家に帰り着く頃には、すっかり暗くなっていた。
空を見上げても、星は見当たらない。
舞い降りてくるのは、私と同じ名を持つもの、ユキ。
 
『星空見上げ 私だけのヒカリ教えて
あなたはいまどこで 誰といるのでしょう? 』
 
彼と涼宮ハルヒが付き合うことになったのは昨日。
最近では涼宮ハルヒの能力も衰え、世界も安定してきた。
彼と一緒に居られる時間も、あと少しなのだろうか?
エラー、私の任務も、終わりが近づいてきているのだろうか。
 
『楽しくしてるコト思うと さみしくなって
一緒に観たシネマひとりきりで流す』
 
いつもならSOS団の活動があるはずだった今日、
活動の中止を伝える涼宮ハルヒの電話の声は、どこか弾んでいた。
きっと、彼とデートするのだろう。
エラー
気がつくと私は、街に出て一人映画を見ていた。
彼と一緒に見た映画。
エラー、エラー
前に小説で読んでいたものが映画化されたということで、彼が連れて行ってくれた。
小説とは比べ物にならないくらいの出来の悪さで、彼は悪かったと必死に謝っていた。
でも、私は嬉しかった、だって、エラー、エラー、エラー、エラー。
 
『大好きなひとが遠い
遠すぎて泣きたくなるの
あした目が覚めたら
ほら希望が生まれるかも Good night!
 
I still I still I love you!
I'm waiting waiting forever
I still I still I love you
とまらないのよ Hi!!』
 
コタツで眠りこけている自分にハッと気づく。
窓の外は暗く、ユキが寂しく舞っている。
あの後、コタツに入り込み、そのまま寝てしまったのだろう。
久しぶりに夢を見た。
私が世界を改変してしまったときの、あの夢。
 
『眠りのふちで ユメがくれる想い出の One day
あなたの言葉には 少しウソがあった』
 
あの冬の三日間の思い出を凝縮した夢。
現実の私はあの世界を私は観測していただけだったのに、夢の中では私は無口な本好きの少女だった。
ただ、実際と違ったところが一つ。
彼はEnterキーを押さずに、あの世界にとどまる事を選んでくれた。
そして……
 
『離さないよとキミだけだと
抱きしめたのに
約束がフワリと暗い夜に消えた』
 
エラー、エラー、エラー、エラー、エラー、エラー、エラー
エラーが脳内から消えない。
説明不能のこの感覚は、いったいなんだろうか。
エラーにまみれた脳はさらなる睡眠を欲している。
シャワーを浴びる気力もなく、布団にもぐりこむ。
あの夢の続きを、見れることを願いながら。
 
『大好きなひとよいつも
いつまでも探してしまう
きっと目が覚めても
まだ幻を感じたい Morning
 
I lost I lost I lost you!
You're making making my music
I lost I lost I lost you!
もう逢えないの? No!』
 
「大好き」
布団の中で小さく呟いてみる。
簡単なこと、夏の孤島でも、何も考えることなしに言えたこと。
どうしてこの言葉一つを彼に向かって言えなかったのだろう。
この言葉が言えていたのなら、彼の隣にいたのは私だったのだろうか?
胸が締め付けられる。
エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー、解析不能。
 
『大好きなひとが遠い
遠すぎて泣きたくなるの
あした目が覚めたら
ほら希望が生まれるかも Good night!
 
大好きなひとが遠い
遠すぎて泣きたくなるの
きっと目が覚めても
まだ幻を感じたい Morning』
 
気づけば私の頬は濡れていた。
この体に涙を流すという機能がついていたのを初めて知る。
枕にしみこむ涙が止まらない。
彼のことを忘れられる日が来るのだろうか。
否、私は彼の側で、永遠に彼のことを思い続けるのだろう。
決して、手に入ることのない彼を。
 
『I still I still I love you!
I'm waiting waiting forever
I still I still I love you
とまらないのよ
 
I still I still I love you!
I'm waiting waiting forever
I still I still I love you
また逢えるよね? ね!!』

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年03月15日 19:03