SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ ジョジョの奇妙な冒険第4部―平穏な生活は砕かせない― 第13話

決闘、争いを好まない私がこんな野蛮な行為を物事の解決に用いる日が来るとは。
だがここで墳上を潰せば、私を追い詰められるスタンド使いはもう居ない筈だ。
墳上を見るに、あの日『バイツァ・ダスト』を発動してから残るスタンド使いは私に『対応』して動いている。

私と戦う気があるなら岸辺露伴の様に私を捜索しただろう。
能力も露伴の奴なんかよりずっと追跡に向いた物を持っている。
なのに、それをしなかったのはこいつが私を避けていたからだ。
由花子は女であることを理由に私との接触を避けるよう言われていたのだろう……。

その由花子が身を乗り出して私を殺しにきた時にもこいつは何もしなかった。
正義漢ぶってはいるが、結局は仕方なく私を倒しにきたのだ。
もう戦える人間はこいつしか居ない筈だ。

如何に『あの目』をしても、その下にある身勝手で自分本位な本質までは変えられない。
この死に掛けのゴキブリにも劣る下等なクズを都合良く丸め込み、虫けら以下の死を与えてやる。

「……話せ」

そら来た………女も助かって私も殺せる都合のいい選択肢が存在したとして寄越すと思っているのだろうか。
女を捨てれば私に勝てたものを、愛という愚かな行動理念がお前の身を滅ぼすのだ。
『キラー・クイーン』に百円玉を二枚持たせ、そのうち一枚を親指と人差し指にはさみ墳上に向ける。

「私の『キラークイーン』は爆弾を二つまでしか作れない。
この爆弾コインを二枚……それを凌げば君の勝ちだ。」

聞いただけでは私が有利だろう、だがこの条件であっても不利なのは私である。
墳上が『ハイウェイ・スター』で壁を作れば、『キラークイーン』に隙間を縫ってコインを放つ精密性はない。
同じ軌道に二枚続けて発射するぐらいは出来るが『ハイウェイ・スター』の壁で視界が悪くなれば当たる保障はない。
まとめてふき飛ばそうと接触爆弾になる前に、手動で爆破すれば自分の身が危うい。

私の有利を匂わせておき、その実私の攻撃を壁一つで完封できる墳上に有利な条件。
あからさまに有利にしては胡散臭いと思ったからだ。

しかし、そんなことをしなくても奴は受けただろう。
受けざるを得ないのだ、判断力が鈍って自分が不利と思っていたとしてもこいつが目指す『勝利』の目的は変わらない。
奴らの考えでは犠牲の上に勝利は成り立たない……何があっても女を見捨てるはずはないのだから。
愚かなことだ……勝利に犠牲はつきもの、そんな判りきったことで命を落とす。

私は自分の為に生きている、自分の為に『睡眠』を取り、自分の為に『食事』を取り、自分の為に『手首』を切り取る。
誰かの為に自分を犠牲にする理解しがたい精神を正義と吠え……良心という無益な枷に囚われているカス共。
私の生涯において正しいのは私の価値観だ、誰にも邪魔はさせない。

「合図……は………」
「私の一発目のコインを飛ばしたらにしよう、爆弾が解除されるには私の意志による解除。
または三つ以上爆弾を生成した時の一番古い物……本当に彼女が大事なら二発目を待つのが懸命だぞ?」

突き刺す様な目で墳上が睨む、自分の優位に気付いているのかいないのか。
奴にまだ考える余裕があるかは判らないが、どっちにしても奴は死ぬ。
この一撃で墳上裕也は東方仗助とあの世で仲良く、私の『平穏な生活』を歯噛みしながら見届けることになる。

挑発の成果は上々だ……先ほどまで憎たらしく見えてたが今は実に『いい眼』だ。きっとコインを捉えてくれる。
夜道を照らす街灯、本来ならばこれが点く前に家に帰って食事を済ませていたのに。
だが、怒りは沸いてこない………この街灯が私の勝利を映してくれる。

風が吹いた、それと同時に『キラークイーン』がコインを弾いた。
爆弾になったコインを正面から飲み込むべく『ハイウェイ・スター』が波を形成する。
なるほど、壁よりもずっと効果的に正面からの攻撃を防ぎ私を襲えるだろう。

しかし、その無意味な策に失笑せずにはいられなかった……コインは墳上の頭上を飛んでいるのだから。

風に乗って墳上へと落下していく銀色の輝き。
街灯の光を反射しキラキラと安っぽくも美しく煌く死の宣告。
だが墳上は攻めを止めようとはせず、半分の『ハイウェイ・スター』を防衛に廻すのみだった。
正面からの第二射を防ぐためにも全ての『ハイウェイ・スター』は向けられない。

墳上の頭上、十分な余裕を持って百円玉が『ハイウェイ・スター』にキャッチされた。
確かに手ごたえがあった、しかしあってはいけないのだ……ここにあるべきは『落下』の衝撃ではなく『爆発』の衝撃だ。
殺人鬼、吉良吉影へと視線を戻す。

笑っていた……街灯の真下、舞台演劇の主役をライトアップするように淡い明かりに包まれていた。
そして、輝きを一身に受けているはずの彼の目は夜道をグレーと見間違うほどに『黒』かった。

手には不思議な物体を持っていて、植物とも動物とも区別つかないそれが『火』を吹いた。
奇妙な吹き方で空中で爆発が連鎖を起こすようにしてこちらに炎が向かっていた。
波と化してる『ハイウェイ・スター』を貫通し、その影響で手足からの出血が増加した。

「フハハ……フハハハハハ勝ったぞォォ―――――――――っ!」

殺人鬼の雄叫びが夜道に木霊する、そして気付く。
自分に迫る死を……呆気なさ過ぎて涙も出ない、それか流す時間もないだけか。
ゆっくり、眠るように目を閉じると真っ白な世界に幾つもの顔が浮かぶ。

仗助……悪ぃ、俺なんかじゃあこんな下衆野郎の一人だって倒せやしねぇ。

レイコ……思えばバカな男に付き合わせちまった。
アケミ……顔は良くても根性なしの意気地なし、ツケが回ったんだな。
ヨシエ……すまねぇ、辛いかもしれねぇが俺のことなんか忘れていい男捕まえろよ。

そして、焼けるような痛みに襲われた。

意表をついての上空へのコイントス、だがこれは爆弾じゃあない。
私の勝利を決定付けるのはこの……『ストレイ・キャット』
こいつは植物ではあるが、同時に猫でもある……視覚で感じる街灯の光と太陽を完全に区別は出来まい。

光量による威力は問題ではない、灯りの元に無理やり引きずり出して勘違いして撃ってくれればいい。
奴の頭を吹き飛ばすための『空気の道』を作ってくれればいいのだ。
空気弾の接触爆弾じゃあない、射程は短く弾速も遅いが動けない奴に当てるには問題ない。

『キラークイーン』の腹部から猫草を取り出すと、墳上目掛けて『空気の道』が出来上がった。
頭上の『ハイウェイ・スター』が百円玉に接触すると、奴は阿呆みたいに口を開きながら百円玉を見つめていた。
笑いを堪える必要があるだろうか、ない……勝利が確定したのだ。

「フハハ……フハハハハハ勝ったぞォォ―――――――――っ!」

『キラークイーン』第一の爆弾、接触……点火……『空気の道』は『炎の矢』に代わって墳上を襲う。
墳上裕也から『あの目』が持っていた輝きが失われ、諦めの色……負け犬の目が閉ざされた。

消える、この杜王町から『あの目』をするクソカスが消える。
最低の一日と思ったが、私の平穏を祝す記念日となりそうだ。
果てしなく長く暗い夜道が、まるでブロードウェイの花道の様に光り輝く栄光の道に見える。

もう誰も私を追わない、争いのない平和な世界が今日から始まる。
目を閉じて暗黒へと身を投じる……誰も邪魔の入らない自分だけの世界。

そして、奴に『矢』の刺さる音が私の耳に届いた。