めた。
結果、あろうことか朝倉とペアになっちまった。ハルヒはまたアヒルみたく口を尖らせている。
あの表情のハルヒは何か思い通りにならなかったことぐらいはこの一年間で学習済みだ。
ペアはハルヒと長門、古泉と朝比奈さんに決定した。
どうでもいい話が二つあるが朝倉の登場で全グループ二人ずつが可能になったわけだ。
もう一つ、古泉とハルヒ、朝比奈さんと長門、俺とハルヒ、俺と古泉ってペアになったことあったっけ?まあほんとにどうでもいいが。
古泉が財布を痛めている最中俺たちは団長の出発号令を聞いていた。
「じゃあ正午にここに集合だから。言っとくけどくれぐれもデートじゃないんだからね!特にキョン!」わかった?とハルヒが詰め寄ってくる。
毎回言われているんだ。あほな動物でもとっくにそんなことは理解してるさ。
店から出てきた古泉も加わりハルヒの解散の指令とともに俺たちはその場を後にした。
また正午に、と古泉は無意味な微笑を俺に向けている。こいつの無意味な微笑はいつものことだが毎度毎度気色悪いニヤケ面だ。
古泉に適当な別れを告げ行くあても無いままに歩き出した。
「どうしたのキョン君?」なんでもない。世の中ってやつについて考えてただけだ。
へえ、と言いながら隣にいる朝倉がくすくすと笑う。その笑いの向こうに全部お見通しだというメッセージが隠されているような気がしてどうにも落ち着かない。考えすぎなんだろうけどな。
「もうすぐ咲きそうね。」
朝倉が見上げているのはそろそろほころび出しそうな桜の花だ。
だらだらと続く川縁に等間隔に並んだ桜の幻想空間のような光景が目に入った。そういえば朝比奈さんから話を聞いたんだっけか。
あのときも今日と同じようなパトロール中で少しの期待を抱いていた俺に対し唐突に披露されたそれに面食らったことを覚えている。
まあこの一年間ですっかり免疫もついちまって今その手の話を聞かされても大概のことじゃ驚かない自信はあるが。
桜が好きなのか、朝倉。
「うん。見た目も綺麗だし、ぱっと咲いてぱっと散るところとか。」
どうしてお前が言うと物騒に聞こえるんだろうな。
「あ、ひどいな。昔のことは昔のことなんだし私がやったんじゃないんだからもう忘れてよ。」
忘れられるはずがないだろう。とは思うのだがそこは悪かったと謝っておく。
朝倉がここにいることは俺だって認めている。だったら何もわざわざ関係をややこしくする必要はない。割り切るってのじゃないさ。
ただいつまでも立ち止まっているわけにもいかない。それだけだ。
「ふふ、ありがと。でもさ、このパトロールって」小首を傾げながら朝倉が言った。「デートみたいだよね。」それはハルヒを除く全員が思っていて、
だがそう言った日にはハルヒのやつに説教くらうのが目に見えているから誰も口にしない、そういう類の話題だ。
きっと長門だってそう思っているに違いない。ただの勘にだが。
「長門さんもそう思ってるよ、絶対。」
お前もそう思うのか。「だって今日のくじで私とキョン君がペアになったとき羨ましそうにしてたもの。この世界の私みたく情報連結を解除されちゃうんじゃないかってどきどきしちゃった。」
冗談でそういうことを言うんじゃない。
大体な、長門がそうしてたってんならそれは俺とじゃなくてお前と組みたかったからじゃないのか?
「どうして?」そりゃお前。そこまで言ってから少し迷った。長門と朝倉、さてこの二人の関係をなんと呼べばしっくりくるのか。
もちろん大々的に発表しても問題ないようなものであることが最低条件だ。
つまるところバックアップなんていう真実は論外だ。この世界はこの世界、世間は世間だからな。
だとすれば無難だがこれが一番適当なんだろうな。お前と朝倉は友達だからに決まっているだろ。
本音を言うと姉妹の方がとてつもなくしっくりくるのだが。
「友達・・・友達、か。うん、そうだね。」少し呆れた様に朝倉が笑う。
思い返せば記憶の中の朝倉はいつも同じ表情だった気がする。笑顔は笑顔に違いないが変化することのないそれ。
例えばそう、かつての長門の無表情と同じ類のものだ。最もただの思い違いかもしれないけどな。
この世界の朝倉と今の朝倉、その間に違いを見つけようとしているだけだという気もする。
やれやれ、俺もなかなか他人を信用しない質だな。
「じゃあさ、キョン君は?」唐突に問いかけられると返事に困る。
何がだ?「だから誰とペアになりたかったの?やっぱり涼宮さん?」
・・・そう、クラスでのあの人当たりのよさに騙されてはいけない。こいつはこういうやつなのだ。
というかひょっとして俺に対してだけじゃないのか?
あのな、俺とハルヒは別に何でも「ない?いつも親しげだけどほんとに?」ないものはない。
それにな、俺は別に誰とペアになっても構わん。単に時間潰しの相手が変わるだけだからな。
まあ強いて言うなら朝比奈さんと組めりゃあ時間潰し中の俺のテンションも違ってくるというものだが。
そうさ、ハルヒとさえ組まなきゃ不思議なんてものがその辺に転がってないってことは全員分かってる。万が一転がってたとしてもそれは事前に長門が教えてくれるはずだ。
適当に散策してそんでおしまいだ。
ハルヒと組むのは・・・あいつのよく分からん愚痴を聞いてやるのが古泉曰く俺の仕事らしいからな。それぐらいなら喜んで付き合ってやるよ。必要ならな。
「じゃ、私と組むのも別に嫌じゃないのよね。」まあそうだな。
「だったらさ、もうちょっと楽しそうにしてよ。せっかくの初デートなんだから。」
だからこれはパトロールだと・・・おい!俺の言葉なんぞ一切聞かず腕を絡めてくる。
ちょっと待て。ハルヒにでも見られたらどうする。
「大丈夫大丈夫。ちゃんと長門さんに監視してもらってるから。」なんだそれ。
お前妙な力はもう使えないんじゃなかったのか。「そんなの必要ないもの。ほらね。」悪戯っぽく朝倉が出して見せたのは携帯電話だった。
・・・なるほどね。このご時世宇宙人的な力なんぞなくともいつでもどこでも誰かに連絡ぐらい取れるってわけか。
「だからね。ほら。」そのまま俺を引きずるようにして歩き出す。
とっととその腕を振りほどきたいのだが隣に見える朝倉の表情がやけに嬉しそうでどうにも毒気を抜かれる。
この状況で逃げられるやつがいたら教えてくれ。俺には無理だ。
わかったよ。だからもう少し離れてくれ。頼む。
「だーめ。もう、キョン君ってば恥ずかしがりやなんだから。」朝倉が笑う。楽しそうに。
もうどうにでもなってくれ。ジロジロと俺たちに向けられた周囲の視線以外はさほど不快なことはなかった。
はずだった。
ひとしきり市内を回り終えたころに俺の携帯電話がやかましい音を奏で始めた。
実に気乗りしないが通話マークを押すと「戻ってきなさい!」と俺の耳を劈くほどの威勢のよい声が聞こえた。
時計は十一時二○分まだ集合には早いはずである。
「どうしたの?誰から?」明らかにわかっていますと顔に書いてある。
それよりもいい加減絡めた手を離してくれ。離さんと答えん。
「わかったわよ。」少しすねた感じで朝倉がようやく手を離した。やれやれ、俺の腕は約二時間ぶりの開放感を存分に味わっている。
さっきの電話はハルヒからで内容は戻ってこいだとよ。ふんふんと頷き急がなきゃと朝倉は俺の手を握り走り出した。
なぜいつの時代、どんな場所にも約束事を守らんやつがこんなにいるんだろう。
こんなことだから一向に戦争が治まらず乱れた政治が続くのだ。まあ俺は口出しして何もやらない有限不実行派だがな。まあ政治に関してだけだが。
さて。考え事をしながらの移動は時間を感じさせないと思うのは俺だけだろうか。もう例の喫茶店に到着した。
無論そのときすでに店内には残りのメンバーが勢ぞろいしていたわけだが。
「こらぁ、キョン!何手なんかつないでんのよ!」
ちょっと待てハルヒ。俺は手なんかつないで・・・いた。大失敗だ。さっきどうにでもなれと思ったことをここに来て後悔している。
朝倉はぱっと手を放し顔を赤くした。おい、誤解されるような仕草をするな。その代償は全部俺が受けることになるんだぞ。
「みんなはもう帰っといていいわ。今日のパトロールはこれで終わり。キョン。あんたはこっちに来なさい!」
毎度ながらハルヒの女子高生らしからぬバカ力によってなす術なく店の裏へと連れてこられた情けない俺がここにいる。
そういえばこの喫茶店は去年からのご無沙汰だが裏側を見るのは初のことだ。
意味のない俺の現実逃避を打ち破るがごとく大声でハルヒが叫んだ。
「さっき有希が付いてきてって言うから付いていってみればあんたと涼子が手をつないで歩いてたわ。」
猫なで声で軽い話題っぽく言ってるつもりらしいが目が笑ってないことが俺にはひしひしと伝わってきて逆に恐怖が倍増していくばかりだ。
こいつ本気で切れてやがる。
「デートじゃないって何回言えば頭に入んのよ。この、バカキョン!」
俺が言い訳をするほどの間をくれるはずもなく風をほんとに切っちまったんじゃないかと疑うほどの高速でビンタが飛んできた。
十分後・・・まだ店の裏側の世界を堪能している俺がここにいる。もちろん俺の意思ではないことは言わずもがなであろう。
できれば早いとこ帰ってベッドで今日のパトロールの疲れを癒しておきたいところだが最も重要な動く機能が働かない体になっているのだ。
何せこの十分間どんなゲーマーでもこの動きを作り出すのことは無理であろうというほどの超連続攻撃を何の抵抗やダメージ軽減もなくただひたすらに腹や顔といったダメージの大きいところに受け続けていたからな。
そんなボロボロの体と朦朧とする意識の中で一つ気になることが残っていた。
さっきのハルヒは俺を見つけたのは長門につれられてだとか言っていた。長門はハルヒが俺たちを見つけないように監視していたはずだ。
俺はこのダメージを受けた中での限界思考速度で考えた。
昔の、いや、この世界の朝倉は俺を殺そうとしたことがある。それは確か情報爆発を観測するためだとか言ってたな。
とすると朝倉はそのために長門に俺たちの居所を携帯で伝えたって事になるな。まあ単なる推理だが。
・・・いや、ちょっと待てよ。この世界の朝倉ならそれでほぼあっていると思うが今の朝倉なら矛盾する点が三つほどあるぞ。
まず第一に今の朝倉は仮に情報爆発が起きても俺を観測する力が無いはずだ。観測できないことを無理やり起こす意味は無い。
第二に今日の朝倉はやけに楽しそうだった。昔もあの表情に騙されたこともあったが今日のそれは違った。楽しいという感情がひしひしと伝わってくる感じというかなんというか。
第三に別れ際、長門が俺を見つめる視線がやけに冷たかった覚えがある。それにぷいっとあからさまに怒りの感情を露にしながら帰っていった。
怒る理由は俺にはさっぱりだがこの辺のことを踏まえてもう一度推理しなおしてみると、今回の犯人はおのずと出てくるんじゃないだろうか。
そう、長門だ。
やれやれ頼むぜ長門。
修正プログラムか。いいことばっかだと思っていたがそれなりにめんどくさい効果もあるようだな。
とりあえず動かない体を何とか奮い起こして家までたどり着いた。
女子の攻撃でいつまでもへばってられないからな。男子であるプライドってもんが俺にもある。
幸いハルヒは俺の体に傷をつけるような攻撃は一度もしてはおらずさっきまで暴行を受けていたことを妹に悟られることも無く俺はベッドに横になった。
忘れているかもしれないが一応俺は高校生なのだ。
明日だって月曜日である限りいつものように授業というものが北高校で実施されるのである。
今の俺にそれを乗り切るほどの活力は無くそれを得るには睡眠をとるのが一番の方法だと俺は自負している。
たった半日程度の睡眠でそれほどの回復効果が得られるとも思いがたいが出来る限りのことはしておこう。
明日の授業中寝ちまったらそのときはそのときだ。わずかな不安を抱えつつも俺は睡眠状態に入った。
もちろんあのパトロールをした服装のままで。