今回もだめだった
今回こそはと思ったけれど
もう何度この夏を迎えたんだろう
また、同じ夏が繰り返される
覚えているのは私だけ
さぁ、またおんなじ夏を迎えよう
彼の意思に報いるために
今度は九月を迎えられる事を信じて

「ある夏のシークエンス」
去年の俺ならダラダラと過ごしていただろうが今年からはそうも行かなくなってしまった
♪~~~
ハルヒが勝手に設定した歌が流れ出す、ちなみにSOS団員すべての着信音はハルヒが勝手に決めた。
ちなみに、俺の気に入っている着信音は電話がほとんどかかって来ない長門の「雪、無音、窓辺にて」だ。なんかこう癒されるんだよな~。まぁそんなこんなで電話を取る
「なんだ、なつやすm「おっそーい! 団長のあたしが電話をしたら光の速度を超えて電話に出なさい!!いいわね」
耳元で怒鳴り声が響く、何も叫ぶことはないと思うのだが
「なんだよ、夏休みくらいゆっくりさせてくれ。俺の体には永久機関はつんでいないんだよ」
だが、ハルヒのやつは平団員の俺の意見なんて求めていない様なそぶりで話を再開し始めた
「それでね、だらだらと夏休みを消費するのは勿体無いからいつもの喫茶店に1時に集合ね。もう、他のみんなには伝えてあるから。来なかったら死刑だから」
プツッ、ツーツーツーと会話の終了を知らせる無機質な音が繰り返される。時計を見てみる、現在時刻12:00
おい、ハルヒ、集合時間の一時間前に電話をするとはどういうことだ
重い体に鞭を打っていつもの私服を着て、財布の中身を確認する
中には英世さん4枚、一葉さん1枚、諭吉0人
「ここまで被害が甚大になるとそろそろまずいことになるよな・・・」
数々の奢りのせいで北極並みの寒さになった懐がつらい、喫茶店には45分くらいに家を出れば間に合うだろう
多少時間に余裕があったので俺は昼食を取るべく下に足を運ぶ
「あ、キョン君。今日もハルにゃん達の所いくの?」
学力に多少の心配のある妹がアイスをなめながら話しかけてきた
「あぁ、いつもの時間まで帰ってこないから。多分これからずっとそうなるかもしれないが」
えぇ~、と頬を膨らませて不平を漏らす妹、まぁそうなるわな
適当に妹をあしらいつつ冷蔵庫に昼食を探す
「な、こんな時に限って食べ物ってない物なんだな。仕方ない、時間もないしもう行くか」
玄関までついて来る妹の頭を撫でて玄関を後にしていつもの集合場所に自転車で走り出す
もう慣れてしまった道を通って駐輪場に自転車を止める。腕時計を見るともう12:50になっている
「また一番最後か」
時計台の下にハルヒ達の姿を見つける。ハルヒが俺に気付いたのかこちらに手をこれでもかとばかりに手を振る
朝比奈さんはそれにつられるように小さく手を振っている、長門は無表情でこちらを向いている、心なしか疲れているようにも見える。古泉の奴はいつものにやけ面だ
「またいつものパターンか」
そうぼやいてあいつらの所に向かう
「おそい!!たまにはあたし達よりも早く来たらどうなの?」
「こんにちはキョンくん」
「……」
「こんにちは、今日は何かあったんですか?」
みんな別々の挨拶をしてくださる。随分と温度差があるようだ
「すまん。それよりも早すぎないか?いつも何時に来てるんだ?」
ハルヒはなぜか口をぽかんと開けていたが直ぐにいつもの口に戻り喫茶店まで朝比奈さんと長門の手を取り歩いていった
「どうかなさいましたか?何か態度が違う気がしましたが?」
古泉はいつものにやけ面を崩さずに言う
「別にどうもしないさ」
古泉は一瞬その場に止まってハッとしたようになり少し早足で追ってきた
喫茶店に入るとハルヒたちはすでに席に着いておりこっちこっちと手招きをして俺と古泉をせかす
「さぁ引きなさい」
二本の爪楊枝を突き出すほかの三人はすでに引いてしまっているらしい
「では僕から引かせて頂きましょう」
古泉はさっさと楊枝を取ってしまった
「おや、僕は印なしですね。」
そして残った一本を引き印の有無を見る
「俺は印ありだ」
俺と古泉の結果を見るとハルヒは
「じゃあ、二人とも行くわよ。せーの」
ハルヒの掛け声と共に三人が楊枝を出す、結果はハルヒ印なし、朝比奈さん印なし、長門印あり
「あたしと古泉君とみくるちゃん組みとキョンと有希組みね。キョン、有希に何かしたら殺すからね」
物騒なことを平然と言ってのけるハルヒ、俺達にできないことを(ry
「物騒なことを言うなハルヒ、それよりこの夏のSOS団の予定はどうなってるんだ?」
それを聞くとハルヒは不適に笑って
「よくぞ聞いたわね!キョン、あんたにしてはやるじゃないの」
ハルヒはジャジャーンと言いながらA4版の紙を二枚取り出して一枚を俺と古泉、もう一枚を朝比奈さんと長門へ手渡した
何々?な、こんなに予定がびっしり・・・
表には
SOS団夏休み予定表!!
・ みんなで夏祭りに行く
・ 市民プールに行く
以下略
最後に夏休みの最中は全日程キョンの家で泊まると書いてあった
夏休みの予定がこれでもかと書き込まれていた。さぁ、ここで文句を一つ言いたい
「なによ、問題ないでしょ!」
「三択だ、答えてみろ」
A,全く夏休みを謳歌できる暇がないって言うこと
B,なぜか俺の家がSOS団の夏休み限定の特別本部と化していること
C,さっさと終わらせたい課題をする暇が全くないこと
さて、気になるハルヒの返答は
「Dの喜びでこの気持ちの高ぶりをどうすればいいかわからないよ!!」
だめだ、やっぱりこいつに一般常識は通用しないみたいだな
「だがハルヒ、俺の家って言ったってな親の許可がないと」
「あっそ、じゃあ明日までに大丈夫かどうか聞いておきなさいよ。じゃあ5時まで解散!5時にここにまた集合ね」
そう言ってハルヒは意気揚々と立ち上がり伝票を俺に押し付けて店の外へ行ってしまった
席に座っている長門を見ると頼んでいたアールグレイを飲み終えたところで液体ヘリウム宜しく普段の終わりが見えない目で俺を見ていた
「どうする?どこか行きたい場所でもあるか?」
長門は一呼吸ほど置いて
「話したい事がある」
と抑揚なく告げた
「話したいことってまたなにかあったのか?」
ハルヒの奴がまた何かやらかしているのか?今度は何をしでかしてくれたんだ?
「時間がループしている」
時間がループってどういう事だ?
「7月の夏期休業の初日の24:00から8月31日の24:00がほぼ無限にループしている。原因は恐らく涼宮ハルヒがこの夏期休業に心残りを感じていると思われる」
心残りか、一体何を感じているのやら、あいつはやる事なすことが常人の域を脱しているからな
「現在のループ回数は15489回目に該当する」
な、一万五千?!長門はそんな回数の夏を過ごしていたのか
なんだかやるせない気分と自分が長門のことを気付いてやれない憤りを俺は感じていた
「何とかループを解消する手立てはないのか?」
「不明。でも、涼宮ハルヒが行うことには必ずと言っていいほどの規則性がある」
ん?規則性?どんな規則性があるって言うんだ?
「そう。規則性の一つとして14500回目ほどのループからあなたの家での合宿が行われている」
まったくわけがわからん。とにかくハルヒの奴がこの夏休みを満喫できていないからこんな事になっていると考えるべきか、でもそれでもおかしいよな
俺は何処にもぶつけられない怒りを机に叩き付ける
「くそっ、長門がこんなにも苦労しているのに俺は何にも出来ないなんて。どこかの惨劇物語じゃあるまいし」
頭の中で某惨劇ノベルゲームが浮かぶ
「実はそのシークエンスもある。123回から173回目までの50回のループの間にそのような惨劇が起こっている」
なに、長門詳しく話を聞かせてくれ
「123回目。これはあなたが疑心暗鬼に駆られて涼宮ハルヒと朝比奈みくるを金属バットで撲殺して逃亡。その後、わたしの自宅に向かうがその途中に狂気に駆られた様に喉を掻き毟って死亡した」
まさに惨劇のストーリーそのものだな。でも結局解決したんだよな
「そう。だけど早急にこの問題は解決する必要性がある。少なからずこのループを起こすごとに涼宮ハルヒが情報操作能力を消費している。情報統合思念体はこのループで涼宮ハルヒの力が消失することを恐れている」
そうなったらお前や朝比奈さんや古泉はどうなるんだ?
「朝比奈みくる、古泉一樹の処分は不明。少なからずわたしは情報統合思念体に処分される事は明白」
処分?
その言葉に対して俺は全く反応が出来なかった。唖然、愕然、呆然と言う言葉がぴったりな状況だろう
「なら、早くこのループを終わらせないとな。俺はお前のいない世界なんて嫌だからな。もし今回も9月を迎えられなくても長門、覚えておいてくれ、お前は自分の犠牲で救えればそれでいいと思っているだろうがそれは違うぞ」
長門はキョトンと俺を見つめている
「今の話を聞く限りでは長門は記憶を継承できるんだろ?」
「可能。必要ならばあなたにも記憶を複製することも可能」
長門の話を聞いて確信した。このループはもう終わる
「長門、俺は今のSOS団が好きだ。ハルヒが勝手に馬鹿やってそれを古泉がそれを賛成して、朝比奈さんがメイド服でお茶を入れてお前が椅子で黙々と本を読んでいるSOS団が好きなんだ」
一度にしゃべりすぎたので少し息を吸う
「この世界で終わらせる事が一番だが、もしループから脱出するのに失敗したら『次の世界』の俺に『この世界』の俺の記憶を継承してくれ」
「了解した」
「それと面倒になるかもしれないけど。それをループが終わるまで繰り返してくれ。なぁにただとは言わん。ループした回数×10分の1の願い事を聞いてやる。これでどうだ?あ、でも可能な限りだぞ」
長門はエネルギーの切れたMSのように下を向いて静止した。そしてゆっくりと顔をあげて
「わかった」
と普通の奴から見たらただの無表情に見えるだろうが俺にはハルヒや朝比奈さんにも勝るとも劣ることのない笑顔の長門の姿が見えた
さぁ抗おう、何もこの世界で終わりのわけじゃないんだ。少しづつ積み重ねていけばいい。そして5人仲良く9月を迎えるんだ、誰一人として欠ける事のないように
その後、喫茶店を後にした俺と長門は長門が行きたいと言うあの図書館に行くことにした。図書館までの道のりは俺の自転車に長門と一緒に跨って図書館まで向かった
「なぁ、長門」
「なに」
「今までのループではどんな世界があったんだ?」
「いろいろ」
「たとえば?」
「わたし、涼宮ハルヒ、朝比奈みくるがあなたの恋人となるべく様々なアプローチを掛けてあなたを誘惑する世界。わたし、涼宮ハルヒ、朝比奈みくるの各自があなたの恋人になっている世界。」
たくさんのパターンがあるんだな。何せ15000回近く夏休みが回って来るんだもんな
長門と話しながら(俺の一方的な質問だったのは内緒だ)自転車をこいでいるといつの間にか図書館についていた
「さぁ、行こうぜ。ってあれ?おい、長門」
「なに?」
一瞬のうちに自転車から降りて図書館の扉に歩き出すな、なんか哀しくなるだろ
「そう」
自転車を駐輪場に止めて長門のあとを追いかける
図書館の中は冷房が効いていてとても涼しいのだが自転車をこいでいる最中にかいた汗のせいで服がぬれていて服が急激に冷えて冷たく張り付いてきて気持ちが悪い
長門を探すと既に厚い本を手にとっていつもの様な速度で読んでいる
「長門、俺は休憩場所にいるからさ、時間になったら俺のところに来てくれるか?」
「わかった」
俺の言葉を長門は右からそのまま左に流した本を読むのに夢中なんだろうな、俺は静かに読書の邪魔にならないように長門から離れて読む本を選んでいつも座っている休憩所に行く
読書開始から約十分もすると睡魔の軍勢にあえなく敗北し、俺は深い眠りについた
「起きて・・・おき・・・起きて」
「ん?長門か?どうしたんだ」
「時間」
寝ぼけた頭で自分の腕時計を確認するともう既に5時を回っていた
「やべ、ハルヒに連絡しておかないと」
携帯を取り出して画面を見てみると着信があったことを告げるマークがついていた
「着信?ハルヒか?って、何だこれ!」
着信履歴 18件
涼宮ハルヒ
「やれやれ。お、ハルヒから電話か。また怒鳴られるんだろうな」
気が進まないが取らないとうるさいので俺は決死の覚悟を決めてボタンを押した
「遅いっていってんでしょー!!!あんた今何処にいんの?」
早速罵声を浴びせられた
「いま、図書館にいる。すまん、なんか怒らせちまったみたいだな」
「べ、別に、なんでもないわよっ!!それより今日はもう解散だから!!有希をちゃんと家まで届けなさいよ!!」
プッ、ツーツーツー
「勝手にきりやがった。じゃあいくか長門」
「そう」
俺はハルヒ大閣下から下された命令をこなすべく長門を自転車の荷台に乗せて走り出す。長門の家はもう何度も訪れているためかすんなりとついた
「じゃあな長門。またあした」
「また、あした」
日が暮れる前に家に帰るため自転車のハンドルを切り返す、夏と言えども夜は冷えるからな
「おっかえり~キョン君」
自宅のドアを開けて玄関にはいるとタイミングを見計らったように妹が立っていた
「ただいま、おふくろ達は?」
いつもならもう夕飯を食べている時間帯のはずなんだがどうやら違うらしい
「お母さんとお父さんは出かけちゃったよ?えーと確か町内会の福引で世界一周と4分の1旅行が当たったからって行っちゃった。てへっ」
な、なんだってー(AA略)おふくろ達がいないとなると晩飯の作りようがないじゃないか
俺が頭を抱えていると妹が「ご飯はおにいちゃんに作ってもらいなさいってさ」と追い討ちを掛けてきた
しかし、タイミングが良すぎないか?まさか、古泉の奴が?
「夕飯、ちょっと待っててくれ」
「わかった~」
靴を脱いでリビングに向かう間に携帯を取り出して古泉に電話をかける
「もしもし、どうかなさいなましたか?」
「どういうつもりだ?どうせ機関の差し金だろ?」
「御察しのとおりです。恐らくちなみに夏休みが終わるまで旅行は終わりませんよ」
ったく、お前は回りくどいんだよ。素直にハルヒをうちに呼べと言えばいいんだ
「話が早くて助かります。ではお願いしますね」
「わかった。じゃあな」
電話を終えてリビングの妹にハルヒたちが来ることを告げる
「なぁ、もしこの夏休みにずっとハルヒ達が家に泊まるって言ったらうれしいか?」
「ハルにゃん達が来るの~?やった!!わーいわーい」
どうやら妹は賛成らしい。仕方ない、どっちにしろ明日には来る事になるんだ
「もしかしたら今からハルヒたちが来るかもしれないけどいいよな?」
「うん、楽しみだな~ハルにゃん達とトランプやろ~っと」
手に持ったままの携帯でハルヒに電話をかけるプルルルとコール音がなるそして二回目のコール音がなる前にはプツッとした音がなる
「何よキョン。なんか用?」
会話早々けんか腰である。俺はお前の仇でもあるのか?
「お前が昼間言っていたこと何だけど」
「え?なになに、何かあったの?」
声の調子が変わる。プレゼントを目の前にした子供のような声だ
「実は俺の両親が夏休みの終わりまで帰ってこないんだ。それでさ、俺は何とかなるんだけど妹がさ、だからちょうどいいから朝比奈さんや長門達と今日から家に来てくれないか?妹も喜ぶしさ」
両親のことをハルヒに告げるとハルヒのやつはいつもの快活な声で言った
「しっかたないわねー。じゃあ今からみんなに電話して直ぐ行くから待っていなさいよ!!」
「わかった。すまんな、なんか」
「な、何言ってんのよ。じゃ、じゃあ切るから」
ブツッと電話を切る音が耳に入る
「ねぇねぇ、ハルにゃん達来るの~?」
「あぁ、もうすぐハルヒ達が来るはずだ」
リビングで妹がつけたテレビを見ること15分もした頃
ピーンポーン
「キョーン!団長様が来てやったわよー!!」
ソファーに座っていた腰を挙げて玄関まで迎えに行く
「全く時間帯を考えない奴だな」
ガチャリ
「来てやったわよ、キョン!!」
「こんばんは、キョン君」
「・・・・・・・・」
「お招きいただき光栄です」
SOS団の顔ぶれが揃う
外で立話もなんなので家の中へ招き入れる
「あ、こんばんは~ハルにゃんにみくるちゃんに有希ちゃん!!」
「妹ちゃん、晩御飯まだなんでしょ?お姉ちゃんが作ってあげるわ!!」
ハルヒは朝比奈さんと長門をつれてリビングまで走り去って行った
「ったく、靴ぐらいちゃんと脱いだらどうだ?古泉、どういうつもりだ?」
隣で律儀に靴を脱ぐ古泉に聞く。古泉は表情を全く変えずにニヤケ面で口を開けた
「いえ、ただ今回の事は機関の傘下の企業のプロジェクト。とだけしか言えません」
やれやれ、まぁいい
「お前も上がれよ。ここで話しもなんだろ?お前もみんなの荷物を運ぶのを手伝えよ」
「では、お言葉に甘えて失礼いたします」
古泉と共に荷物を持って部屋に入るとリビングではキッチンにハルヒがなにやら料理をしており朝比奈さんと長門は妹とじゃれている
「朝比奈さんすいません。なんだか妹にかまっていただいて。長門もありがとう」
「別にいいんです。妹さんと遊ぶのは楽しいですから」
「別に」
古泉にソファーに腰掛けるように促してソファーに座る
「どうなんだ?このところ?」
「このところ、と言いますと?」
ハルヒだよ、ハルヒ
「彼女はこのところ安定していますよ。此方としてはありがたい限りです」
そうか、じゃあ何でハルヒは夏休みをループなんてしてるんだ?全く考える事がわからん奴だ
俺が考え事をしていると後ろから頭をスリッパで叩かれた
「いってーな、このやろう」
「晩御飯出来たわよ、まったくさっきから声を掛けてたのに、あんたってばなんかブツブツ言ってるし。まぁいいわ、早くご飯食べちゃいましょう。まだ私達もご飯食べてないのよ」
ハルヒに言われて顔をあげると長門達はすでに座っていてすでに臨戦態勢に入っている。どうやら俺が一番最後だったようだ
「すまんな、ハルヒ。ほら、一緒に行こうぜ」
あいている席について料理を見渡す。ううむ、贔屓目に見てもうまそうだ。
「さぁいただきましょう」
ハルヒの声で食事という名の戦争が開始された
「これは美味しいですね」
「…おいしい」
「これ、おいしいですぅ」
「これはうまいな。ずっと食べてもあきないな」
「ハルにゃん、料理じょうずだね」
やっぱりこいつは性格意外なら完璧なんだな、とつくづく思う。ん?なんだ三人とも俺の事を凝視して
「ね、ねぇキョン?本当に毎日でも食べたい?」
「あぁ、これなら毎日食べてもあきない」
ハルヒにそう言うとハルヒは顔を真っ赤にして俯いてしまった。一体どうしたんだ?
「キョン君、これ、私が作ったんですけど。ど、どうぞ!!」
朝比奈さんが差し出した煮物を一つ箸に取りいただく
「お、これもおいしいですね。朝比奈さんの料理を食べられる人は幸せですね」
朝比奈さんも顔を真っ赤にして何もない方向を見つめている
「これ」
長門が生姜焼きを持った皿を差し出してきた
「これは長門が作ったのか。いただきます。お、これはいけるな。生姜焼きが俺の好きな食べ物だって知っていたのか?」
「あなたの母親から聞いた」
おふくろ?あぁ買い物の途中にでも聞いたんだろう
「そうか、うれしいぞ、長門。これおいしいな」
「そう」
いつもと同じで少ない言葉だったが俺にはなぜかとても長門が幸せそうに見えた。みんなして顔を赤くしてどうしたんだ?
「お気づきでないとは。そこもあなたの魅力ですかね?」
なにか古泉が言っていたようだが無視無視。今は食べる事に精一杯だ
「久し振りに旨い物を食べさせてもらったな。みんなありがとな」
みんなもちょうど良く食べ終えていたので俺はみんなの食器を纏めてシンクにもって行き食器を洗ってしまおうと思い食器を纏めてもって行こうとしたら誰かの手に遮られてしまった
「ん?朝比奈さん。どうかしましたか?」
「え、えぇと、キョン君。私がこれをやりましゅ。だからキョン君はくつろいでいてくださぁい」
朝比奈さんの提案は俺としてはありがたいのだが客人である朝比奈さんに家の仕事をやらせるだなんてとんでもない
「で、でもぉ」
「いいんですよ。毎日やっているんで、もうなれましたそもそもあんなにおいしい料理を作って下さったのにそんな事まで頼めませんよ」
「ふみゅう。・・・キョン君のばかぁ」
何か今言わなかったか?さてとさっさと終わらせるか
赤いあいつもびっくりの速度で食器の洗浄を済ませてハルヒ達の所に戻る
そこには妹と朝比奈さんにルールを教えながらトランプで遊んでいるハルヒ達の微笑ましい姿があった
「ふぅ、洗濯物取り込んで来るかな」
俺は無言でその場を後にして二階の自分の部屋の外にある洗濯物を取り込んで下に戻る
「あれキョン何それ?洗濯物?私がやってあげるわ!!貸しなさいッ」
ちょ、やめろ。落ち着けハルヒ、洗濯物が散らばるだろ
「え、あ、ご、ごめん」
シュンと先ほどまでも快活な様子と変わってしまった。傷つけちまったかな?
「は、ハルヒ。俺は別に嫌なわけじゃないんだ。ただなさっき朝比奈さんも言ってくれたけど今日はハルヒ達においしい夕食を作ってもらっただろ?そんな事をしてくれた奴に洗濯物なんてやらせられるかよ」
朝比奈さんと同じ事を言って諭す
「そ、そうね!!当然よね!!!じゃあ、みんなで大富豪やってるからさっさと来なさいよ!!・・・この馬鹿キョン」
ん?また何か言われた気がする?まぁいいや
またもや驚くべき速度で仕事を済ましてハルヒ達の所へ行くと朝比奈さんの膝に妹が寝息をたてている姿があった。うらやましいだなんて思ってないぞ
「あ、キョン遅いじゃないの。早く大富豪やるわよ!どうせやるなら罰ゲームつきよね。じゃあ10ゲームで一位を一番取った人がビリを一番取った人に一つ命令ね!!」
30分後
結果
一位ハルヒ ビリ俺
なあ、これってやっぱりお約束なのか?下っ端団員は負けるのがお約束だったりするのか?
「ふん!やっぱりあたしが一位ね!!さぁ~キョン、命令するわよぉ」
やれやれ、さぁ気になる命令とは何なんだ?どうせろくな命令じゃないんだろうな
「命令はこの夏休みの間キョンはSOS団の団員の名前を名前で呼ぶ事ねっ!!」
な、そんな事でいいのか?よかった、一年間奢りの刑とかじゃなくてすんだだけましか
「さぁ、キョン。呼びなさい!許しを請うように名前を呼びなさい!!」
なぜか楽しげに言うハルヒ、何が楽しいんだ?一応無視しておく
「さぁもう一回やりましょ」
無視されたことを腹を立てたのか頬を膨らませて言った
そしてまた30分後
結果一位長門 ビリ俺
またか、俺ってつくづく運がないのね
「嘘だろぉ?長門の「キョン!ちゃんと罰ゲームを守りなさいよ!!」
く、長門の名前を呼ぶのって妙に気恥ずかしいんだが
「ゆ、有希。有希の罰ゲームは何だ?」
有希は静かにかつ起伏のない声で
「この夏期休業の間は家事の作業を分担する」
「それって罰ゲームなのか?もっと他の事でもいいんだぞ」
「別に」
「でもs「罰ゲーム」はい」
喋ってたのに・・・納得がいかないが長門と論争で勝てるわけないのであきらめた
「さぁ、最終戦よ!!」
そして(以下略)
結果一位みくるさん ビリ俺
もう言葉もでない
ちくしょうハルヒのやつが絶対最強変態パワーを使ってやがる
「みくるさん、罰ゲームは何です?」
半ばやけになってたずねる
「罰ゲームはこの夏休みをいっぱい楽しむ事でーしゅっ」
「へ?」
「ほ?」
俺とハルヒが素っ頓狂な声をあげる。二人の罰ゲームとは全く違う内容だったからだろう
そうか、朝比奈さんはいつ未来に帰ってしまうかもわからない。だから今を精一杯楽しもうって言えるんだな
「わかりました。この夏休みを精一杯楽しみましょう」
そして、小声で今度こそ9月を迎えられるようにと加えておいた
明日からのハードスケジュールもあるため。ハルヒの案で今日は寝る事になった。寝る前に風呂に入る事になりまずハルヒと朝比奈さんと長門が入り次に俺と古泉が入る事になった
「脱出する当てはありそうですか?」
「知っていたのか」
古泉のことだ、長門から既に聞いていたんだろう。それだと朝比奈さんも知っているのだろう
「えぇ、あなたの家に来る前に教えていただきました。長門さんが言うにはあなたが何とかしてくれる。と言うことでしたが?」
「見込みなんて物はありゃしねぇよ。だけど俺は絶対このメンバーで9月を迎えてみせる。もちろんお前を含めてな」
「おや、それはありがたいですね。僕は力になれる限りでお手伝いしますよ」
おぉ、サンキュな古泉
「おや、名前では呼んでくださらないんですか?」
チッうるさい
「い、一樹。ありがとよ」
「いえ」
いつもの2倍ほどのスマイルで返事をして来る一樹になぜか安堵の溜息をついてしまったのはなぜだろうな?
TVをつけてチャンネルを回していると一樹が口を挟んだ
「おや、これは人気のドラマですね。クラスの方々が言っていました。これをみてもよろしいでしょうか?実は機関がスポンサーをしていましてね」
「勝手にしろ。本当に機関は何でもしてるんだな。尊敬するよ」
ドラマを視聴して15分ほどでハルヒ達が上がって来た
服は既に来ていて体から湯気を立ち上らせている。なかなか扇情的だな。出来ればバスタオル姿をなどと考えているとハルヒが俺の視線に気付いたのかスリッパを野球部もびっくりになれるほどの速度で投げてきた
パッコーン
「な、なにしやがるッ!!」
「あんたこそ鼻の下伸ばして気持ち悪いわね。・・・でもキョンになら」
「キョン君。キョン君はそんな目で見てませよね?・・・キョン君、ぽっ」
「けだもの・・・でもあなたになら」
ハルヒに罵倒され、みくるさんに軽蔑されて、有希に不可視のレーザーで攻撃された.さらに聞こえないぐらいの小さな声で何か言われた
「お風呂空いたわよ。古泉君、入ってきて」
「ではお先に失礼します」
おい、まて一樹。俺を残して何処に行く
「俺も古泉と一緒に風呂に入って来るよ」
ハルヒの横を通り過ぎようとしたときグイッと片を掴まれて止められる
「あんたはここ」
「キョン君、逃げたりしちゃ駄目です」
「あなたはここにいるべき」
すいませんでした。三人とも目だけで人を殺せるような目つきだ、俺はハルヒに引き摺られてソファーに座らされる。今の気分は死刑判決を待つ犯罪者のようだぜ。ハルヒがテレビを消してこちらを凝視する
「なんだよ、俺が何かしたのか?」
「ねぇ、キョン?キョンはこの三人で誰が好きなの?」
思わず絶句したね。それが俺がここに座らされた理由か?馬鹿げている
「好き?何でお前がそんな事を知りたがるんだよ」
「うるさい、はっきりしなさい」
俺の反論を瞬殺し、睨みながらしゃべるハルヒ
「好きとか嫌いとかじゃないだろ?俺はこのSOS団を大切に思っている。もちろんハルヒやみくるさん、有希だってそうだ。みんな俺の大切な仲間だ。三人ともおかしいぞ、好きだとか嫌いだとかで俺はお前達の価値を変えたりしない」
俺が全てを言い終えるまで三人は口を開けなかった。そして、言い終えてからみくるさんが重たい口をあけた
「キョン君、私達が言っているのはそう言う事じゃないの。私達三人ともあなたの事が好きなのよ。キョン君は鈍感すぎるの私達がどんなにアプローチしたって気づいてくれない。だから今ここで決着をつけようとしたのよ」
そう、それはいつものみくるさんからでは全く考えられないくらい冷静で冷たい言葉だった
「そう、朝比奈みくるの意見は正しい。私達、少なくとも私はあなたに好意を抱いている。私はどんな結果が訪れようとも後悔はしない。全てはあなたの意思だから」
「そうよ、私はキョンがすぐ傍にいるだけでいいの。あんたが私の事を好きでいてくれなくても。みくるちゃんや有希と仲良く過ごしてくれるだけでもいいの。私は、あんたのいつも困ったように笑うあんたが好きなの。ぐすっ、ふぇぇぇん」
有希はいつものようにハルヒは目から大粒の涙をこぼしながら思いを伝えてくれた。みんなの気持ちはよくわかった。俺も決めるよ。もう何も気にしない。有希とみくるには悪いが俺はハルヒを選ぶ
「俺は、俺はハルヒの事が好きだ。きっとお前のはじめの自己紹介の時からお前に惚れてたんだよ。ハルヒ愛してるよ」
ハルヒが俺に飛びついてくる。涙を流しながら顔をグシャグシャにして俺の胸に顔を埋めている
「ありがとう、私を選んでくれてありがとうキョン」
そんなハルヒの頭を撫でながら顔をあげて二人の顔を見る。朝比奈さんは手で涙をぬぐい、長門は無表情のまま涙を流している
「ごめん。二人とも。思いに気づいてあげられなくて。踏みにじってしまって。本当にごめん」
泣いているハルヒには聞こえないように言う。二人とも声には出さずにこう言った
「あ・り・が・と・う」
いままで堪えていた涙がいっせいに流れ落ちる。堰をきったように流れ続けた
「キョン」
もう泣き止んだハルヒが俺の頭を胸で抱きしめてくれた。泣いた子を抱きしめ諭す母親のように
「ごめん、ハルヒ。ごめん、みくる。ごめん、有希。みんなの思いに気付いてやれなくて。みんなにこんな苦しい思いをさせてしまって・・・俺が気付いてやれなかったせいで」
「もういい、もういいのよキョン。あんたは優しすぎる。そんな素っ気無い態度を取っていても仲間を大切に思っている。だからこんなにも脆いのよ」
流れ続けていた涙も止まり顔をあげてみんなを見る。涙でぼやけた瞳に三人が天使のように優しく微笑む姿がぼやけていても美しさを損なうことなく写った
「俺、みんなにを裏切らないためにもハルヒを幸せにする。どんな事があっても守り通すから。もし、俺が壁にぶつかったときはみんなの力を貸して欲しい」
SOS団のみんなの姿がぼやけている瞳に写った。クッ、一樹にみられていたとは・・・
「了解した。あなたが何らかの危機に陥るようなことがあれば私があなたを守りぬく。信じて」
「もちろんです。頼りないかもしれないけれど、キョン君達を応援します。禁則事項なんて吹き飛ばすほどに」
「いまさら何をおっしゃいます。あなたの目の前に立ちはだかる障壁など全て僕が粉々にして差し上げますよ」
みんな、本当にありがとう。感謝の言葉も出ないくらいだ
その後、もう夜も遅いと言うことでみんなで寝る事にした。風呂にはまだ入っていなかったので一人で風呂に入っている
「まさか、一樹、お前に見られていたとはな。不覚だったぜ」
「そんな事はありませんよ。本当におめでとう御座います」
突然扉越しから一樹の声がした。お前いたなら言えよな
「いえ、あなたがあまりにもくつろいでいらしたので。声をかけるのは無粋だと思いましてね」
「いつから見ていた?」
「あなたが涼宮さんに思いを告げたところからです」
そうかよ、結局俺が泣いているところは全部見られていたわけだな。まぁいい言った事は真実だからないまさら訂正なんてしない
「その言葉が聞ければ十分です。では、失礼」
と言い残し一樹の影は扉から消えた。ありがとう、一樹
体を十分に温めて風呂を出て、みんなのいるリビングに戻る
「あれ?ハルヒの奴もう寝てるのか。あれだけ泣いたんだから無理もないか」
ハルヒの奴は横になり寝息をたてていた、朝比奈さんは冷蔵庫から麦茶を取り出してごくごくと飲んでいた
「みくる」
「ふぇ?」
ゆっくりと俺のほうを向いたみくるを抱きしめる
「キョン君?どうしたの?」
「ありがとう、思いを伝えてくれて。俺、絶対にハルヒを幸せにするから、みくるの思いを裏切った事を後悔しないように」
「ぐすん、いいんです。これで。じゃあ私、もう寝ますね。おやすみなさい」
麦茶をそのままにしてハルヒ達の寝ているところへとみくるは歩き出した。俺はうっすらと涙を浮かべているのを見逃さなかった。麦茶を飲み乾しハルヒ達の所へ行こうとするとソファーで本を読む有希の姿があった。
「有希、ありがとう。有希の思いも裏切らない。絶対に九月を迎えよう」
「了解。実は私の内部でエラーが発生している」
エラー?一体なんだ教えてくれないか?俺はお前を助けになりたいんだよ。せめてもの罪滅ぼしとして
「先ほどの出来事から原因不明の液体が眼部から流れ出てくる。原因は不明。なぜ?」
有希、それが涙だ。涙って言うのは人間が感動した時や悲しかったりしたときに出るものなんだ
「これが涙。私は人間?」
「あぁ、お前は立派な人間だ」
こんこんと涙を流す長門の頭をそっと抱いてやる。ありがとう
「ありがとう。私もスリープモードに移行する。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ。俺も寝るよ」
長門と共にハルヒ達の寝ているところに寝転ぶ。リラックスした瞬間に急に疲れが襲ってきた。みんなおやすみ
~~~~~そして翌日のお昼時~~~~~
「さぁキョン!ボケッとしていないで行くわよ。遊園地!!早く起きてよ」
「いてぇ、揺らすなハルヒ。わかったよ、わかったからそんなにはしゃぐんじゃない」
寝ぼけた頭の俺をミキサーの如く揺するハルヒ、やめろ脳がシェイクされる
「ほら、有希もみくるちゃんも急ぎなさいよ。今日は一日遊園地で遊ぶんだから!!」
ハルヒのやつは起きたばっかりだって言うのに起きたばっかりだって言うのにこのテンションは何だ?永久機関でもつんでいるんだろうか?考えながらも寝癖を直して身嗜みを整えて玄関まで向かう
「遅いわよキョン!!さっさとしなさいよ!!」
笑顔のままでハルヒが怒鳴る。器用な事が出来るものだ、感心しつつ自転車を持ち出しハルヒ達がいるところまで自転車を引っ張り出す
「さぁ、キョン。早く行くわよ!!遅れたりしたら死刑だからね!!」
俺が来た事を確認すると即座に自転車をこぎ始めて何処かへ行ってしまうハルヒ。残されたのは俺と一樹の二人だけ
「では行きましょうか」
「そうだな」
ペダルをこいでハルヒ達が消えたほうへ向かう。ここからは延々と自転車をこぐ事になるので割愛させて頂く
「さぁ、遊ぶわよ!!」
入園した直後からテンションの高いハルヒ。ハルヒが有希とみくるの腕を引っ張り走り回っている。幸せそうなハルヒの姿を見るとなんか癒されるなぁ
「キョン、あれに乗りましょうよ」
ハルヒが指差したのは地元で有名なジェットコースター
「ハルヒ。俺さ、ああいう絶叫系苦手なんだk「うるさい乗るわよッ!」
30分後 遊園地内の休憩所
「はぁはぁ、ちょっと休憩」
「なによぉ、だらしないわね」
あれから30分間連続して様々なジェットコースターに俺は乗らされた。ハルヒはケロリとしていて「早く次のに行くわよッ」とか言っていやがる・・・
「じゃあ、俺ちょっとトイレに行ってくる」
流石に気分が悪いのでトイレに行く事をハルヒに告げて席をたったのだがハルヒに手を掴まれた、ハルヒだけではなく他のメンバーも心配そうな目で俺を見つめている
「ん?どうしたハルヒ?」
「行かないで」
手の力をより一層こめて俺を引き止めるハルヒ、何がどうしたんだ?
「どうしたハルヒ?トイレに行ってくるだけだぞ」
「わかった。絶対戻ってきなさいよ」
俺は答えずにハルヒの頭を撫でてやり、ハルヒに背を向けて歩き始める
トイレはハルヒ達の姿の見える所にあったしすぐに用もすんだ
「さてと、戻るか」
トイレから出ようとしたら目の前に驚きの人物が姿を現した
「あ、朝倉」
「こんにちはキョン君」
背筋が凍りついた、あの時長門に消されたはずの朝倉涼子が眼前にたっていた。何で朝倉がここにいるんだ
「今回の任務もあなたの殺害。私、実は他の世界であなたの事を殺してたりするのよ。フフフ、残念だったわね。今、長門さんは涼宮さんから離れられないみたいだし。ねぇあなたが死ぬ所を彼女に見せたら彼女、どうするかしらね?」
おいおい、一体なんだっていうんだ、そもそも長門がいないときに襲ってくるなんて卑怯なまねするじゃねぇかよ
「関係ないわよ。私は任務を果たせばそれでいいのだもの。じゃあ死んで」
またもやどこからか出したアーミーナイフでの一閃を何とかかわして長門達の所へ全力で走る
「無駄なの」
ドスッ
鈍い音と共に俺の体にアーミーナイフが刺し込まれた。ドッと血があふれ出る
「私の任務はこれでおしまい。じゃあね」
朝倉はそう言い残し体を翻して消えた
「冗談じゃねぇ。俺はハルヒと有希とみくるとおまけに一樹で九月を迎えるんだ。こんなところで死んでたまるか」
血が出ているところを押さえてハルヒ達の所までゆっくりと歩く、ハルヒが俺に手を振っているが今の俺には返せそうにない。俺の異常を感じ取ったのかハルヒ達が俺のほうへ駆け寄ってくる
「ど、どうしたのよ、キョンッ!!その傷」
真っ先に駆け寄ってきたハルヒが俺の傷を見て悲鳴をあげる。それもそうだなトイレに行っていた彼氏が戻ってきたと思ったら血まみれなんだもんな
「キョン君!!誰が?誰がやったんですか?」
「喋って下さい。誰ですか?」
いつもの表情とは違うみくるとニヤケ面を消した一樹がたずねてくるがあまりしゃべれそうにない
「・・・」
有希は口を開けていなかったが頭に有希の声が響いた
「ごめんなさい。こちらの不手際。本来朝倉涼子は待機命令がだされていたはずだった。けど、急進派の独断であなたを殺害を実行した」
「そうか。そんなに謝るな。有希、次の世界でも絶対にあえる。だから絶対に次の俺に言っておいてくれ。みんなの思いに気づいてやれ、ハルヒと有希、みくるから目をそらさずに思いを受け止めろって」
頭の中で長門との会話が終わると突然ハルヒの声が聞こえてきた
「いや、キョン。死なないでぇ、キョン、キョン」
昨日のように目から涙を流すハルヒ。そうだ、死んでしまう前にみんなに言わないと
「ハ、ルヒ」
「キョン?無理しちゃ駄目よ。今、救急車呼んでるから」
ハルヒの頭をさっきの様に撫でてやる。泣くなよ、ハルヒ
「ハ、ルヒ。ごめんな。おま、つり、行けなくて。でもきっと次があるから。有希が知ってる。髪、よごし、ちゃって、ごめ、ん」
「みく、る。ありがとう。思いを、告げて、くれ、て。またお茶を、飲ませ、てくだ、さ、いね」
泣きじゃくる朝比奈さんの頭を撫でる。
「キョン君!!お茶なんていつだって飲ませてあげますから。今は生きて、生きて!」
朝比奈さんの悲痛な叫びが聞こえる。ほら、あなたも泣かないで
「有希」
「なに?」
昨日のように無表情で涙を流す有希。有希の頭も頭を撫でてやる
「め、がね。似合って、たぞ。また、図書館。いこ、うな。おす、すめの本。しょう、かい、してくれよ」
「約束する。だから今は。今だけは生命活動をやめないで。お願い」
長門からは聞いた事もないような悲しげな声が聞こえる。ほら、お前も泣くな
「生きてくださいッ!!貴方が生きなければ誰が涼宮さんを幸せにするんですか!!」
普段の古泉からは全く想像が出来ないような様子だった。
「い、つき。おまえは、いつも。にや、けてるのが、おにあい、だ。ハルヒを頼む。こ、れ。とくべ、つだ」
一樹の頭も撫でてやる。意識が遠くなってきた。この世界での俺が消える時が来た
「キョン。死なないで、お願いだから。死なないで!!」
「貴方がいなければSOS団は成り立ちません!!」
「キョン君。死んだりしたらダメです!!許しません」
「キョン、あなたのこの世界での行動は確実にループを終わらせるだけの価値があった。だから、安心して欲しい」
みんなありがとう。
「ハルヒ、みくる、有希、一樹。大好きだ」
その言葉を発した直後に俺の意識は消えた

俺は真っ暗闇の中を歩いていた。歩けども歩けども終わりのない暗闇
「確か俺、朝倉の奴にナイフでさされて」
ふと下を見ると、下にハルヒとみくると有希、そして一樹が泣いている。その中心には俺の姿
「そうか、俺。死んじまったのか」

くそ、せっかくループの鍵が掴めたって言うのにな。
泣くなよハルヒ、みくる、有希、一樹
すまん有希、次の俺を頼んだぞ
・・・役に立てなくてごめんな

カーテン越しのまぶしい光に俺は目を覚ました
「あれ?何で俺は泣いてなんかいるんだ?」
カレンダーの日付を見ると夏休みの初日の日付をさしている。いきなり携帯がなった。
「どうせハルヒだろう」
なぜか確信をもって俺は携帯を取った
「もしもし」
「遅いわよキョン!!もうみんな待ってるわよ。早くしなさい!!」
受話器越しにハルヒの声が聞こえる
「わかった、今から行くから」
「早くしなさいよね!!」
ハルヒとの電話を終えて俺は部屋を後にした
「ある夏のシークエンス」


最後まで読んでいただいてありがとう御座いました。自作の小説を投稿するのは初めての事でしたので皆さんに楽しんでいただけたかどうか心配です。至らない所もあったでしょうが。読んでいただいて本当にありがとう御座いました。またどこかで投稿する事もあるかもしれませんが。その時はなにとぞ宜しくお願いします

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年09月08日 01:29