………
 
眠れない…。
 
これで何度目になるだろう、静寂のなか薄暗い部屋で、彼が眠っていた布団に包まれ、目を閉じる……。
しかし、瞼の裏には記憶が映しだされ、彼の顔が画面いっぱいに広がる。
 
なぜだろう?気が付くと、彼のことばっかり考えている。
これはエラーなのだろうか?
なぜこんなにも私の睡眠機能を妨害されるのだろう。
そんなことを考えていると、いつのまにか眠ってしまったようだ。
 
「ふふふ。長門さん、好きなんでしょ、彼のこと」
好き…?たぶん違うと思う……。
「そう、まあそのうち分かるわよ。自分の気持ちに…」
 
朝。太陽の光がカーテンの無い窓からさしこんできて目を覚ます。
今日は、不思議探索の日ということで軽く朝食をとり、家を出る。
着替える必要はない、いつもの制服で十分だ。
でも、私服で行ったら彼が喜ぶかな……。
いけない、またエラーだ。
 
集合時間15分前、いつもの駅前に到着する。
彼はまだのようだ。
「おはよう有希!」
「お、おはようございまぁ~す」
「おはようございます、長門さん」
三人ともあいさつをしてきた…。
私は軽く会釈をする。
 
しばらく待っていると、彼がやってきた。
「遅い!罰き…」
「はいはい、分かったから」
彼はもうあきらめがついているようだ。
 
そうして、いつもの喫茶店に入る。
私は、注文した飲み物を飲みながら、彼といっしょになればいいなと毎回考えていた。
そして、涼宮ハルヒのクジを引く、私は無印だ。
彼は…、私と同じ無印だった。うれしい。
他の人は、古泉一樹が印入り、涼宮ハルヒが印入り、そして朝比奈みくるが無印だった。
(あら、残念ね。二人きりじゃなくて…クスクス)
別に残念とは思っていない。
 
こうして、彼と朝比奈みくると私で不思議を探すことになった……。
とはいっても、探す気なんかないことはみんな同じだろう。
 
「いい!デートじゃないのよ!鼻の下のばしてんじゃないわよ!!」
そう言って彼女は歩いていった。古泉一樹がやけにニヤニヤしているのはなぜだろう?
 
「朝比奈さんはどこか行きたいところありますか?」
彼は彼女にきく。
「いえ、特には…」
「そうですか、長門はどうだ?」
彼がたずねてくる。図書館と言いたいが、今は朝比奈みくるもいるのでやめておく。
「……ない」
私は彼の顔を見ずにこたえた。
「…そうか」
彼は少し困った様子で、
「じゃあそこらへんをブラブラしてますか」
「はい」
そんなやりとりが交わされて、私は彼の後ろについて歩いている。
彼は、朝比奈みくると会話を楽しんでいる……羨ましい。
私も情報伝達能力がもっと高ければ―――。そんなことを考えていると、いきなり話がふられた。
「長門も鶴屋さんの小説おもしろかったよな?」
「…………」
私はこたえることもできず、ただうなずくことしかできなかった。
(ふふっ、手でもつないでみれば?)
そんなことはしない。
(恥ずかしがることないのよ。早くしないと涼宮ハルヒにとられちゃうわよ)
…………。
 
そんなことをしているうちに、集合する時間がやってきた。
 
駅前につくと、もう涼宮ハルヒと古泉一樹が待っていた。
「ふん!じゃあクジ引きするわよ」
彼女はイライラしているようだ。
みんながクジを引く、私は印入りだ。
彼は…印入り。今日は運がいいらしい、彼は私を見ると微笑んでくれた…。頬が熱くなるのを感じる。
あとの三人は無印だった。
みんなと別れる。行くところは決まっているも同然で、彼がたずねてきたときは、
「図書館」
と即答した。
 
私は彼の後ろについて歩いている。
会話はしないけれど、二人で歩いているだけで幸せな感じだった。
(たまには、図書館じゃなくて映画館とかもつれてってもらえば?)
…………。
(せっかくの二人きりになれたのよ。それにこれはデートと変わらないわよ)
…………。
(涼宮ハルヒのことなんて気にしないで、ホテルでも行っちゃえばいいのに)
うるさい。
 
お互い無言のまま、今では行き慣れた図書館についた。
人影も少なく、冷房のきいた閑静な室内に足を踏み入れる。
私はこの空間がとても好きだった。
私は、本を手にとりその場で立ち読みをする。その間、彼はだいたいは眠っている。
(ねえ、彼の近くで読んでみたら?肩によりそったりして)
………///。
 
本を読んでいるとすぐに時間がすぎる…。
彼が、私に帰ろうと言ってきた。私は彼の肩から頭をどかし、図書カードで本を借りた。
 
私は図書館で借りた一冊の本をもって彼と並んで歩く。なんだか楽しい。
いきなり彼がこっちを向く。どうしたのだろう?と思っていたら、無意識に手を握っていたようだ。
(やればできるじゃない、ふふふふっ)
「長門どうしたんだ?」
別に…。
「おい、ハルヒに見つかったらまたうるさく言われるぞ」
…いい。
「…やれやれ」
私は不安になり、彼にたずねる。
「…嫌?」
「そっ、そんなことないぞ、うん。どっちかっていうとうれしい」
「…そう」
私は彼の言葉を聞いて、安堵した。
 
できることなら彼とずっと一緒に……。
そんなことを思いながら私は、握る力を少しだけ強くしていた…。

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最終更新:2020年03月15日 18:22