「ね、皆雪よ雪!!」
部室の窓から空を見上げた涼宮さんが声をあげた
その声に反応するように僕たちは外に目をやる
「綺麗じゃない?そう思うでしょ!?キョン」
「綺麗だとは思うけど帰り寒そうだな…」
「まったくなんでアンタはそうやって物事を素直に褒められないのよ!!」
まったく同感ですね。素直じゃないのは涼宮さんも一緒ですけど
二人の会話に耳を傾けながら僕は心の中で呟いた
「ねぇみくるちゃんそう思わない!?」
「・・・・・」
「ちょっと聞いてるのみくるちゃん!!」
「ひょぇっ!」
いきなり話をふられた朝比奈さんは何か考えごとをしているみたいだった。
驚いたときの彼女は少し可愛いと思う。
「何ボーっとしてんのよ?あ、雪に見惚れてた?」
「えぇーっと…そ、そんなところです」
涼宮さんはふーんと言うとまた彼との会話に戻っていった。
それにしても今日は帰り道は寒そうだ。外に降り積もっている雪を見て僕は思った。
そう思っていた僕に長門さんの本を閉じる音が聞こえる
いつもより少し早い。宇宙人も雪の日は早く帰りたいと思うのだろうか?

「あ!私今日傘持って来てない!!傘なしで帰ったら風邪ひいちゃうわよ」
誰よりも帰りの私宅が早く終わった涼宮さんが声を上げた
「そーいや俺も持ってないな」
「じゃあ一緒に傘とりに行きましょ」
「どこにだよ」
「その辺よ」
そう言って涼宮さんは彼の手を取った。
そんな仲の良い光景を見せられて僕はつい口が動いた
「傘はまた一本だけなんですか?」
「「えっ?」」
僕の思わぬ発言に涼宮さんと彼は同時に驚いた。
二人ともだんだん顔が赤くなっていく。
これは面白い。
二人は何か言いたそうな顔していたが無視をした
「朝比奈さん、長門さん、僕達は先に帰りましょうか?」
朝比奈さんは笑いながらそうですねと言った。あいかわらず長門さんは無言だ
こうして僕は朝比奈さんと長門さんを連れて部室を後にした

昇降口に来た時に僕は朝比奈さんの違和感に気付いた
彼女はこんな寒いというのに身に付けているのは学校指定のカーディガンだけだ
寒そうに体を震わせている
もしかして部室にコートやマフラーを忘れて来たのだろうか?
…いや、いくら彼女でもそれはない
「朝比奈さん、なんでそんな寒そうな格好してるんですか?」
すると彼女は少し恥ずかしいそうに答えた
「え…っと今日、朝遅刻しちゃいそうになっちゃって急いでたら忘れてきちゃったんで
す。あ、でも気にしないで?私は大丈夫ですから」
と彼女は微笑みながら答えた。
そうか。さっき部室で何か困ったように考え事をしていたのはこのことだったのか。
「震えている」
僕の隣にいた長門さんがポツリと言った。そういえば今日初めて声を聞きましたね
そう思いながら僕は朝比奈さんを見た。
ガクガクと体は震えとても大丈夫そうには見えない。
寒さのせいか涙目になっていて白い足は赤くなっている。…見ているこっちが寒くなる
僕は自分の着ているコートを脱ぎ朝比奈さんの肩に羽織らせた。
「えっ!?私平気ですよ?家までの辛抱ですから。
それにこれじゃ古泉君に寒い思いさせちゃう・・・・」
いきなりの僕の行動に彼女は戸惑っている。
「少し大きめですが我慢して下さい。無いよりかはマシでしょう?」
僕はそう言って彼女に無理矢理コートを着せた。
「ほ、本当に大丈夫ですから!!だから…」
「人の好意は素直に受け取るものですよ?」
そう言いながら僕は自分のマフラーをとって彼女にまいた。
「ほ、本当にすいません。ありがとうございます。
・・・・古泉君は平気なんですか?」

「走って帰りますから平気ですよ。それより帰り道滑らないように気をつけて下さいね?
朝比奈さんはすぐに転びますからね」
と言って僕が意地悪そうに笑みを浮かべたら朝比奈さんは、大丈夫ですよ!!
といいながら顔を赤らめていた。…可愛いと思ったのは秘密だ。
「長門さん、朝比奈さんが転ばないように見ていてあげて下さいね?」
「まかせて」
「では、また明日」
僕は二人挨拶すると、雪の中を走って家に向かった。

次の日、僕は咳をしながら学校に向かった。
こんなところを朝比奈さんに見られたら恥ずかしい。
あんなことをしといて風邪をひいただなんてこの上なく格好悪い。
登校中朝比奈さんへの言い訳を考えながら歩いていると後ろから声をかけられた

「よぅ、古泉。風邪か?」
「古泉君、おはよう。咳でもして風邪でもひいたのかしら?」
振り向くとそこにはニヤニヤしながら涼宮さんと彼が立っていた。
なるほど…この二人は昨日の出来事を見ていたわけか。
「おはようございます。昨日も傘一本で帰ったんですか?」
僕は二人を撃退できるであろう言葉を口にしたが彼らは怯まなかった
「あの寒い中、自分のコートを貸すなんてなかなか出来ないわよ。」
「でもそれで風邪ひいてちゃ格好つかないな」
昨日の仕返しというわけか・・・・。
昇降口のところで彼等とは別れたが、その間ずっと僕はからかわれた。
今日の朝比奈さんの衣装はナースがいいなとかなんとか言いながら
教室の向かう彼等の背中を見送ってから僕は教室に向かった。

教室に向かう途中、鶴屋さんと談笑しながら歩いている朝比奈さんを見つけた
僕は彼女に見つからないようにペースを落とした。
彼女は元気そうに笑っている。

そんな姿を見て僕は彼女が元気なら風邪をひくくらい安いものだな、と思った。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年01月14日 23:02