『ねえキョン、キスってしたことある?』
まただ。
ハルヒに携帯のメールアドレスを教えてから、理解に苦しむような内容のメールが頻繁にくるようになった。
無視をすれば後から後から返事催促のメールが届くし、いちいち答えを返さないといけないのがひどく面倒だ。
こんなことなら教えるんじゃなかったと後悔しきりだが、今更どうしようもない。
メールアドレスを変えることも考えたが、そうすればハルヒの追求を受けることは目に見えている。
『ねーよ。明日も街を探索するんだろ?早く寝ろ』
長々と返事をしているとつけあがるので、出来るだけ簡素に、だが怒らせない程度に返事をするのは肩の凝る作業だ。
『やらないか』
『意味がわからん。俺はもう寝る』
いったいどういうつもりでこんなメールを送ってくるのか。
アイツのいってることは支離滅裂だ。
ハルヒのメール攻勢に辟易している俺は、今日もストレス解消で深夜のネットに入り浸る。
よし、『510』ゲット。『いまからそっちに行く』って打ってやれ。
『暇なので団員に安価メール』か…世の中にはホント暇なヤツが多いよな。
ヴヴヴ…、ヴヴヴ…。
ああもういいとこなのに、またハルヒからのメールだよ。
『今からキョンの家に行っていい?』
おいおい、一体何時だと思ってるんだ。いいわけないだろう。
安価の結果も気になった俺は、『ダメだ』とと乱雑に返事を返す。
掲示板のほうは…良かった、まだ進展はないらしい。さて…。
ヴヴヴ…、ヴヴヴ…。
ほっとしたのも束の間、またもメールだ。
いい加減にしろよ、ハルヒ!
『なにが?』
なぜか長門からだった。
…いや、俺が間違えてたのか?
す、スマン長門!
『なんでもない。どうやらハルヒと間違えた。寝ているところ起こしたのなら済まない』
『いい』
ありえないほど早い返信。しかもそっけない。これでは怒っているかどうかもわからない。
長門のことだから、怒ってはいないと思うが…。
改めてハルヒには拒否のメールを送りなおし、再び掲示板に向かう。
おっと、進展があったか?ふむふむ…ダメだった?相手の男は相当のチキン野郎だな。
そんじゃ安価を…って、ハルヒにメールを打ってる間に終っちまってる。
安価の内容は『無理にでも押しかける』か。これはwktkな展開か?
ヴヴヴ…、ヴヴヴ…。
おいおい…俺のささやかな楽しみを奪わないでくれよ。
しかし出ないと次の日の被害は甚大だ。仕方無しに携帯を見る。
『問答無用!今から行くからお茶を用意しといてよね』
何しにくるんだよおまえ。
趣味のネット観賞を邪魔された俺は、もうキレぎみに返事を返した。
『なにをやりたいか知らないが、そんなに来たきゃ勝手に勝手に来ればいいだろ!そのかわりなにをされても文句言うなよ!!』
これくらい脅しておけば、ハルヒもあきらめておとなしくなるだろう。
さてさて、掲示板に戻るとするか。
…うーん、進展がないな。さっきの安価がまずかったか?
ピンポーン♪
来客?こんな夜中に?
…って、ホントに来やがったのかハルヒのやつ!?
慌てて玄関へと向かう俺。悪い予感が的中しませんように。
おそるおそる扉を開けるとそこには…。
古泉が期待に満ちた目で立っていた。
『メール>古泉一樹
送信しました』
BAD END
最終更新:2007年01月12日 02:06