ハルヒに昼休みに部室に来るように言われた。
 
その日、俺は授業中に熟睡していたせいで部室に出遅れてしまった。
俺が着いた時部室には俺以外のSOS団のメンツが揃っていた。
 
どうやらハルヒは手作りプリンを振舞っていたようだが、俺の分は無かった。
俺の分は寝坊の罰としてハルヒ自身に食われてしまったようだ。
そりゃないだろ。
 
「あんたが遅れてきたのが悪いのよ」
「・・・そうかい。」
ハルヒから漂うプリンの甘い匂いが俺の落胆を重いものにした
 
「今更何言っても無駄なんだからね」
「ならあえて言わせてもらおう。すごく食べたかった」
「悪あがきはみっともないわよ」
「今更なのはわかっているが・・・でも俺、実はプリン大好きだからさ・・」
悪あがき上等さ。わざと悲しそうな声と表情で言う俺。
本当にわざとなのかねと疑いたくなるほど完璧な声色だね。
 
対してハルヒは
「ふっ・・ ばっかじゃないの?」
 
お前、今一瞬目逸らさなかったか?
 
 
 
次の日の放課後
 
「先に部室行ってて」
用事があるらしいハルヒにそう言われ俺は部室に向かった。
部室に着く。不思議なことに誰もいない。おまけに誰も来る気配が無い
ふと冷蔵庫を覗くと、とてもわかりやすいところにプリンが一つ
丁寧にスプーンまで置いてある。
 
食べてみる。とても甘くて美味しい
俺は夢中で、でもしっかり味わうようにプリンを貪った。
 
食べ終わった時に図ったようなタイミングでハルヒが部室に飛び込んできた
後で気づいた事だが後ろに他の3人もいたようだ。
 
俺が何か言う前に、必死に怒った顔を取り繕ってハルヒは高らかに言った
 
「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」
 
 
 
「あ・・・ハルヒ。冷蔵庫にあったから食べさせてもらったぞ。旨かったぜ・・ものすごくな。」
「・・キョン?」
「罰金でも罰ゲームでもなんでもするさ。だからもう一回作ってくれないか。今度は・・」
「ちょっとキョン!」
「え?」
「ほら!遅刻するわよ!」
 
その瞬間、布団ごとひっくり返され俺はやっと現実に戻ってきた。
目の前にはハルヒがいる。エプロン姿が今日もよく似合っている
そして俺は無様にもパジャマ姿で寝っころがっている・・・のはいいとして。
これは夢だったのか・・・。
 
懐かしい夢を見た。
あれは高2の出来事だったな。忘れかけていた日の思い出だ。
過去の出来事がそのままトレースされ夢で再現されるなんてなかなか無いんじゃないだろうか。
それにしてもかなり鮮明に思い出させてくれたもんだ。
あの頃の俺たちはまだお互い全然素直じゃなくて・・・
 
「何ニヤけてんのよ。朝ごはんもうできてるからさっさと食べなさいよ。時間わかってるの?」
「え、うわっ もうこんな時間か!?」
 
 
 
 
薄々感付くだろうが俺はハルヒと結婚して共に生活している。
大半の人が妄想する理想の結婚生活をなぞったような幸せを俺はハルヒと共にしている。
ここまでくるのには本当に苦労した。が、まぁここでは割愛させて頂こう
ちなみにハルヒの能力は健在で、古泉は相変わらず機関に所属しているし、朝比奈さんは未来へ帰ったものの、いわゆる仕事場が過去なのでしばしばこの時代に戻ってきてくれる。
長門も同様健在であり、SOS団は今でもたまに活動しており、年に数回同窓会のような感じに集まっている。
 
俺の苦労は今でも耐えない。むしろ今のほうが違う意味で苦労している。
高校のときは学校でハルヒその他相手に苦労していた。今では家でハルヒ相手に相変わらず振り回されている。
あの頃よりは少しマシになったが、俺を引っ張ろうとする力はまだまだ馬にも負けないくらいだろう。
まぁハルヒ相手の苦労は苦労でなく、一種の楽しみでもあるんだがな。
そして会社でもいろいろ苦労は耐えない。実はこっちの苦労の方が今現在は重い。
特に昇進試験なるものが迫っている今は更に体力と精神力を削られていたりもする。
 
 
「じゃあ、行ってくる。」
急いでハルヒお手製の朝食を食べ終えた俺は、靴をトントンと鳴らしながらドアノブに手を掛ける。
「行ってらっしゃい」
なぁハルヒ、信じられるか。
あんなに意地っ張りだったお前が、プリン1つ渡すことさえあんなに遠まわりするお前が、俺のために早起きしてご飯作って玄関まで送り迎えして・・・。
まぁそれを指摘したらお前は「何勘違いしてるの結局最後に火の粉が飛んでくるのはあたしなの」とか言ってごまかすんだろうな。多分。
だから俺は心の中でいつも呟いている。
『いつもありがとう。愛してるよ、ハルヒ』
 
 
俺はその日、普通に会社に行き、普通に帰宅した。
いつもと変わらない平日。毎日違うのにどこかテンプレートな日々。わかるだろう?
テンプレートな日々。わかるだろう?
しかしこの日から俺の生活の一部は変動することとなる。
次の日、再びそれはやってきた。
 

 

 


 

「ねぇキョン。あたし、もしかしたら願望を実現する能力があるのかも」
 
俺は最近のハルヒの様子がほんの些細だが妙なことを気に掛けていた。
まぁアイツの事だからどうせSOS団のサプライズな企画を練って俺を困らせようとしているに違いない。
そう思っていたのだが、ここ数日はそうでもないかもしれんと疑っていた。
たまーにだがハルヒはどこか遠くを見たり、険しい顔をしてボーっとしたりと俺はなにかの前兆を見定めてやや落ち着かなくなる。
 
そんなことをうっすらと考えながら休み時間になったわけだが、さておまえはいま何と言った?
「だから、あたしってひょっとしたら世の中を思い通りに動かせるかもって」
「アホ。そんなわけあるか」
そう言いながら当然俺は内心少し動揺していた。だってそうだろ? そうなんだから。
「あのなぁハルヒ、もしそうだったらおまえはとっくに、・・・宇宙人や未来人や超能力者と遊びまわってるだろうに。大体何でいきなりそんなことを言い出すんだ」
自分で言っていて違和感があるが、そんな様子を一切出さないように俺なりにがんばったつもりだが、ハルヒはそんな俺を見て一瞬顔を少ししかませた。
「・・・初詣に行ったとき、おみくじ引いたでしょ?あの時よ」
「ああ、あれか」
SOS団で初詣に行ったときに俺達はハルヒにひっぱられておみくじを引いた。
今年の命運だの大げさなことを言いいながらハルヒは真っ先におみくじ自販機に100円を投入してあっさりと大吉を当ててしまった。
どうでもいいが最近のおみくじは自販機なんだな。
朝比奈さんや長門や古泉はそれぞれそれなりの結果だったが、俺はというとハルヒと同じで大吉を当ててしまった。
古泉の白い歯付きのアイコンタクトを無視して偶然だと思いこんでいたのだが、そうではないらしい。
ハルヒのことだ。俺の今年の分の運を使ってしまえとでも思ったのだろう。
 
 
しかし今はそんなことを考えている場合ではない。
「おまえは物事を都合よく考えるタイプだからな、どう考えても偶然だろ」
「残念ね。もしそんな能力があったらあんたの望みも叶えてあげようと思ったのに。
もちろんSOS団の名が全銀河に知れ渡って世界の中心はあたしだということを世界中が認める正義の世の中になった後だけど」
どんな世の中だ。正義の意味をどこで教わったんだ。
ハルヒの誇大妄想を聞くうちに休み時間は終わった
。こいつの願望は宇宙人や未来人や超能力者や異世界人に会うとか地球を逆回転だとかフィクション現実化とか本当にそんなのばっかりだ。
勉強ができるなら少しは現実的な願望を持ってもいいだろう。
と、前まで思っていたが、最近になってからは俺はそうは思わなくなっていた。
あの夏の時点で気づかなかったことが悔やまれる。SOS団の目的はそれこそ宇宙人や(略)を探して共に遊ぶことだが、それは最初だけだ。不思議探索も今は名前だけだ。
訳は少し違うが古泉の言葉を借りると、これはわかってしまうのだから仕方が無い。
だから、今ハルヒが望んでいることは非現実的な出来事の襲来ではないと思っている。
俺はそう信じている。
 
 
放課後になり、俺の脚はプログラム通りに無駄なく部室へと進んでいった。
ハルヒは用があるから俺より先にどこかへ行ってしまった。
部室の前で俺はノックする。返事無し。何も考えずにドアを開けた。
中にいたのはハルヒ1人で、長門や朝比奈さんや古泉はまだ来ていなかった。
ハルヒはパソコンでいつもの如くサーフィンをしていた
「ん、おまえだけか。どこかに用があるんじゃなかったのか」
「別にないわよ。むしろ用があるとしたら、キョン。あんたによ」
なんとなく嫌な予感がしたが、ハルヒの表情は俺の予想とは違い少し虚ろになった。
・・・が、すぐに顔を上げて尋問よろしく俺に詰めかかってきた。
「いつごろだったかは忘れたわ。でもSOS団を中心とした活動を振り返るとあたしの思い通りに世の中が変わってるとしか思えない出来事が沢山あるように思えるのよ・・・。
いえ、実際そうなんだわ。キョン、あんたなにか知ってるでしょ!?」
いきなりなんだこれは。勘がいいのは分かっていたがまさかこっち方面にまで及ぶとは。
ハルヒの言うことはまさに大当たり。どうする?休み時間のように大人しくそんなわけあるかと流し口調にするか・・・いやもうそれも危ない。
そうかもな、ととりあえず冗談話として肯定するか?・・・いや本気でそう取ったらと考えるともっと恐ろしい。
こうした脳内葛藤の結果、やっぱり冗談話のように軽くスルーしようと結論が出るまでの時間は1秒に満たなかったがハルヒとの心理戦はハルヒの勝利に終わってしまった。
「あのなぁ・・・」
「ふふっ、やっぱりね。」
「ん?」
「今のはデマカセよデマカセッ!自分の思ったとおりに世の中変えられるわけないじゃない。
なのにキョンったら必死にいろいろ考えちゃって、休み時間にも思ったけど、やっぱりあんたあたしに何か隠し事してるでしょ。」
こいつ、やりやがった。
そうしてハルヒは真に迫る奇妙な笑顔で俺を脅迫し始めた。
 
 
そんな大当たりのデマカセありかよ。ハルヒが知りたかったのは願望云々ではなく質問に対する俺の反応だったとは。
古泉とのゲームでポーカーフェイスを鍛えた俺でも筋書きは普通の男子高校生だ。動揺するなと言うほうが無理だろ?
「なによ。黙り込んじゃって、益々怪しいわね。まさか・・・」
そんなことを考えてる場合ではない。ハルヒがすぐそこまで迫っていた。(精神的に)
まさかの後は考えるのも恐ろしいがその時既に俺の口は勝手に動いていた。
「・・・そうさ、流石だなハルヒ。もう隠せないな。確かに俺は重大な隠し事がある。」
「ふぅん。やっぱりね。言ってみなさいよ」
不適な笑みで俺に問いただしてくるハルヒ。
そうやってお前はいつも俺から余裕を奪っていくんだよな。いろんな意味で。
だからよっぽど大事な隠し事じゃないとどうしてもすぐにばれちまうんだよな。
「でもな、人に言えない隠し事や悩み事を持つなんて誰にでもあることだろ?だから言えないな」
「何それ?ここまで焦らしておいて吐かない気?」
心配するな。どうせばれるんだから。
俺が最近になってやっと自覚した、悔しくて認めたくないけど、確かなこの想いをな。
 
「まぁそのうちわかるさ。お前にもな」
「何よその笑み!なんか腹立つわね、雑用のくせに鼻伸ばしちゃって。」
どうやら俺は笑っていたらしいぞ。
「あんたがそんな変な笑い方するなんて、こっちまでニヤニヤしちゃうわよ。」
お前だって徐々に変な笑みが浮いてきてるぞ。
「あーもうしょうがないわね。近いうち絶対に吐かせてやるんだから。」
どうやら俺は何らかの衝動を抑えているらしいぞ。
 
 
「こんな横暴な団長さんなのに、どうしてこんなに楽しいのかね。このSOS団とやらは」
少し経って呟いてみた。
こいつには毎度毎度驚かせられっぱなしだが、今回は久しぶりに度肝を抜かれた気がする。
 
「当然よ!あたしには願望を実現するチカラがあるんだからっ!」
 
 
 
・・・・2回目だな。
気が付いたら俺はやっぱりベッドに寝転んでいた。
自分のプロフィールを確認しよう。
俺はハルヒと結婚して、会社で働いていて、四捨五入したら歳は30で。
うん、、よし。無意味だとは思うが分析してみよう。
 
これまた懐かしい日の夢だったな・・。
本当に自分の能力を知っていたかのような団長のお言葉が心地よく響く。
起きた時に自分が大層驚いてる実感が湧いてたのは夢の臨場感が普通じゃなかったからだろう。
随分これまた鮮明に蘇ってきたものだ。
俺の深層意識は昔と今を比べたがってるのか?
いやそんなことはないね。今は今で昔は昔さ。
 
卵を焼く音が聞こえる。
もうそろそろ起きないとハルヒが起こしに来ちまうな。
 
夢の余韻に浸りながら、俺は寝室を後にした。
 
 
 

 


 

夕日が俺たちを綺麗に照らして、なんでもない会話が妙にドラマチックに聞こえる帰り道。
俺はハルヒと2人で坂道を下っている。
SOS団の次のイベントの企画に俺が参加することはなかなか珍しいのでちょっと新鮮な気分だ。
いつも古泉とかとひっそり俺を驚かす企画をしてるくせにさ。
言葉で表現しにくい感情が腹の辺りで蠢いている。
ほんの些細な事なのに、ハルヒと秘密を共有できたことが嬉しい。それだけなのに。
ただそれだけなのに な。
 
会話の内容は何故かあまり覚えていないが、すごく楽しかったことは覚えている。
何よりハルヒが何かを企んでいる笑顔を俺が占領できるのが嬉しかった。
この瞬間をを誰にも渡したくない。これからもこうやってハルヒを独り占めしたい。
と、一瞬でも思ってしまった俺。いやもうわかってるんだろ俺。
もう我慢できないんだろ?
 
気づいたらハルヒの家が見えてきていた。
どうやら俺はいつもの分かれ道を無視してハルヒの家の方角に来ていたらしい。
やれやれ・・何でこんなに時間が経つのが早いんだろうね。
 
 
「キョン?聞いてるの?」
「ん?あぁ・・いや・・・」
「もう、ちょっと目離すとすぐこれなんだから」
「なぁ・・ハルヒ。」
「何よ」
「俺の悩みを聞いてくれ」
 
自分で言うのもアレだが切り出し方が良いとは言えない。言葉はやっぱり重要だな。
ハルヒは俺の顔を見て、何?とでも言いたげに顔をしかめてきた。
なかなか切り出せない。でももう伝えたくてしょうがない。
口が半開きになったまま停止する。やっぱり怖い。だってハルヒなんだぜ?
葛藤は無言の時間となってハルヒに不安を与えていく気がして、それは嫌だと思った瞬間口が開いた。
 
「俺さ・・実はお前に惚れてるんだが。」
 
・・・言えた。
もう少しだ。あともう一言・・・
 
「もうどうしようもなく好きだ。好きなんだよ。ハルヒ!」
 
ベタな少女漫画でさえもっとマシな告白をするだろうと思った。
 
 
ハルヒは固まっている。
俺は次に来る言葉を予想せざるを得なかった。
いつぞやの谷口の言葉がフラッシュバックする。普通の人間には興味が無い。
急に後悔の念に襲われた俺は逃げ出したくなる衝動に駆られる。
俺がこうやってごちゃごちゃ考えている間はハルヒにとって数秒だったらしい。
こいつはやっぱり俺の予想斜め上をいった。
 
「ふふっ・・ 知ってたわよ」
ハルヒはクスクスと笑い始めた。
なんだって・・・
 
「もうそろそろかなって思ってたりもしたのよ。あんたの考えなんてお見通し。」
今度は俺が固まる番だった
「そ。あんたの考えてる事なんて見てればわかるわよ。何でだか分かる?」
最後の一言を聴いた瞬間心臓が急にバクバクと暴走を始めた。
 
 
「キョン。あんたが好きだからよ。あたしも!」
 
「ハルヒ・・・!」
 
聴いた瞬間、これは間違いなく脊髄反射だろう。ハルヒを抱きしめた
いきなり抱きしめられるのは予想外だったのか、ハルヒは驚いた様子だったが、やがて俺の背に手を回してぎゅっと抱き返してくれた。
柔らかい。ハルヒの髪から漂ういい香りも含めて急に全てが愛おしくなり、俺は更に力を込める。
この気持ちを伝えたくて口を開いたが、何故か素直に「ありがとう、ずっと一緒にいような」というような言葉が出て来なかった。
喉で言葉を彷徨わせているうちに、先にハルヒがぼそっと呟いた。
「言うのが遅いのよ。バカ。」
「実は最初にお前の自己紹介を聞いたときから言おうと思ってた。」
「ウソ。気づいたのだってわりと最近になってからなんじゃない」
「ほんとにお前はどうしてお見通しなんだよ」
「だから言ったでしょ?何度も言わせないの」
「わかってるさ。ハルヒ」
ハルヒの腕にもグっと力が入った。
 
ここでやっと思い出した。そういえばここはハルヒの家すぐ近くの道路だ。
いくら日が暮れた住宅街とはいえ、第3者が微かに視界に入っては消えていく様子を見るのも・・・
やっぱりちょっとマズイよな。
体制を改めてハルヒと向かい合う。いつもと変わらない距離なのに、凄く近くにハルヒを感じる。
 
 
俺は左胸をトントンと叩いた。
「俺のココを奪った責任、取ってくれよな」
「それ、あたしのセリフ。」
「お前でもこんなくっさいセリフ言うのか」
「うるさいわね。キョンあんた顔真っ赤。」
「む・・ハルヒこそ。耳まで赤いぞ。」
「そんなわけないじゃないっ!」
「ほら今赤くなった。」
以下略。
いつもじゃ考えられないやりとりだな。
でももう今日は遅い。ふと時計を見たら結構な時間になっていた。
 
「なんだか、別れが寂しいな」
「明日、また会えるじゃない。」
「ああ、明日朝迎えに行くからな。」
「ん、ありがとっ」

ここでハルヒはいつもの溢れんばかりの笑顔を見せてくれた。
これで俺に感情のコントロールをしろと言うほうが無理なもんだ。
 
ハルヒの頬に手を添える。
暫し無言で見つめあい、俺はハルヒの唇を塞いだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ここは部屋。俺の部屋。
首をひねればそこはベッドで俺は床に直接寝転がっている自分を発見した。
なんつー夢見ちまったんだフロイト先生も爆笑だぜ。
 
・・・とかやっている場合ではない。
キスして現実に戻ってきたとはいえ、あの時とは何もかもが違う。
自分の頬を触ってみる。熱い。今鏡を見たら間違いなく赤面した間抜け面が映るだろう。
ああ、今じゃ絶対出来ない恥ずかしい告白をしたんだったな・・・俺は。
夢なのはいいんだが、やっぱり妙にリアルなのは少し困る。
起きた時の布団を抱きしめて顔を埋めてる格好はハルヒに見せられんからな。
 
さて、3日目である。
3日連続でハルヒとの懐かしい思い出が夢で再現された。もう偶然とは思えない。
偶然じゃない=ほとんどハルヒの仕業 が方程式だが、今回もハルヒの仕業だとすると、それはハルヒがなんらかの理由があって俺に毎晩夢を見せているということになる。
でも俺が言うのも変かもしれないがハルヒは別に今の生活に不満を持ってそうにも無い様子なんだよな。今の生活は関係ないか。
やっぱりハルヒの考えていることはわからない。
直接聞くか? いやもう少し様子見か?
・・・やっぱりもう1日様子見しよう。
今日で終わるかもしれないからな。
 

 

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最終更新:2021年01月25日 16:47